33
ルルは驚いているパレットを気にせずに、部屋へと入って来る。
「なによこの部屋? 汚いったらありゃしないじゃなのよ」
そして、文句を言いながらヒョイッと小さなテーブルへと飛び移った。
パレットは彼女に訊きたいことがあった。
だが、何から訊ねればいいかわからずにその場に立ち尽くしてしまっている。
「まずは着替えて顔を洗ってきなさいなのよ」
「う、うん……!」
ルルにそういわれたパレットは、急いで部屋を出て行った。
先ほどとは別人のように覇気を取り戻し、大慌てで廊下を駆けだしていく。
その姿を見たルルは呆れてため息をついていた。
「だからまずは着替えなさいってのよ……」
その後、いわれた通り普段着に着替え、ルルと共に客間に移ったパレットは、やはり何から訊けばいいかわからずにモジモジとその身を震わせていた。
そこへ現れたルヴィがルルへ紅茶、パレットには簡単な食事――サンドイッチを差し出す。
「久しぶりだねルル。あれからどうしてた?」
気さくに声をかけるルヴィ。
ルルは紅茶のカップを抱えて少し飲むと、丁寧に頭を下げた。
「ルヴィには色々迷惑をかけてしまったのよ。この場にいないロロに代わって謝らせてもらうかしら」
申し訳なさそうにいうルルを見たルヴィは、ニコッと微笑んだ。
そして、気にしなくていいと声をかけて砂糖やミルクはいるかと訊ねる。
ルルが大丈夫だと返事をすると、突然パレットがテーブルを思いっきり叩いた。
「まさかルル、わざわざ謝るために来たんじゃないでしょ!?」
そこからパレットの言葉が続けられる。
ロロはどうしたのか?
もう人柱になってしまったのか?
なぜわざわざ自分たちの前に現れたのか?
パレットはここ数日間ろくに言葉を発していなかったのを取り戻すかのように、一方的に捲し立てた。
その様子を見て、ルルが怪訝な顔をし、ルヴィは嬉しそうに笑っている。
「ちょっと落ち着きなさい! そんな訊ね方されたら答えられるものも答えられないのよ!」
まるで嵐のような質問の数々に――。
いい加減に嫌気がさしたルルが大声をあげて彼女を止めた。
ハッと我に返ったパレット。
そして彼女のお腹がぐぅ~と鳴った。
ルヴィはクスクスと笑い、そんな彼女の肩にポンッと手を乗せる。
「とりあえず食べなよ」
「う、うん……」
ルヴィにそういわれたパレットは、目の前にあるサンドイッチに手を伸ばし、勢いよく頬張るのだった。
「それで、私はまずルルがここに来た理由を訊きたいんだけどね」
そう言いながら――。
食事を始めて口がふさがったパレットの横にイスを持ってきて腰かけるルヴィ。
ルルはようやく話ができるといわんばかりの表情でその質問に答えた。
彼女は、ルヴィへの謝罪も目的の一つだが、実はロロが今どうなっているのかを二人に知ってほしくてここへ来たという。
ロロがどうなっているか――。
その言葉を聞いたパレットは、頬いっぱいにサンドイッチを詰め込んだ状態でまたテーブルをバンッと叩く。
「ふが、ふがが、ふががっているの?」
「あなた……なにいってるかわからないのよ……」
当然そんな状態ではまとも話せるはずもなく、ただルルを呆れさせ、ルヴィを笑わすだけだった。
「相変わらず下品な女なのよ。まったく、まるで同族の失態を見ているようかしら」
「そういえばあんたムササビだったね。同じリス科でも頬袋はないんだっけ?」
パレットはそんなことなど気にせずに、置いてあった水をの瓶を一気に飲み干す。
口の中で中途半端に咀嚼されたサンドイッチが、喉を通って胃袋へと流される。
「ぷは―! よし、これでいいでしょ!?」
「わかったから、とりあえず落ち着くのよ」
ルルは、前のめりになっていうパレットへ冷静になるようにいうと、再び話を始めるのであった。
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