第35話 闇の鎧

 絶望的な戦果予想が報告され、ヤツカは目を閉じて覚悟を決めた、その時に報告が入る。

「テレポート反応あり。出現予測地、後方10m」

「誰だ?」

 ヤツカは後方を写したモニターを確認する。出現したバトルウォーカーの黒い機体

には、エース番号A-01が描かれていた。総司令パルヒョンの機体であった。


「よう、待たせたな。こりゃまたすごい状況だな」

 二千機のバトルウォーカーが、破壊され残骸になった惨状を、確認したパルヒョンが言う。

「ほう、相手はかなりの美人と見える」

「総司令、あいつは化け物です。撤退しましょう」

 ヤツカは進言する。

「そうしたいところだが、あまり時間が無い。アガレスがマスティマに押し込んだ後、二艦ともかなり流されている。」


 パルヒョンの黒い機体が、ヤツカの横に並んだ。ヤツカが叫ぶ。

「無理です、総司令! 逃げてください」

「さあ来い! できるだけお手柔らかに頼むぞ」


 LRガンを構えて、ヤツカの前に出たパルヒョン。パルヒョンの言葉が届く前に、すでにフレイヤは攻撃を開始していた。まさに閃光。パルヒョンの機体は一瞬で斬り裂かれた。


「さすがに敵の総司令。急所は外すか……」


 動きを止めてフレイヤはつぶやく。

 断片的に見えていた残像が集まり一つになると白銀の鎧のフレイヤ立っていた。

 超剣マサムネブレードを払うフレイヤ。


「早い。強い! 店の宣伝みたいだな」

 パルヒョンが後退しながらつぶやく。パルヒョンの機体は胸から腹にかけて斬り裂かれ、硝煙をあげている。


「ふざけてないで司令! 撤退しましょう!」

 ヤツカがパルヒョンに叫ぶ。

「心配するな、こちらも本気でいこう」

 音をたててパルヒョンの機体が砕け散り、甲板に立ったパルヒョンが叫ぶ。

「来い! 闇の鎧!」

 何もない上部の空間が闇を発生させ、黒い羽根のが大量に降り注ぐ。


 黒き翼を携えた漆黒の鎧が現れた。


「なるほど、おまえも光のメサイヤを操る者」

 目の前に現れた闇の象徴、暗黒騎士にフレイヤが呟いた。

 聞こえる恐ろしい叫び声。パルヒョンの黒き大剣、ソウルイーターが、不気味な叫び声をあげながら、まっすぐとフレイヤへ降り下ろされた、パルヒョンが叫ぶ!

「おら!」

 黒剣をマサムネで受けたフレイヤに、パルヒョンが呟く。

「そういうこった! 美少女司令官殿。勝負はここからだ!」


 二撃目を放つパルヒョン、瞬間にフレイヤの姿が歪む。

 それは残像。パルヒョンの剣が残像を通り抜ける。

 間髪入れずにフレイヤのマサムネブレードが光の筋を放つ。

 闇の鎧は強烈な一撃をかわして、前へと出る、白と黒の閃光が、お互いを通り抜けていくかのように見え、交錯する圧倒的な力、光と闇。


 何十回と光と闇が斬り結ばれ、フレイヤが素早く大きく踏み込む。


「ここだ!」

 フレイヤの声が響く、のけぞるように剣を振りかぶり、反動をつけてパルヒョンめがけて叩きつける、マサムネブレードが輝く。


 打ちだされた光の円に向かって、ソウルイーターが不気味な音を立てる。

 闇の剣がエーテルを放出して、パルヒョンの周りにシールドを張る。

 シールドで弾かれたフレイヤが姿勢を崩した、真下から天井に届くような大きなモーションで、パルヒョンが剣を打ち上げる。


 素早く姿勢を正し、上段からマサムネを振り下ろすフレイヤ。

 打ち合う互いの剣に弾ける光と闇。

 二人の重ねた波動が巨大な旗艦マスティマを大きく揺らす。


「シルバーナイトとダークナイトの戦い……まさか」

 圧倒的な力のぶつかり合いで起こった爆風の中、ヤツカはつぶやいた。

 神話に出てくる最強の剣士たちの名前を。


 遥か昔の戦争で使われた兵器。光のメサイヤ。

 恐ろしさと驚異的な力に、目をそらせないヤツカ。


 二人の戦いは数時間続いた。


 一見、互角の戦いのように見えた、だが徐々にその力の差が表れてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る