第34話 光の神の力

 ヤツカはシートのロックを外し、腕を伸ばす。


「この船を再起動させ、我々がテレポートするタイミングを作ってもらったことは確かだが、光の神は所詮、か弱い女の軍隊だったということだな」

 ヤツカに笑みがこぼれたところで、システムから報告が入る。

「ヤツカ、レッドチームが攻撃を受けています」

「なに?」

 驚くヤツカに報告が続く。

「レッドチーム全滅しました。ブルー、イエロー、グリーンも戦闘を開始」


(ばかな、なにが起こっている?) 


 現状を把握しようと焦るヤツカ。

「全方位をスキャンしろ! 敵の特定を急げ!」

「イエロー全滅。グリーンからヘルプ要請あり。全方位スキャン開始」

 信じられない戦況報告にヤツカが叫んだ。

「馬鹿な! 我々は惑星一個を楽々制圧できる戦力なんだぞ!」

「報告。機能停止およびロスト機体、千二百九十八。稼働機七百二十」

「グリーン壊滅。ブルーとの通信が途絶えました」

 次々と報告は入るものの、ヤツカには状況が信じられなかった。


「報告。スキャン回復しました」

「どこだ! 敵はどこにいる?」

「敵光の神数1。戦闘力分析、パワーS、速度S、現在位置、前方距離20m」

「なに!」

 ヤツカがモニターに目をやった。


 熱と煙で視界が狭まる画面の中、多くのバトルウォーカーがLRガンで、光の神を攻撃している。しかし、その弾道は、光の神の残像を捉えているだけで、本体をかすめる事もできていない。


 数機から発射された追尾ミサイルも、光の神のあまりにも速い動きに、無駄な爆発を繰り返している。


 煙の中にキラっと光が走ることがある。マサムネブレードを使って超高速での移動、転進、攻撃を行うフレイヤが残した光の残像だった。


「これが、光の神の実力なのか……」


 肉眼はおろか、如何なるスキャンでも、フレイヤを捉えることはできなかった。


 そして驚異的な速度で振り下ろされる、マサムネブレードが、いかなる物体をも簡単に切断していく。


 腕、頭、胴、足。バトルウォーカーが斬り弾かれ、空中に散乱する。

 オイルと鮮血で床は真っ黒に染まった。返り血さえ浴びることのないフレイヤは、光を纏い、美しく輝いている。


 恐怖に襲われたヤツカは動けなかった。そして自身の死を確信した、目の前に映った数字に。

「戦力分析報告。味方機残り1。勝利確率ゼロパーセント」

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