第29話 試験の前に補習は始まっている・・・!?

最近、みずきに友達が出来て、構ってくれなってきたので結構な頻度であお姉が働いてるカフェに賢治と行くことにしている。


「おじちゃん!今日も来たよ〜!」

「勝さん、今日も来ましたよ〜」


なんだか、もうすっかり常連になっており、ここの店主であるおじいさんのことを俺たちは、「おじちゃん」だとか、「勝さん」だとか言うふうに言えるくらい仲良くなっていた。


「今日も来てくれたのか!ケン坊とタク坊が来てくれると嬉しいものだなぁ。」


この人が仲良くさせてもらってる勝さん。歳はいってるけどまだまだ元気で何より賢い。俺たちに科目にはよるけど、勉強を教えられるくらい頭がいい。


「じぃちゃん!もうすぐ中間テストだから英語教えてよ〜!」

「んなもんタク坊に教えてもらえ。ワシよりタク坊の方が英語は上じゃ。」

「いや、こいつとやるとどうしてもグダっちゃうんすよね〜」

「『グダっちゃう・・・』タク坊、年寄りでも分かるように訳してくれんか?」

「えっとですね・・・」


俺がグダるの説明をしようとすると、奥から不機嫌そうな自称看板娘こと俺の姉が出てきた。


「グダるっていうのは、今の場合は、真剣にやりたいのに友達と一緒だから中々思うように進まないって言うことですよ。って言うか、そういうことはこのあおい姉さんに相談してくれてもいいのよ?」

「あ、あお姉いたのね。忘れてた・・・」

「ちょっ!?たっくん嘘でしょ!?忘れてたって嘘だよね!?賢治君も嘘だよね!?」

「え、あ。あおいさんいたんですね。こんちはっす。」

「ん?なんだあおいちゃんおったのか。若者たちとの会話に夢中で気づかんかったわ。」


賢治はともかく、勝さんノリよすぎだろ。ノリよすぎて、姉ちゃんがいじけそうなんだが・・・どうせこういうの片付けんの俺なんだし、仕事増やさないで欲しい・・・


「グダるなら、賢治はあお姉と勉強すれば?」

「ん。そうさせてもらうわ。じゃ、あおいさん。いいっすか?」

「うん、いいわよ。それじゃ、あっちの方でやりましょうか。」


そして、カウンター席には俺と勝さんだけが残る。普通、こういう時気まずくなるなんだけどね・・・


「タク坊よ。今日は何時代だ?」

「あ、じゃあ明治初期でお願いします。」

「うむ。任せとけ。」


俺たちは、普段勝さんから、日本史を教わっている。勝さんは日本史に関しては本当に詳しくて教科書に載ってないことって言うか、載ってる事すら面白く話してくれる。


「ふむ・・・なら戊辰戦争の話でもするかね。」


◇◆◇

「勝さん、そろそろお客さんが来る時間ですよ。」

「ふむ。じゃあ続きは今度にしようか。」

「毎回タメになる話を聞かせてくれて、プラスでお金を払いたいくらいですよ。」

「そんなことないぞ?タク坊が聞いてくれるからワシは暇を潰せるしな。そういえば、あの二人はどうだ?」


そう言われて、俺たちはあお姉と賢治の方向を向く。そういや、すごく静かだったような・・・


「賢治くん!?そこはhave beenじゃなくてhad been!あっ、そこthe抜けてる!はい!もう1回ね!」

「もう・・・限界・・・」

「男がそんなのでどうするのよ!ほら起きて!もう1回よ!」

「た、助・・・けて」


俺はその賢治の声を聞き、親友のピンチにいてもたってもいられなくなり立ち上がる。


「ここに、お金置いておきますね。」

「ふむ・・・少し多くないかい?」

「いつも割り引いてくれてるお礼です。それでは失礼します。」


そして、立ち上がる。さすがにあお姉はやりすぎてるしな。


「ん?あれ?タク坊や、ケン坊をどうする気だ?」

「え?ああなったあお姉は僕には対処しきれないので帰ります。巻き込まれたくないので・・・」

「おい待て賢治!それはずるいぞ!!」

「たっくん〜!私ともお話しようよ!」


そう言って賢治は俺がドアを開ける前に俺の手を掴んできて・・・


「1人だけ帰るなんて・・・許さないぞ?お前も地獄を見ろ・・・」

「たっくんもおいで〜!」

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「これも・・・青春じゃの。」

ちらっとそっちを見ると、勝さんがそういう風に小さな声でいいつつ、コップを拭きながら微笑んでいた。

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