第43話 十二次元の異端者
目をつぶり覚悟を決めた私、愛莉は禍々しい剣を頭上に構えると、思いっきり刺し込んだ。
剣先は”Stars Logbook”を真ん中から貫いた。
「本を刺すの? え? どうして……」
動けずに居た私はその場に、緊張感が融けヘナヘナと座り込んだ。
目の前、私が手にしていた本、Stars Logbookには、深々と小さな剣が刺さっている。
さっきは貫いたように見えた、剣先が反対側に飛び出ていない。
愛莉が手を伸ばし、座り込んだ私を助け起こしてくれた。
(いつもの愛莉に戻ったの?)
剣を半分飲み込んでいるように見える”Stars Logbook”が青く輝き初め、霧のように光をまき散らした。
いったん広がった霧は、なぜか私のまわりに集まり初め、少しずつ何かを形作って行った。そしてついには人の姿となった時、愛莉がとても愛しそうに光から生まれた人のことを見つめている。
強い意思がこもっているように輝く銀色の瞳と、美しい銀色の髪。
「もしかして……フレイヤ?」
私がつぶやくと、愛莉が頷いた。
「そうよ、悠里絵。あなたがフレイヤ。やっと思い出してくれたのね」
私は首を振り、愛莉に聞いた。
「思い出す? なぜこんなことになったの?」
「時間も空間も無限に繋がっていると言ったらイメージできる? 未来と過去もリングのようにまあるく繋がっている」
「そういうリングはたくさん並行して存在している。モイラと戦ってフォームを無くしたフレイヤは、繋がっていたここ、現代へと飛ばされた。フォームを持たず、エーテルだけでは長く存在していることはできない。すぐに魂が消滅してしまう。それで、まだ生まれたばかりの悠里絵の身体にフレイヤは融合した」
「悠里絵とこの世界を生きていくために、この世界に存在してはならない、光の神の記憶を捨てたんだと思う。自分がこの世界の災いとならないように。フレイヤの捨てた記憶が”Stars Logbooks”となった」
「悠里絵には本に見えているようだけれど、これは”力のある記憶”であって、実態を持たない。これを感じた人のイメージでどんな形にも見えるの」
驚く暇さえないくらいに、私の頭は高速回転をしたが、まったくついていけない。
「飛ばされたフレイヤのエーテル……フレイヤが私の中に? これって逢えたっていうのかな?」
こんな時に私は何を言っているのだろう。
シルバーグレイの瞳のフレイヤが私のことを見つめている。
たぶん、今、私の顔は赤くなっているはず。どうしよう。
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