第73話 謎のアビリティ
拙作『生き返った冒険者のクエスト攻略生活』のコミカライズが、ヤングエースアップにて連載スタートいたしました!
https://web-ace.jp/youngaceup/contents/1000181/
漫画:冥茶 原作:萩鵜アキ キャラクター原案:ひづきみや
こちらも合わせて、宜しくお願いいたします。
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【纏雷】【雷耐性】
「……もしかして、MAGが上がったから出たのか?」
魔法の出現か、とソラはにわかに興奮する。
早速アビリティを変更。【纏雷】【対雷耐性】の二つをセットする。
二つセットしたのは、ただの直感だ。
纏雷という名前は、雷をその身に纏うアビリティだと推測出来る。
だからもしかしたら、ただ纏うだけでは反発ダメージがあるのでは? と考えたのだ。
立ち上がり、ソラは意識を体に向けて集中する。
アビリティの使い方は、セットした瞬間に理解する。
まるで呼吸のように、はじめからあった感覚として、突如認識に浮かび上がるのだ。
記憶にはないのに、何故か出来るという確信がある。
不思議な感覚だった。
ソラはさらに集中力を高め、【纏雷】を発動した。
次の瞬間だった。
――パチン!
耳元で、静電気が起こった音が聞こえた。
(電気だ! 電気が出た!)
魔法っぽい現象に、ソラは歓喜する。
しかしその歓喜は、時間とともに萎んでいった。
「……えっ、なに、これだけ?」
しばらく待っても、何も起こらない。
手から雷が出るわけではないし、家電製品がパルス波で壊れるわけでもない。
パチンと耳元で静電気の音が聞こえた。
【纏雷】がもたらした変化は、ただそれだけだった。
ソラはがくっと肩を落とす。
「攻撃魔法、じゃないのか……はあ。いや、まあ、何もなくて良かったか」
幸い、部屋に異常は見当たらない。
もしこれが攻撃魔法であれば、ソラの部屋は今頃大惨事だった可能性が高い。
そもそも、攻撃魔法を自分の部屋で使用するなど危険極まりない。
冷静になってからやっと、ソラはその事実に気がついた。
それくらい、魔法らしきアビリティの出現を喜んでいたのだ。
「纏雷……一応は、雷を纏った、のか。勘だったけど、対雷耐性も一緒に装着しておいてよかった」
もし耐性を付けていなかったから、今頃ソラは雷を纏って痺れていたかもしれない。
今後纏雷を利用する場合は、耐性も必ずセットにするべきだろう。
「といっても、今後使用するかは微妙なんだよな。雷を纏って抱きつく? もしくは攻撃? 静電気レベルの雷で、ダメージが増えるかな……」
今のところ、戦闘に使えるイメージがまるで湧かない。
どう使えば良いのかさっぱりである。
纏雷は発動させられた。
使い方については、後日実践で試していけば良い。
「丁度、試すのにもってこいの場所に行けるようになったしな」
そう呟いて、ソラはインベントリに入れておいた、冒険者協会理事から貰った特殊なカードを眺めるのだった。
○
冒険者協会を襲ったスタンピードが終了した後。理事である春日渉は、職員たちに後処理を指示しながら、ずっとある人物について考えていた。
その人物とは、娘のさくらを救ってくれた、天水ソラである。
彼は、テンポラリーダンジョンBランクのボスを、たった一人で打ち倒した。
ダンジョンボスを倒すなら、ランクが同格の冒険者ならば5人必要と言われている。
ワンランク下のボスならば、理論上はソロでも討伐が可能だ。(決して容易な戦いではないため、ソロでボス討伐にチャレンジする者はほとんどいない)
結果だけを見れば、天水はAランク以上の冒険者だ。
間違いなく、日本屈指の冒険者に名を連ねる実力がある。
にも拘わらず、現在彼の認定ランクはDだった。
認定ランクと実力の齟齬があまりに。
一瞬、しばらくランク測定をしていないのかとも思ったが、渉はすぐに否定した。
彼は既に、1ヶ月以内に一度、自身のランクを更新していた。
「たった1ヶ月で、DランクがAランクになるものだろうか?」
渉の経験では、DランクからAランクに至るまで3年はかかった。
それと比べると、天水の成長速度はあまりに速すぎる。
冒険者は、ダンジョンで魔物を倒して、死んだ魔物のマナをその体に吸収する。
その力を蓄えていくことで、強くなっていく。
器が小さいものは、蓄えられる力の量が少なく、低いランクで頭打ちになる。
器が大きければ大きいほど、より高いランクへと成長していける。
その器の大小によって、冒険者の実力の限界が決まるのだ。
しかし、成長速度は器の大小に比例しない。
ならば、何故彼はそこまで素早くランクを上げられたのか?
「まさか、自分よりも強い魔物と戦い続けたのか?」
それならば、天水の成長速度に一定の説明が付く。
倒した魔物によって、器を満たすマナの量が違う。
Eランクの魔物と、Aランクの魔物では、後者の方が圧倒的に放出されるマナが多い。
なので常時、自分よりも強い魔物を倒し続ければ、他の冒険者に比べてより早く成長することが可能である。
しかし、現実問題として、自分よりも格上の相手と戦い続けるのは不可能だ。
同格の相手であっても、僅かなミスが命取りになる。
格上に挑もうものなら、指一本触れられずに殺されたとしても、なんの不思議もない。
ランクの差は、それほどまでに大きいのだ。
「一体どういう戦いをしてるのか、すごく興味があったんだけどねぇ」
渉がため息を漏らした。
本当ならば、渉は自分の目で天水の戦いを観察するつもりだった。
天水をボスと戦わせたのは、それが狙いだった。
もちろん、天水を危険にさらすつもりは一切なかった。
万が一があれば、渉はすかさずシールドで天水への攻撃を防いでいた。
そのために、万全の態勢を整えていた。
ボスが建物の外に逃げないよう、シールドで逃げ道も塞いでいた。
だが、そこで予想外の事態が発生した。
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