第14話 ただし魔法は○○から出る
喜びそのままに、ソラはステータスボードを確認する。
キング討伐で、レベルが2つ上昇していた。
ホブゴブリンを倒したときは3つだったが、強さは明らかにキングの方が上だ。
レベルアップ数に差がついたのは、レベルごとの必要経験値の違いによるものだろう。
レベルが上がれば上がるほど、レベルアップに必要経験値が増えていく。
レベル10だった時に比べ、レベル13の時のほうが、よりレベルが上がり難いのだ。
アビリティを確認すると、【初級剣術】【初級槍術】などの、マスタリー系が増加していた。
試しにソラは【初級剣術】をタップする。
すると、【成長加速】の隣に無事、【初級剣術】がセット出来た。
「おおっ、成長加速を付けたままでも、他のアビリティが装備出来るようになってる!」
どうやらレベルアップにより、限界コストが拡張されたようだ。
その時、ふとソラは気がついた。
「……あっ、そういえば戦闘中でもアビリティ変更出来るな」
これまで、ソラはいまある状態のまま戦っていた。
それがこれまでの普通だったからだ。
だが、普通ではないステータスボードを手に入れた。
戦闘中に、足りない部分を補うことも出来る力だ。
SPだけでなく、アビリティの付け外しによっても、身体能力が変えられる。
そのアビリティ付け外しの可能性を、ソラは完全に失念していた。
「まあ、今回は上手く行ったから良かったけど……。今後はアビリティ変更も視野に入れながら戦わないとだな」
反省は、成長の可能性だ。
これからもっと強くなるために、ソラは今回気付いた点を心に刻み込んだ。
コストが増えて、アビリティの数も増えたことで、出来ることが増えた。
その反面、未だに出来ないこともある。
マスタリーの中に、【魔術】だけが出現していない。
「んー……。やっぱり僕には魔法適性がないのかな? それともステータスの高さによって、アビリティが取得出来るのかな」
後者の可能性が高そうだ。
入手したアビリティが初級ということは、中級や上級もあるのだろう。
ステータスを上げていくうちに、また新たなアビリティを入手出来るはずだ。
「やっぱMAGに振るかなあ」
MAGに振れば、魔法が使えるようになる可能性は非常に高い。
だが現状、魔法使い系の装備がない。
また、どうやれば魔法が使えるかの条件も不明である。
MAGを振ったは良いが、結局魔法が使えなかったらすべて無駄になってしまう。
「……SPを何に振るかは追々考えるか」
結論を出さずに、ソラはインベントリを表示させる。
キング討伐によるドロップは、全部で四つもあった。
『ゴブリンキングの剣』、『ゴブリンキングの小手』、『怨嗟の炎剣』、それと魔石だ。
名称:ゴブリンキングの剣 ランク:R
攻撃力:+25 精錬度:―
装備条件:STR+20
説明:ゴブリンキングが使用していた、刃渡り60センチの剣。数多の血を吸ったことで、刀身が黒く染まっている。
名称:ゴブリンキングの小手 ランク:UC
防御力:+10 精錬度:―
装備条件:なし
説明:ゴブリンキングが使用していた小手。かなり使い込まれているが、防御性能に問題はない。
ゴブリンキングシリーズは、かなり有用な武具だ。少なくともFランクのダンジョンを攻略するならば、十分な性能である。
Eランクのダンジョンでも通用するかどうかはわからないが、ある一定までは役に立ちそうだ。
その次の武器を見て、ソラは目を見開いた。
名称:怨嗟の炎剣 ランク:S
攻撃力:+10 精錬度:―
装備条件:STR+20
説明:ゴブリンキングの怨念が籠もった剣。その恨みが炎となり怨敵を打ち砕く。1日1回火炎魔法発動可。
「魔法!」
ソラは思わず声を上げた。
常々、魔法を使いたいと思っていたが、まさか魔法が使える手段をアイテムで入手出来るとは想像もしていなかった。
ソラは早速、怨嗟の炎剣を取り出した。
剣の刃渡りは、おおよそ七十センチはあった。
刃は焦げたような色をしていて、とても武器として使えるようには見えなかった。
「……ところで、どうやって使うんだろう?」
試しにソラは、前に剣を突き出した。
しかし剣からは反応もない。
次に、魔法発動を意識しながら空中に剣を突いた。
(出ろ!)
すると、先端から前に向かって炎が噴出した。
炎の大きさは、おおよそ一メートル程度。
その反動の低さから、威力はさほどでもないように感じられる。
攻撃魔法というには、少々力不足である。
それでもソラは、目を輝かせた。
「おおっ! 火だ、火魔法だ! 魔法が使えた!!」
感動に、拳を固く握りしめる。
念願の魔法を発動した気分は最高だった。
思いも寄らぬ形で夢が叶った。
同時に、MAGに振らなくても魔法が使えるので、『今後MAGに振るかどうか』問題も解消した。
「ステータスは近接系にして、魔法はアイテムで使えばいいか」
いまさら、ステ振りの傾向をかえてもしばらく中途半端になってしまう。
ならばこのままステータスを伸ばしつつ、魔法はアイテムで補うのが最も効率的だ。
「それにしても、一日一回か。っていうことは、もう使えないのか……な?」
試しにソラは同じ要領で、今度は炎剣を横に振った。
しかし魔法は飛び出さない。
「んー、やっぱり駄目か。これは24時間後にチャージされるのか、それとも日を跨いだ瞬間にチャージされるのか、どっちだろう?」
説明にはなにも書かれていない。自分で確かめる他ないだろう。
問題は威力の低さだが、それは解決の見込みがある。
ソラは炎剣をインベントリに入れ、精錬石を使用した。
精錬度が上がれば、魔法の威力も上がるだろうと予想したのだ。
丁度ソラは、精錬度がいくつから武器が光始めるのかにも興味があった。
なので二つまとめて、一気に調査してしまう。
精錬度が一つ上がる毎に、インベントリから炎剣を出して確かめる。
「おっ、+6までは変化なしか」
やはり武器が輝くようになるのは精錬度MAXなのか。
そう思った次の段階のことだった。
「あっ、光った!」
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