第26話 新しい職業でダンジョン攻略
聴覚や肌で感じる世界の解像度が、ぐんと上昇した。
小鳥のさえずりや風の流れが、立体的に感じられる。
正直、想像していた以上の変化だった。
この変化の原因が気になり、ソラはステータスボードを開く。
名前:天水 ソラ
Lv:22 ランク:E
SP:10 職業:中級荷物持ち→初級アサシン
STR:25 VIT:24→40
AGI:52 MAG:0 SEN:15
アビリティ:【成長加速】【初級二刀流術】+
スキル:【完全ドロップ】【限界突破】【インベントリ】【隠密】NEW【気配察知】NEW
装備(効果):短剣+、革の胸当て+、ゴブリンキングの小手、漆黒のブーツ(隠密性+)、吸血の腕輪(AGI+16)、緩衝のネックレス(VIT+16)
「おっ、職業が変化した」
中級荷物持ちだった職業が、初級アサシンに変わっている。
新たなスキルの取得は、職業変化に伴うものだろう。いかにもなアサシンっぽいスキルだ。
「なるほど。空間把握能力が高まったのは【気配察知】を手に入れたからか」
意識すると、かなり広範囲に察知出来た。
公園をランニングする人の息づかいまでも手に取るようにわかった。
「初級アサシンってことは、レベルが上がったら中級になるのかな」
Fランクだった時は初級荷物持ちだったが、Eランクに上がったところで、中級荷物持ちに変化した。
それと同時に、新たなスキル【インベントリ】も入手した。
レベル、あるいはランクの上昇によって職業のクラスが上がるとみて間違いないだろう。
「アサシンに変わったのは、ステータスの振り方のせいか……、それとも装備品まで加味されるとか?」
現在のソラのステータスは、AGI先行型で、VITが低い。
これが職業変更に影響を与えた可能性は非常に高い。
また、ソラが装備するブーツには『隠密性+』が付与されている。これも影響を与えた可能性はある。
しかしもし、装備が影響を与えるとなると、重装備で覚醒の宝玉を使ったパターンはどうなるのか? という疑問が湧き上がる。
「少し気になるな」
さらに強い職業への転職を目指す場合は場合は、フル装備で覚醒の宝玉を使った方が良い、ということになる。
「別の職業になるかどうか、試してみるか」
思い立ったが吉日。
ソラはすぐに行動を開始した。
再び無生物系Eのダンジョンに入ったソラは、【隠密】を意識しながらボス部屋へと向かった。
【隠密】を発動すると、魔物は面白いようにソラを見失う。
ためしに【隠密】を発動したまま、スライムを攻撃してみた。
攻撃を当てるまでは反応がないのに、攻撃を当てるとスライムがソラめがけて触手で攻撃していた。
どうやら攻撃すると【隠密】が解けてしまうようだ。
攻撃した後で死角に入ると、再び【隠密】が発動するようで、何度か回り込んでいるとスライムがソラを見失った。
これで分かったことは二つ。
1,【隠密】は攻撃するまで解除されない。
2,解除された後でも、死角に入れば再び【隠密】が発動する。
このスキル、かなり凄まじい性能だ。
【隠密】を使用して背後に回って急所を攻撃すれば、一撃で相手を倒してしまえる。
まさにアサシンらしい戦い方だ。
気になる点は一つ。【隠密】を看破する相手がいるかどうかだ。
看破出来る魔物は、かなり高い確率でいると予測出来る。
たとえば嗅覚の性能が高い獣系の魔物がそうだ。
【隠密】は気配を消すだけで、臭いまでは消せない。
ソラの臭いを嗅ぎ取って、隠密を看破してくるだろうと予測出来る。
また、人間の中にも感覚の鋭い者がいる。SENが伸びやすい冒険者だ。
そういった相手にも【隠密】が通用しないと考えて間違いない。
【隠密】を百パーセント信じてしまうと、いつか手痛いしっぺ返しにあいそうだ。
なのでソラは、必要以上に【隠密】を利用しないことにした。
「あんまり隠密を使いすぎると慢心しそうだし。隠密を使わない戦い方が鍛えられないしね」
ボス部屋までは【隠密】を用いて戦闘を回避する。
ボスは姿を現した状態で戦う。
こうすることで、経験があまり得られない戦闘を避けて攻略時間を短縮しつつ、経験が貰えるボス戦で戦闘の練度も上げられる。
こうして最短ルートでボスに挑むこと三回。
ソラは三回ともで、『覚醒の宝珠』を入手したのだった。
〉〉レベルアップ
〉〉レベルアップ
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