第4話 次元の果ての艦隊
銀河の果てには漆黒の空間が広がっている。
そこには色も、何者の気配も感じられない。
何も存在しない空間。そこにあるのはただ、ただ、無。深い黒。
無の黒の世界に一筋の光が現れた。一筋の光は、一瞬の間に、そこにある黒の全てを覆い尽くすような大きな光へと膨らみ、一瞬の後に弾けた。弾けた光は、ひとつの銀河に匹敵するくらいの、膨大な数の光の星雲となった。
光の雲を構成する小さな光、その一つ一つは全て船だった。
漆黒の宇宙に広がる、無数の純白の宝石を思わせるような、何千万もの宇宙船。艦砲やミサイルを備えた船が多く、その形状から、戦闘艦であることが分かる。船団の中央には、他の船とは比べ物にならない、衛星と見紛う程に大きく、独特な円錐形の宇宙船があった。
その船は艦隊の旗艦マスティマ。マスティマの最上層、巨大なコントロール室に美しい声が響いた。
「艦隊のジャンプ完了を確認」
艦隊の管理を担当するジョブである”管理する者”の声は、続けて艦隊全員にブロードキャスト(一斉送信)で、現在の艦隊状況を告げた。
「相互補完ジャンプの余波により、二千二百四十七隻をロスト。”管理する者”は、前後、四秒時間をスキャンし、ロスト船を捜索せよ」
多数の船の同時ジャンプは、中央の旗艦からのシグナルで同調して行う。その際、シグナルが最端の船まで到着するのに僅かな時間のズレを生じるため、同じ空間、同じ時間に出られない船が出てしまう。ジャンプ終了後に、空間と時間の中を捜索する事で一緒に出られなかったロスト船を探しだし、回収する必要があった。
「報告。ロスト船の回収完了」
状況の変化に合わせて、担当する管理する者が最新情報を艦隊全体へと発声する。
遠い未来……進化した人類は心をデジタル化し、”エーテル”としてプログラムすることに成功した。そしてエーテルを人工の肉体に入れることで、永遠の人間を作りだした。 永遠の人間は、フォームと呼ばれる目的ごとに性能と形が肉体に設定された。
生産する者、政治をする者、スポーツをする者、そして戦う者。
旗艦マスティマの艦内には、戦闘用の三つのフォームが設定されていた。
艦隊に状況報告の声を発していた”管理する者”の他に、”力を生む者”と”判断する者”が存在している。
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