第5話 親友は親しい友達というより親くらい愛せる友達なんだよな。
勢いで学校に来たのはいい・・・
だが、3日間も学校休んでなんて言えばいいんだ?まぁ、友達自体はそんなに多いとは言えないけども、陽キャというかコミュ力が高い奴らはそんなこと気にせずに面白そうなら話しかけてくるからな。怖すぎな。
ため息をつきながら教室のドアを開ける。特に誰も俺のことは見てない…?
良かったと安堵していると、不意に後ろから聞き馴染みのある男の声がした。
「拓馬じゃん!どこ行ってたんだよ!」
こいつは俺の小学校からの友達の大伴 賢治。っていうか別に紹介してもしなくてもいいんだけども、とりあえず紹介を・・・
っていうか、それ所じゃねぇよ!今ので教室の注目集めちゃったじゃん!!馬鹿なの!?ねぇ馬鹿なの!?と心の中で親友に鉄槌をくだしつつ言う。
「詳しくは俺の席でな・・・注目集めるだろ…」
「あっ、ごめごめ。でもお前が休むなんて珍しいよな?昔だったら栗原さん拝みに何がなんでも学校来るだろ。」
あっ、栗原っていうのはももの事ね。栗原もも。栗とももが入ってて名前はわりと覚えやすいよねってそんなことはどうでもいいよな。
俺の席に到着してみると改めて思う。久しぶりの光景だなぁと。3日間、部屋から出ずに飲み食いを最小限にして泣き続けてたから・・・マジ今でも3リットルくらいなら思い出し涙出せる自信あるわ。
「で?なんで休んだの?なんか様子も変だしさ。休んだら、昨日ももになんかあった!?とかお前絶対聞いてくるじゃん。」
何それ!?さすがにそこまで酷くないと思うんだが。そこまで酷いともはや泣けるぞ!!
でも、こいつとも割と長い付き合いだし話すだけ話しとくか・・・
「実はな・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「え?それマジ!?」
「嘘でこんなことを言うとでも?」
「いや、お前の目からして本気だろうな。」
こいつ俺の目で分かるのかよ、強スギィ!
「にしても、栗原さんの彼氏って誰だろうな・・・?」
賢治はこの質問を割と大きな声で言ってしまった。つまりここから何が起こるか分かるだろうか?俺には分かるね。最初に言っただろ?陽キャっていうのは面白そうな話題には話に入ってくるって。
「え!?それマジ!?ちょ聞かせろよ!」
「んなんな!超気になるンゴ!」
「嘘〜!?ももりんに彼ピッピ!?聞きたい〜!!」
この状況を一言で表すなら
あっ察し
だろうな。これ以上にこの言葉が似合うところがあるだろうか、いやない。
なるほどな。これが古文で言う反語ってやつなんやな。
しかし、悲劇はそこでは収まらなかった・・・
ガラララララ・・・
その音と入ってきた女の子。昔俺が片思いしていた女の子が入ってきてしまったのである。この状況を一言で表すなら
あっ察し
だろうな。さっき反語使ったけど訂正するわ。これ以上に・・・以下同文
さて、そんなことはどうでも良くはないけれどもこの後どうなるかは分かるだろう。
「ももりん彼ピッピ出来たの!?」
「もも、彼氏出来たんだって!!」
「え〜俺もも狙ってたんだけどなぁw胸あるしw」
おい、3人目出てこいや。ぶちのめしてやる。
だが、ももとてコミュニケーションの達人の一人。ここは上手くかわしてみせる。
「え?なんのこと〜?っていうかそんなこと誰から聞いたの!」
「ん?拓馬だぞ?」
「な?拓馬?そうなんだよな?」
そこで俺に話を振るなよ。面倒になるだろ。まぁでも言ってたことは事実だし、俺の初恋は終わったわけだし。もう言ってもいいかもね。
「いや〜。俺ももの事好きだったんだけどさ。彼氏いるって言われたもんでね。もう俺の初恋も終わりよw」
これが、俺の初恋の終わり。向こうも俺の片思いにうんざりしてたかもしれない。だから、これでいいんだ・・・
「あ〜、ちょっとトイレ行ってくるわ。」
そう思おうとした。そう努力したけど、さっき言った3リットルくらいの涙がこぼれそうで、思わず俺はまたその場から去ってしまった。
行くあても無く走り続ける俺に1人ついてくる者がいた。
「なぁ賢治。なんでついてくるんだよ。」
「拓馬?お前はどこに向かって走ってるんだ?」
「っ!そんなこと知らねぇよ!俺は・・・ただ俺は・・・」
感情が抑えきれなかった。凄まじい鼓動。跳ね上がる気持ち。込み上げてくる涙。恐らくそれを賢治は察したのだろう。
「なぁ?屋上行かね?」
「あそこ…入れないだろ?」
「もし入れるって言ったら?」
賢治はヒョイっと鍵を取り出すと屋上を開けてくれた。
「なんで鍵を持ってるんだよ。」
「お前が休むなら恐らくもも関係だと思ってな。それも失恋だとな。だったらお前は1人になりたいはずだろ?なら、屋上くらい俺が鍵取ってきてやるよ。親友だからな。」
あぁ・・・改めて思う。交友関係な広く浅くよりも狭くずっと深く。深すぎてもはやマリアナ海溝やんけって位でもいいと思う。そういう1人の親友に巡り会えることが1番の幸せなのかもしれないな。
「なぁ、賢治?1限目サボってくれない?」
「俺もここにいていいのか?」
「話し相手は欲しいしな。それに、授業で何やったかとか教えてくれよ。」
「お前、自分だけサボるのが嫌なだけだろw」
「なんか悪いかよ!!」
「いや、なんかこういうのいいなぁって思ってさ。俺でいいならいくらでも話に付き合うぜ。」
その後、1限目だけでなく2時限目までサボってしまったのは秘密・・・
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