第12話 μοιρα

「μοιρα!」

「ハイ、オヨビデスカ?」

 フレイヤは後ろから近づいた者に、名前を問う。

「μοιρα。モイラなのか?」

「ハイ、ワタシハ”管理する者” 識別番号 F-CTL-A11009 エイリアス名 μοιρα」


 旗艦マスティマ最上層の、メインコントロールルームで、目覚めたばかりのフレイヤは、手でまぶたを押さえるようにしながら、モイラに話しかけた。

「何か……悪い夢を見た」

 モイラが不思議そうに、フレイヤを見つめる。

「メイカクナセツメイ、メイレイヲオネガイシマス」

 微かに笑って首を振るフレイヤ。

「すまん。お前達は夢を見ないのだったな」

「ハイ、ソウセッケイサレテイマス」


 頷くモイラは高い身長に、腰まである長い髪に赤い瞳。人々の理想、空想上のエルフの様な姿をしている。


「なにかのチームに参加していた。その中に、部下だと思うが、デザインがあまり良くないのがいた。どうやら私のシールドになるらしい」

「シールドデスカ。キンセツセントウ、フォームデスネ」

「そうだ。戦闘用のフォームなのだろうな。とてもそういう風には見えなかったが……」


 モイラより少し背の高いフレイヤが、モイラの顔へと視線を落とした。

「モイラ、言葉がおかしいぞ。とても分かりづらい」

「ハイ、ナゼカ、カイワガ、ウマクデキナイノデス」

「そうか。チェックしてもらった方がいいな」

 フレイヤはコントロールルーム下方に向かって声を掛けた。

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