第47話 苦労して得られたものは価値がある
新作、投稿しています。こちらも合わせて宜しくお願いいたします。
【貴族の三男、でくの坊から最強魔術士へ】
https://kakuyomu.jp/works/16816700425917978136
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翌朝、ソラはとある固定ダンジョンの前に佇んでいた。
「本当にここでいいんだよね……?」
昨晩、冒険者協会のダンジョンオークションサイトにて、ソラはDランクのテンポラリーダンジョンを購入した。
それはオークション終了日になってもまだ買い手が付いておらず、入札価格1万円と格安のダンジョンだった。
都内にあるDテンポとしては破格である。
不審には思ったものの、一万円という安値には勝てず、ソラはそのダンジョンの権利を購入した。
冷静に考えてみれば、Dテンポが一万円はかなりおかしい。
たとえば――一度目に落札した冒険者が、攻略に失敗して権利を売り戻したダンジョンである、とか……。
「やっぱり、間違えたかなあ」
ソラはダンジョンを眺めながら、ぼりぼりと頭を掻いた。
購入したDテンポは、目の前にあるダンジョンの中にある。
固定ダンジョンの中にテンポラリーダンジョンが生じる通称『重複ダンジョン』は、比較的珍しいがないこともない。
攻略難易度も、通常のテンポラリーダンジョンと同じだ。特別難易度が高いということもない。
「でもまあ、後悔しても仕方ないか」
色々不安はあるが、ダンジョンが出現してからかなり時間が経過している。
ソラは気を取り直して、Dテンポがある地点へと向かったのだった。
Dランクのテンポラリーダンジョンの入り口は、特に不審な点は見当たらなかった。
向こう側から感じられるマナの量も、極端に多いわけではない。
「妙なところはないか……」
魔物をすり抜けやってきたゲートの前で、ソラは準備を整える。
これまでテンポラリーダンジョンを攻略した経験はあるが、自分が購入したものを攻略するのは初めてだった。
「もし駄目そうなら、戻って来ればいい」
ボス部屋とは違い、テンポラリーダンジョンは脱出が可能だ。
変異さえしなければ、の話だが……。
入念な準備をして、ソラは意を決してゲートに飛び込んだ。
ゲートの中は、これまでと同じ洞窟タイプのダンジョンだった。
見た目は、特に妙な部分はない。
「…………」
【隠密】を発動しながら、ソラはゆっくりと歩みを進める。
しばらく進むと、一つ目の部屋に到着した。
「――ッ!」
その部屋の中を目にした時、ソラは息を飲んだ。
部屋の中には、おびただしい数のスケルトンがひしめき合っていたためだ。
(モンスターハウスかっ!)
ソラはすぐに、状況を察知する。
モンスターハウスは、一つの部屋に魔物が密集している状態を指す。
たとえば以前に攻略した、アリのダンジョンがそうだ。
ボスの前で、ソラはアリの大群に襲われた。
量は質を圧倒する。
いくらDランクの魔物が楽に倒せるからといって、一度に多数と戦うのは至難の業だ。
(とはいえ、乗り越えられないほどじゃない)
ソラは一度深呼吸をすると、インベントリから一振りの剣を取り出した。
『怨嗟の炎剣』
まっすぐ構えて、魔法を発動。
先端から、燃え上がるような火炎が吹き出した。
――ゴゥ!!
無数の魔物は脅威だが、今回はそれが仇になった。
炎剣の炎がスケルトンを大量に巻き込み、一瞬にして灰にした。
即座に炎剣をインベントリに収納。
「うおおおおおお!!」
ソラは裂帛の声と共に、スケルトンの群れに突っ込んだ。
テンポラリーダンジョンを出たソラは、近くのダンジョン壁に背中を預けた。
「はぁ、はぁ、酷い目に遭った……」
無数のスケルトンと戦ったソラは、体力と精神力が尽きかけていた。
その量は、これまで一度に戦った魔物の群れの中でダントツだ。
しかも途中で、スケルトンの骨がくっついて、ボスに変体するなど想像もしていなかった。
予め怨嗟の炎剣で数を減らしていなければ、今頃どうなっていたことか……。
「DじゃなくてCが適性だろ……」
適性ランクがDとは、まったく思えなかった。
これをDランク一万円でオークションに出した、冒険者協会が恨めしい。
「まあ……良いアイテムが手に入ったからいいか」
インベントリを眺めて、ソラは笑みを浮かべる。
今回手に入れたアイテムは三つ。
『仙丹』『完璧な水鉄砲(パーフェクトシュート)』『骸骨兵のイヤーカフ』だ。
名称:完璧な水鉄砲 ランク:SR
攻撃力:+55 精錬度:―
装備条件:AGI+50
説明:まるで本物のような質感がある水鉄砲。恐るべき魔導技術が込められた武器。使用回数は十回。一日に一度、水が補充される。
名称:骸骨兵のイヤーカフ ランク:R
SEN:+30 精錬度:―
装備条件:レベル40
説明:骸骨兵が装備していたイヤーカフ。生前、最愛の妻に送られた思い入れのある一品。死んでもなお、このアイテムへの執着は少しも薄れない。
想像以上の成果である。
途中で攻略を諦めなくてよかった。
ドロップにある仙丹は、前回出たものと同様だった。
ソラはインベントリから取り出し、水と共に呑み込んだ。
〉〉SP40→50
「水鉄砲は、炎剣と同じで一日に一回チャージタイプか」
それでも、使用回数は十回と炎剣に比べてかなり多い。
さすがはDランクダンジョンのドロップといったところか。
水鉄砲をインベントリから取り出し、確認する。
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