第42話 親友の変質
肩を叩かれ驚き、ショックで椅子を落とした私の後ろには愛莉がいた。
この異常な状態が起こり始める前から、一番先に様子がおかしかった愛莉。
この異変は愛莉が関係している? 愛莉が原因なの?
再び震えに襲われる私に、愛莉が話を始めた。
「世界は繋がっている。時間も空間も。ルート権限で結ばれたディレクトリは、時間は円のように繋がり進むリング。もっとも遠い未来は、一番近い過去。そして無数のリングは干渉しあう」
「何を言ってるの? これはどうい事なの愛莉!?」
愛莉の言葉の意味が全く解らない。どんどんと心に広がる恐怖で身体から力が抜けて行く。私をジッと見つめる愛莉の瞳が、再び真紅に光った。
「あなたは、仲間に裏切られて殺されたことはある? 私はあるわ。仲間に消去された。想いも身体も一緒にね」
力が抜けて私が寄りかかった机の上に、大きなペーパーウェイトがあった。とっさに私はそれを掴んだ。
「さあ、この剣で刺すのよ」
愛莉はどこからか小さな剣を取り出していた。
複数の刃がねじれながら絡まる小さな剣。
不気味な剣は私の方へと向けられた。
(殺される? 私は愛莉に殺されるの?)
「やめて! 愛莉やめて」
私は叫びながら、ペーパーウェイトを構え、後ずさった。それでも、愛莉はゆっくりと近づいてくる。
(愛莉が私を殺す、私は愛莉を……、殺すしかない)
私の心が冷たく色を無くし始めた。握りしめたペーパーウェイトを愛莉の頭に向かって、思い切り振り上げた。
けれど……。私の脳裏には愛莉の笑顔が浮かんできた。いつもひとりの私の側に居てくれた愛莉。
(やっぱりできない。私にはできない。)
腕の力が抜けて、振り上げていたペーパーウェイトは床に落ちた。それを見た愛莉は、小さな禍々しい剣を構えて、さらに私に近づいて言った。
「悠里絵、これで刺すわね。すぐに済むわ」
私はもう動けなかった。
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