第50話 オヤジギャグより寒くなる魔法

「…戻ってきたのか?」


そこに居たのは俺の父だった。


「あぁ。」

「どこ行ってたんだ?」


俺の親父は、俺に一言も言わずにこの家を出ていってしまった。

まぁ、俺がその時引きこもってたってのもあるんだが…


「え?お前読んでないのか?」

「読んだ…何を?」

「置き手紙の事だよ。」


置き手紙?なんの事だ?この置き手紙のことか?


「置き手紙なら、、、」


あれ、置き手紙どこやったっけ?えっと置き手紙置き手紙…


「拓馬、はいこれ。置き手紙探してるんでしょ?」


そんな風に渡してくれたが、いきなり俺の父と会わされて、ももは少し困惑していた。ってか、この人が誰か分からないか。

すると、父が口を開く。


「なっ!?…、君がもしかしてももちゃんかい?」


え、なんでこいつもものこと知ってんの?そういえば、前俺の学校の授業参観に来てたよな。まさかその時に可愛いから覚えた…とか?


「えぇ、私は栗原ももと申します。」

「そうだったのか。あ、自己紹介が遅れて申し訳ない。僕は、拓馬の父の和馬だ。」

「あっ!?お父さんだったんですね!?そういえば前、うちの高校にいらしてましたよね?」

「ん?そうだったの?」

「あぁ。あの二人の転校の手続きにな。」


その二人の話になって一気に空気が重くなる。どこ行ったんだよ…


「えと、それじゃ私は失礼しますね。お邪魔しま…」


彼女がそう言いかけると父がそれを止める。


「待ってくれ。君も2人の友達だろう?少し聞いて欲しいんだ。事情は知っておいた方がいいだろう。」

「でも、家族間のことですし…」


すると、父は目を見開いて言う。


「何言ってるんだい?君は拓馬と付き合っているじゃないのかい?」


おい親父…やめてくれよ。

オヤジギャグよりも空気が冷たい。どうしてくれんだよ。


「えっと、」


ほら、ももも困ってる。


「私たち、まだ付き合ってないですよ?」


その一言で一気に場が静まる。なんで親父はニヤニヤしてんだよ気持ちわりぃ。

めんどくさ…またこの場の収集も俺にさせんのか…


「はぁ、、、」


◇◇◇


何も考えずに家を飛び出してしまった。

お姉ちゃんがなんの理由もなくあんなこと言うわけないのに、私…何してるんだろ。


「はぁ…でも、今更家に戻るわけにもなぁ。」


行く宛ては遠いだけで無いわけじゃない。ただ、おにぃの家にはここから車で30分はかかる。

財布ごと置いてきちゃった私には何にも為す術なく、このまま帰るしか無かった。


「でも、こんなにすぐ帰ってもなぁ…出てきちゃったし、少しぶらついてから帰ろ。」


そう思い、街中を歩いていると見慣れた顔の人を見つける。


「あれ、あの人って…」


私は一筋の希望を握りしめ、彼の元へと向かった。

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