最弱冒険者が【完全ドロップ】で現代最強【WEB版】

萩鵜アキ

一章 新たな自分~試練を超えて、少しずつ生まれ変わる~

第1話 プロローグ1

今日より新作スタートです。

いま書けるものが書きたくて書いた作品です。

ひとまず1章分だけアップします。


これ以降は、読者様の反応でどうするかを決めようかと思っています。

どうぞ、宜しくお願いいたしますm(_ _)m



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「Fランクのくせに生意気に武器なんて持ってんじゃねぇよ!」


 ダンジョンに罵声が響き渡った。

 少年が顔面を殴打され地面に転がった。


 少年――天水ソラは、パーティの男に自前の長剣が奪われた。

 その長剣は先日、命がけで攻略したGランクダンジョンで手に入れた武器だ。


 性能は決して高くはないが、とても大切な武器だ。

 それを力尽くで奪われて、ソラは奥歯を噛みしめる。


 長剣を奪ったのは男性二人。自分と同じ冒険者だった。


 相手は冒険者ランクE。対してこちらはF。

 たかが一ランクの違いだが、戦闘能力には大きな開きがある。

 取り戻そうとしても、ソラでは歯が立たない。


「それじゃあな」

「またなんか手に入れたら、俺たちに教えろよ? ちゃあんと大切に使ってやるからな」

「「ははははは!」」


 男たちが、笑い声を上げながらダンジョンを出て行った。

 その後ろ姿を眺めながら、ソラは血が出るほど唇を噛みしめた。


(僕にもっと、力があれば……)


 けれど、それは叶わぬ願いだ。

 何故ならソラの成長は、Fランクで早くも成長限界を迎えたからだ。


 この地球にダンジョンが出現した瞬間、すべての人類が世界に格付けされた。

 初めの格は皆同じだった。しかし、人によって成長限界が違っていた。


 どこまでも強くなる者もいれば、まるで成長しない者もいる。

 人類はその成長度に合わせてランク付けをした。


 限界が訪れるのが早い者がG、最も遅い者がSだ。

 ソラのランクはF。下から二番目に低い階級だった。


 冒険者になるためには、最低でもFランクが必要だ。

 九割以上の者がGランクから上がれないなか、ソラは運良くFランクに昇格した。


 だが、ソラの成長はそこまでだった。

 ダンジョンでどれだけ魔物を倒そうとも、そこからランクが上がることはなかった。


 折角冒険者になったのに、Fランクから上がれない。

 そういう者を、人は哀れみと侮蔑を込めてこう呼んだ。


『底辺のFラン』


(もう、潮時かな……)


 ランクが上がらなければ冒険者として食べていけない。

 Fランクになったときは、プロの冒険者として生計を立てていこうと思っていたが、そこから成長しないのであれば話は別だ。


 ソラは今年で20歳だ。

 18歳から冒険者になって、2年が経過していた。


 初めは、駄目ならすぐに辞めようと思っていた。

 だが徹底的にやってみないと気が済まない、凝り性という性格が祟り、冒険者を辞められないまま現在に至る。


 ダンジョン攻略は面白い。

 魔物を倒せば魔石がドロップし、それを売却してお金を稼ぐ。

 苦戦するような格上の相手でも、戦い方によって効率良く倒すことが出来た。


 日々の試行錯誤が、楽しかった。

 気がつくとソラは、ダンジョン攻略に填まってしまっていた。


 先ほど奪われた長剣も、試行錯誤の結果得られたダンジョンドロップだった。

 これまでの努力の証。それが、奪われてしまった。

 ソラはがくりと肩を落とす。


 将来を思えば、このままずっと冒険者として活動し続けるわけにはいかない。

 Fランクの冒険者では、十分な稼ぎが得られないからだ。

 それよりも、企業に勤めた方が何倍も良い。


 現在のソラは、就職しやすい年齢だ。

 これを逃せば、どんどん就職しづらくなってしまう。


 Fランクでも、中には生活出来ている者もいる。

 特殊な技能を持つ者であったり、強い武器を持つ者がそうだ。


 しかし、ソラには特殊技能がない。

 また、虎の子の長剣だって奪われてしまった。


 もはや潮時なのだ。


「神様が、やめろっていってるんだろうな……」


 ため息一つ吐いて、ソラはゆっくりと立ち上がる。

 所々、体が痛む。


 だが、顔をしかめる程度の怪我で済んでいる、ともいえる。

 相手二人はソラよりも格が高いEランク冒険者だ。

 本気を出せば、ソラを一発で殴り殺せる。


 それくらい、格一つの差は大きいのだ。


 痛む足を引きずりながら、ソラはダンジョンの出口へと向かった。

 幸い、ここは固定ダンジョン――ずっと出現し続けている。攻略後消えてしまう仮出現(テンポラリ)ダンジョンとは違うため、慌てなくて良い。


 出口への道の途中、ふとソラは見て呟いた。


「ん、なんだあれ?」

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