第10話 帰りたい、帰りたい、冷たい我が家が待っている〜(震え声)
さて、6時から始まるタイムセールとやらに行こうとしていたが、何があったのか6時半になっていた俺たちは惣菜コーナーに全力ダッシュしていた・・・
「ついたよ!おにぃ!見て!」
「おっ!まだ残ってるぞ!」
奇跡的にと言うべきなのかセール品である惣菜はまだ少し残っていて、3人で食べるくらいなら調達できそうだ。
「おにぃ!何買う?」
「じゃあ俺はコロッケを・・・」
「いいね〜」
おっといかん。ここはレディーファーストの精神を忘れずに・・・
「じゃあサラダでも買うか?」
「野菜は家にあるよ?」
「じゃあサラダチキンでも買うか?」
「その辺のお肉の方が美味しいよ?」
「えっと・・・じゃあタピオカか?」
「・・・おにぃ馬鹿じゃないの!?」
あれ?とりあえず女子ってタピオカって言っとけば喜ぶ生物じゃないのか?賢治は「タピオカって言っとけば大抵どうにかなる」って言ってたぞ!?
「あれ、なんか変なこと言ったか?」
「おにぃ・・・夜ご飯にタピオカは無いってw」
あれ。めっちゃ笑われてるんだけど!?まぁ、そういうものなのか?とりあえずタピオカ。略してトリタピしておけばいいんじゃないのか?
じゃあ何がいいんだと考えていた時、
「おにぃ!この鶏の竜田揚げ食べたい!」
「おっ!いいじゃん!美味そうだな!」
「この鶏の照り焼きも!」
「それも美味そうだな!大歓迎だ!」
「じゃあこのローストビーフも!」
「美味そうだな・・・って、それだけ値段高すぎだろ!!」
「バレちゃった・・・?」
コロッケ、竜田揚げ、照り焼き。順番に値段が少し高くなってると思ったらそういう事かよ。さっきこいつが来る前に買い物したからそんな金ねぇよ・・・
「じゃあ、せめて3つにしてくれ。」
「じゃあ、ローストビーフと、ローストビーフとローストビーフで!」
「お前は俺の財布を空にしたいのか!?」
「財布が重そうで可哀想だなって思って・・・」
「その程度の重さは何も苦じゃねぇよ!?」
結局のところ、ローストビーフと照り焼きとコロッケを買うことになった。俺の財布の残り、59円なんだが。
でも、これで可愛い姉妹の笑顔が見れるなら安いってことか。
いや無理だわ!高すぎだろ!!俺の笑顔やるから少し返してくれ!
ん?誰だ?今、お前の笑顔見てやるんだから金よこせって言ったやつ。悲しくなるからやめろ!
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家に着いた。暖かい我が家に着いた。いや、正確には空気が冷たそうな。とても冷たそうな我が家が俺たちを待っている気がする・・・
「ねぇ、おにぃ?」
「ん?どした?」
「おにぃ、少し震えてない?」
「そういうお前こそ、少し顔色が悪くないか?」
「い、いや〜?そんなことないよ?」
「俺はなんて言っても武者震いだからな。」
ドアを開けたくない。分かる。この家からはハッキリと怖いオーラが滲み出ている。あお姉!!隠して隠して!
「じゃあ、妹のみずきが開けてくれよ。」
「ん?おにぃの方が年上なんだからおにぃが開けてよ!」
「いや!ここは付き合った年月が長いみずきがやるべきだ!」
「いいや!年上がやるべきだよ!妹にかっこいいところ見せる所だよ!」
「見せたところでなんになるんだよ!!」
「年下の妹にたよってる時点でかなりダサいよ!」
あっ、やべ。その一言は心にくるわ。心にチクリじゃなくて、ブスッって感じ。もうやめて!俺のライフはもうゼロよ!
にしても、ここで言い争ってても埒が明かない。なら仕方ない。ここは兄としての威厳を保つために、
「よし!ここは俺が・・・」
ガチャリ・・・
あっ察し()
「おかえり〜2人とも早くシャワーだけ浴びてきてね。」
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みずきを先にシャワーに浴びせてます。その間オレとあお姉は食卓で一緒に料理を少ししています。なんでこんな敬語口調なのかはわかってください。
「ねぇ?たっくん?」
「は、はい。なんでしょうか・・・」
「私、怒ってないからね?」
「えっ!?そうなの!?」
俺が安堵したところに彼女がトドメの一撃。
「怒ってないよ?別に7時に食事にしようとしてたのに、7時半に帰ってきて、8時くらいに食事になるだろう事なんて私、これっぽっちも怒ってないんだから!」
あの、やめてください。その笑顔が怖いんですよ!!さてさてどうしたものか・・・
仕方ない・・・最後の手段として用意してたものだが、
「あお姉、ちょっと待ってて。」
「ちょっと!?どこ行くのたっくん!?」
置き勉勢の俺の普段はスカスカなカバンの中を探る。
「さて・・・これで許してくれるかな・・・?絶対無理だけどね・・・」
そんなことを思いながら、心の奥底では、っていうか心の奥底(心の八割を占める)ではブラコンな姉なら行けるんだろうななんて思ってしまっていた。
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