第38話 電撃戦

 ジャンプでの移動は多少の障害物であれば破壊できるが、戦艦クラスの巨大な障害物がある場所には危険が伴い、ジャンプできない。


「何を考えている? たった8千だと? 前方に出現した、小規模艦隊を破壊せよ」

 少しの隙間に小隊でのジャンプを試みたシヴァ。

 モイラはシヴァの考えを読めない。だが敵の数はたかだがハ千だ。


「了解しました。巡洋艦による迎撃を開始に備え、本隊シールド艦のシールドを五分間解除」

 その時、シヴァ軍の姿がマスティマのメインスクリーンに映し出された。

 八千全ての艦艇はミサイル艦だった。


「まずい! すぐにシールドを下ろせ。巡洋艦の前進を止めろ!」

 モイラの本隊最前線には、二十万のシールド艦が配備され、艦隊全体をシールドで守っていた。

 ジャンプで突然現れた、シヴァ軍の八千隻を攻撃しようと、シールドをおろし、自軍巡洋艦隊が、今まさにシールドラインを越えている最中だった。


「無理です。現在巡洋艦がシールドラインを通過中。シールド下ろせません」


 シヴァ軍の八千のミサイル艦が、容赦なく攻撃を開始した。

 ミサイルは強力なシールドは貫通できないが、シールドが無い艦への破壊力は圧倒的なものがあり、八千艦の数は、戦況を覆すのに十分だった。

 ハ千の艦から、数千万のミサイルが発射され、モイラ率いる軍には爆発の赤い光と衝撃が走る。


 モイラは、司令官の椅子から転げ落ち、椅子に手をかけて起き上がった。


「戦況は?」

「我が軍は二十五パーセントの船をロスト。ミサイルの中に光子チャフが含まれているため、現在スキャン不能」

「やるな、シヴァめ!」

「スキャン回復」


 復活したスクリーンには、銀河にも匹敵する大艦隊、白き艦隊第九翼、シヴァの艦隊が映っていた。


 シヴァは速度の速い光速艦隊で、モイラの軍へ奇襲攻撃を行い、わざと空けさせたスペースにミサイル艦を配置し、一気にダメージを与える作戦に出た。

 そして攻撃で空けた隙に、遅れて後方から来た第九翼の本隊が合流したのだった。


「さて、どうする? 泣いて許しを乞うか……モイラとか言ったか?」

 マスティマのメインスクリーンに、第九翼総司令官シヴァが映った。

「さすが千年以上も戦い続けてきただけのことはあるのね。シヴァ、あなたには戦術では、とても敵いそうにないわ」

 クスリと笑って、顔をあげたモイラ。その瞳は禍々しいものだった。


 第九翼艦隊のシヴァに、オペレーターから報告が入る。

「緊急。我が軍の背後にジャンプする艦艇あり。その数、五千万隻を越えています」

「第七翼は全て出撃済みのはずだ。どこにそんな数の艦隊が隠れていたというのだ?」

 シヴァの考えを覆す、報告が続く。

「スキャン完了。黒き艦隊です。敵艦、五千三百八十万隻」


 モイラが嬉しそうに笑った。


「作戦では勝っても、戦いとしては負けね、シヴァ。今からあなたの軍を制圧して、あなたのことも私の操り人形にしてあげるわ。黒き艦隊の総指令パルヒョン、そして光の戦士フレイヤと同じようにね」

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