第6話 初めてのステータス分配

「コスト……? 【成長加速】を入れると、拡張出来ないのかな」


 アビリティにコスト数は書かれていないので、確認しようがなかった。


 魔物は死後に、生命エネルギーを放出する。

 その生命エネルギーが肉体に吸収されることで、人間は強くなる。

 レベルアップと言うに相応しい変化が現われる。


【成長加速】は、魔物一体よりも多く(二体分になるのか、はたまた1,5体分になるのかは不明だが)生命エネルギーを吸収するアビリティだと推測出来る。

 つまり他の誰よりも、素早くレベルアップが可能になるアビリティだ。


 効果的に、いかにもコストが重そうだ。

 ソラは【成長加速】を外し、別のスキルに入れ替えてみた。



STR:5→6 VIT:6

AGI:11→13 MAG:0 SEN:7→8

アビリティ:【成長加速】+→【STR強化】【AGI強化】【SEN強化】+


「おおっ、複数装備出来る!」


 これで状況に合わせたアビリティ選択が可能だと分かった。

 出来ることの幅が、かなり広がった。


(これだから、試行錯誤はやめられない!)


 ステータスボードへの理解が深まり、ソラは興奮した。


 強化系アビリティを装備してわかったのは、それらアビリティは現在のステータスを20%引き上げるものだということだ。

 現時点での効果はかなり薄いが、後々絶大になるタイプのアビリティだ。


【自然回復】は、その名の通り自然に回復する速度が上昇するようだ。

 黙っていると、体に溜まった戦闘の疲れが急速に癒えるのを感じた。


「傷にも効果があるのかな? ……でも、ダンジョンを出たらヒールが貰えるし、いまのところこれは使わないかなあ」


 すべてのアビリティをチェックしたあと、ソラは【成長加速】を装着した。


「今後、もっとアビリティが増えるのかな」


 装着出来るアビリティがこれだけとは考え難い。

 というのも、この手のシステムでマスタリー系(剣術や盾術など)がないのは不自然だからだ。


「ステータスを上げるか、レベルが上がるかすれば増えそうだよな」


 それは追々調査していくことにする。

 ステータスの分配はひとまず後回しにして、ソラはインベントリのチェックを行う。


「……そういえば、インベントリってどうやって使うんだろう?」


 試しに「インベントリ」と口にしてみるが、なにも起こらない。

 異空庫に手を入れるイメージで、手を伸ばしてみる。しかしこちらも、何も起こらなかった。


「うーん? もしかして、取得出来てない、とか?」


 ソラはステータスボードを穴が空くほど見つめる。


「スキルを触ったら情報が出てくるかな?」


 試しに触ってみるが、スキル情報は出て来なかった。

 その代わり、


「おっ?」


 指を横に滑らせた時だった。

 ステータス画面が変化した。


「ああ、こういう……」


 画面に並ぶ四角い空欄を見て、ソラはインベントリの使い方を理解した。

 どうやらソラが修得したインベントリは、ステータスボードを通じて利用する仕様だったようだ。


 試しに入手したゴブリンの魔石を、インベントリ画面に近づけた。

 すると摘まんでいた魔石が消えて、画面左上に魔石の表示が現われた。


 タップすると、『ゴブリンの魔石(小)×1』の文字。


「おお、重ねて収納出来るんだ!」


 画面の右上に『ドロップ回収:自動』の文言を発見した。

 これを自動にしていると、ダンジョンドロップをインベントリが回収してくれるようだ。


「これは、すごい……」


 ドロップを拾わなくて良いとなると、かなりの手間が省ける。

 特にFランク以下の魔物の魔石はかなり小さいため、連戦になった場合、ドロップを見つけ出すのがかなり大変なのだ。


 その手間をこれで一気に省くことが出来る。

 とてつもない機能だ。


 インベントリの仕様は、大まかに理解した。

 ソラは画面に指を滑らせてステータス画面を表示させる。


「次はいよいよ、ステータス振り分けだ!」


 レベルが上がり、5ポイント取得した。

 この5つをどう振り分けるか、じっくり考える。


「出来れば魔力を上げたいけど、職業は荷物持ちだしなあ」


 魔力を上げたからといって、魔法が使える保証がない。


「均等に割り振るならレベル1つにつき1ポイントずつアップか……。まずは、得意分野を上げて行く方が良いかなあ」


 大剣を使う剣士ならSTRを上げ、魔法使いならMAGを上げる。

 このように、職業に合わせて殲滅力が上がるステータスを上げつつ、防御力を上げていくというのがスタンダードだ。


 ソラは速度型の冒険者だ。AGIを上昇させた方が良いだろう。

 問題は、殲滅力だ。


「荷物持ちって、何を上げればいいんだろう?」


 荷物を手で運ぶなら、VITを上げた方が良い。

 だがそれでは、殲滅力が上がらない。


「うーん……。一人で戦える力を身につけるなら……力、だよね」


 現在ソラはEランクに上がった。

 だが冒険者カードに記載されているランクはFだ。


 この冒険者カードの記載は、測定器での鑑定結果が反映される。

 なので今すぐ鑑定を受ければ、カードをEランクにしてもらえる。


 だが、鑑定は一度に二十万円かかる。

 鑑定費をぽんと出せるほど、ソラは裕福ではない。


「まあ、しばらくはレベリングに集中して、ある程度ランクが上がってから鑑定を受けるかな」


 Fランクのままだとパーティには入りづらいが、ソラには【限界突破】とステータスボードがある。


 しばらくはソロでレベル上げを行うのが良いだろう。


 まずは一人で戦えるよう、ソラはSPを割り振った。

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