第32話 光の鎧

「光子ガトリング起動。光ビット装填。照準オート。攻撃を開始します」


 オペレーターの声が船内に響く。マシンガンのように連なる、光の弾丸が装填されていく。ガガガガガガガガガガン

 光ガトリングによる攻撃が始まった。一分間に二百五十六発の光弾を打ち込む。


 だがアガレスの強固なシールドは、光ガトリングの強力な攻撃を吸収してしまった。

「報告。アガレスへのダメージ、0.2%。効果的なダメージを与えられません」

 オペレーターの戦況報告に、フレイヤが指示を出す。

「他のウェポンを選択せよ」

「警告。距離が近すぎます。他のウェポンを選択できません」

「警告。アガレスが距離を詰めてきます。接触まであと三十秒」

 フレイヤが叫ぶ。

「緊急指示。艦内を迎撃体制へ移行せよ。敵が乗り込んでくるぞ!」

「了解しました。対象クルーのフォームを、”守る者”に変換します」


 敵の艦内への侵入を許し、白兵戦になってしまった場合に備え、艦内を守る兵士として戦うためのフォームを“守る者”と呼んだ。緊急時にのみ、”力を生む者”及び”管理する者”から選択され、フォームとスキルが接近戦闘用に変更される。


 鈍く大きな衝撃で船が揺れた。


 アガレスが、マスティマのシールドを突き破って激突してきたのだ。

 ぶつかり合い、大きく揺れる二つの巨大艦船。

 軌道を逸れた、巨大な二つの船は宇宙を高速で流されるが、それをものともせずに、アガレスはその船体をマスティマ内部へと押し込んでいく。


「艦内の生体反応をスキャンせよ。敵を探せ。攻撃には光剣を使用し、重火器は使用を禁ずる」


 フレイヤがマスティマの内部を破壊しないように、”守る者”が使用する武器の限定を指示する。オペレーターの声が船内に響く。


「警告。船内への敵テレポートを確認」

「“守る者”に迎撃させよ。船内テレポートシステムの使用を許可する」

 フレイヤが自分専用のコンソールを呼び出す。

「フレイヤ、強制ログアウト。フォームを、”戦う者”へ変更する」

「了解しました。フレイヤ、強制ログアウト。光のメサイヤを起動します」


 船内上部から十二の光球が降りてきて、フレイヤの周りを静かに回り始め、少しずつ回転を速め、輝きを増しながら、フレイヤの胸の辺りまで降下していく。


 フレイヤは立ち上がり、光球に向かって手のひらをかざすと、十二の光球が力の循環を描き始める。やがて光球は一つの透き通った魔法陣になった。

 フレイヤを中心に輝き、回転を続ける魔法陣。力の循環は続き、フレイヤの身体に光を纏わせていく。徐々に変化するフレイヤの姿。同時にスキルと知識も変更されていく。


「ウェポンはマサムネブレードを選択」


 フレイヤの言葉で、光の刀、マサムネブレードが出現した。

 フレイヤの胸に十二の翼を持つ光の天使の姿が浮かぶ、白き艦隊の戦旗の十二翼の光の獣の姿だ。光の艦隊で最高の戦闘力を持つ”戦う神”へと、フォームチェンジが完了したフレイヤが命じる。

「テレポート開始!」

 強い光がフレイヤの体を包み、光の瞬きがフレイヤの身体を戦場へ飛ばした。

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