第33話 艦内戦
マスティマの船内、第二格納室では、マスティマにテレポートし、白兵戦を仕掛けた闇の神たちが、戦闘用スーツ”バトルウォーカー”を装着して攻撃を繰り返していた。
バトルウォーカーは、本来は宇宙活動用のスーツだが重火器を装備し、拠点制圧用に改良されていた。
光の神のように、目的が敵の絶滅であれば、艦隊攻撃で星ごと消してしまえばいい。しかし、闇の神は、植民地化や種の交配を目的としていた。
惑星の占領が優先され、被害は最小限とする必要があった。当初は十二mもあったバトルウォーカーを徐々に小型化し、現在では三m程度、十分艦内でも、行動可能なサイズとなっていた。
マスティマ船内は爆裂音が鳴りやまない。
バトルウォーカーが使用しているLRガン(リニアレールガン)は超伝導の力で、数ミリの金属を加速させ、光速のスピードで撃ち出される。
光の軌道を描くその弾丸は、命中すれば大爆発を起こす。
すでに光の神の”守る者”は壊滅状態だ。手、足、頭、体、指。バラバラになった”守る者”が空中を舞う。
血が舞う赤い空間に、光の瞬きが発生し、白き艦隊の総司令官であり、光の神の戦神フレイヤがテレポートで姿を現した。
闇の神たち、バトルウォーカーが一斉にフレイヤを標的とする。
LRガンの光の軌道がフレイヤを襲い、爆発し続ける。
硝煙が巻き起こる戦場に、一筋の光の影、一機のバトルウォーカーの横を通り過ぎた、腕がLRガンごと床に落ちる。
バトルウォーカーのパイロットたちには、何が起こったのか分からない。
そして見た、部屋の中央にバトルフォームに換装したフレイヤが立っているのを。
手には白く輝くマサムネブレードが握られている。フレイヤはマサムネブレードを、両手に持ちかえると、格納室内にいる全員に向かって言った。
「この船を汚した罪は――己のエーテルで償え!」
攻撃を続けようとする、バトルウォーカーのパイロットたちに、パイロットリーダーのヤツカから制止が入る。
「待て! ここからでは味方に当たってしまう。全機シンクロ後に一斉攻撃とする」
すぐにバトルウォーカーのリーダー機から、全機に命令が飛び、リーダー機に残り全てのバトルウォーカーがシンクロを開始した。
「シンクロ完了。全機最大火力。目標、光の神。一斉攻撃開始せよ!」
ヤツカの指示で二千機のバトルウォーカーによる、フレイヤへの一斉攻撃が始まった。轟音の中、天井は崩れ落ち、砕けた床が舞い上がる。視界はどんどん狭くなる。
「爆発の影響によりスキャンできません。光の神をロストしました」
偵察機のパイロットが。リーダーであるヤツカに報告した。それを受け、ヤツカはチームへ指示を出す。
「全機に告ぐ。自機の損傷回復とLRガンのチャージを行え。完了後、グループごとにパーティを組み、残っている光の神を捜索。司令部の制圧を行う」
(こんなに簡単に、光の神の旗艦を制圧できるとは。アイリとかいう者のおかげか……)
思いのほか有利な戦況に、ヤツカは驚いていた。
アイリと名乗る女は、マスティマのシステムにアラートを仕込み、システムの再起動が必要となるように仕組んだ。
再起動をしている数十秒の間に、黒き艦隊の旗艦アガレスをマスティマの近くまでジャンプ、瞬間移動させる。そして、白兵戦用機動兵器バトルウォーカーがマスティマ内部を攻撃、占拠する。
”判断する者”であるフレイヤにシステムからの情報が伝わらず、判断できない状況になれば、艦隊全体の判断は遅れる。光の艦隊の弱点をついた作戦だった。
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