34
ロロは午後に、この空中大陸オペラの中心部である浮いている大地の地下へと向かう。
そして、そこで魔力を注ぐための祭壇へと行き、この大陸を浮遊させるため――禁術による
「だからロロは……あなたたちに感謝と謝罪をいってほしいいとわたしに頼んだのよ……」
そういったルルは俯きながら言葉を詰まらせた。
彼女は、本当はロロについて行くつもりだった。
彼の魔力が尽きるそのときまで、傍で生きている限り一緒にいるつもりだった。
だがロロは、そんなルルの考えを見抜いたのだろう。
犠牲になるのは自分だけでいいと彼女に頼みごとをし、パレットたちの元へ行ってもらったのだ。
そんなロロの考えを察したルルは、彼の思いを受け入れここへ来た。
それがロロの願いなら、自分は聞き入れなければといけないと。
「そういっているけどわたしは……ロロを見捨てたも同然だわ……」
俯きながら涙を流すルル。
彼女は生まれたときからロロと一緒だった。
ルルは彼の母親が人柱となると決めた日――。
自分の息子が寂しくないようにと、与えられたムササビだった。
ロロはその高い魔力の才能を開花させ、ルルに言葉を与えた。
それからはルルがロロの母親代わりとなる。
政府に囲われ、小さい頃から施設で育った彼の心を慰めていたのはルルだ。
そして、外の世界を知らない世間知らずのロロに、いろいろと教えたのもルルだった。
だが、そんな役目ももう終わり。
「結局わたしはあの子になにもしてあげられなかったのよ……」
ロロの魔法で言葉が喋れるようになっても、彼の窮地に何もできない。
こんなことなら最初から喋れなければよかったのにと、ルルは自分の無力を嘆いた。
「ルル……つらかったんだね……」
そんなルルを手に取り、その小さな体を抱きしめるパレット。
彼女は、ルルが自分よりもずっと苦しんでいたと思うと、胸を締め付けられる思いだった。
ルルはムササビといえ、ロロの保護者なのだ。
だから彼の決意を受け入れ、こうやって自分たちのところへ来てくれた。
それはベットで落ち込んでいた自分よりも、ずっとつらかったに違いない。
パレットは、泣きながら身を震わせているルルを抱いてそう思っていた。
「いこう……」
「えッ……?」
パレットはルルを自分の体から離すと、彼女を見つめてそういった。
ルルはパレットが何をいっているのかよくわからない。
それでもパレットは言葉を続ける。
「ロロに会いにいこう。あたしたちで……」
「む、無理なのよ!? スカイパトロールが飛空艇の大船団を率いて護衛しているし、なによりもロロがそれを望んでいないのよ!?」
話を理解したルルは喚いて止めようとした。
だが、突然目の前にドサッとバックが降ってくる。
「時間は午後だったよね? よし、なら早いほうがいい。パレット、ルル、行くぞ。私が船を出してやる」
ルヴィがそういいながら、出発する準備を始めていた。
パレットは目の前にあるバックを背負い、ルルの体を自分の肩に乗せる。
ルルはダメだと何度もいっても彼女たちの動きは止まらなかった。
「あなたたち!? わたしはただロロにいわれたことを伝えに来ただけのなのよ!? 連れて行ってなんてそんなこと、頼んでない!」
パレットは、肩で喚き続けるルルの体を両手で掴んだ。
それからニッコリと微笑みながらいう。
「いいから行こう! お別れでも助け出すでもどっちでもいいから、ロロに会いにいこうよ!」
「パレット……あなた……」
パレットに見つめられたルルは、唖然としていて何も答えることができなかった。
だが彼女の泣き顔は、次第にいつもの呆れ顔を取り戻していった。
「まったく、やれやれなのよ、この娘は。それにまさかルヴィまで……」
「私もさぁ、話を聞いたときからなんだけど。どうも子ども一人にすべて押し付けるってのが気に喰わなくてね。いい機会だ、自粛勧告で休んでいたぶん暴れてやる」
ルヴィはそういいながら、ずいぶんと使い込まれた長剣や弓矢を引っ張り出し、その手にはマスケット銃まで用意している。
ルルはそれを見て、これから戦争でもするつもりなのかと不安になっていた。
「それぐらい危険なことなのよね……。わかったわ、わたしも覚悟を決めるのよ!」
「よ~し、 ルル! ルヴィ! これからみんなでロロに会いにいくぞ!」
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