第11話 交戦
旗艦マスティマの主砲により、黒き艦隊の中央部分に黒い空間が広がる。
「本艦の主砲ラグナロクの攻撃により、敵、黒き艦隊の先行部隊、二万六千二十四艦が消滅しました」
状況を監視する”管理する者”から、白き艦隊の総司令官フレイヤに、戦況が報告される。
「黒き艦隊、さらに進行中。我がシールド艦への被害が広がっています」
シールド艦は、艦隊の盾役を担う船で、防御シールドを特に強化してあるため、攻撃能力は殆どない。敵の進行速度を押さえるために、マスティマの主砲、ラグナロクを先制で打ち込んだ。銀河さえ破壊できる、白き艦隊の旗艦マスティマであるが、艦隊の中央に位置している状態では、前方にいる味方の艦隊が邪魔をして、そのパワーの五パーセント程度しか発揮することができなかった。
「重戦艦を戦闘速度3で前進、前衛のシールド艦の後方まで移動。味方に当てるなよ」
フレイヤは、黒き艦隊の攻撃により、被害が広がりつつある味方の防御ラインの状況を整えるべく、次の作戦の指示を出した。メインスクリーンに、味方の防衛線の戦いが映し出される。光と闇の攻撃がフレイヤの瞳に映る。
味方シールド艦は、数千枚のシールドを順次展開して、黒き艦隊の重砲撃艦の攻撃に耐えている。しかし、黒き艦隊は徐々に距離を縮め、砲撃の角度を直線にして、シールドを破壊してくる。
白き艦隊のシールド艦のエネルギーシールドが幾千万枚と破壊され、宇宙にきらめくガラスの破片のようだ。
重砲撃艦の主砲は強力であるが、長距離ではエネルギーが拡散して、著しく威力が落ちる。また斜めから、角度をつけて撃った場合はシールドに斜めに当たることでシールド表面を光弾が滑ってしまい、威力が落ちる。
黒き艦隊は、シールド艦との距離と角度を縮め、その威力を増大させている。
白き艦隊の重戦艦が防衛線に近づいた。
重戦艦は、強固な装甲を持ち、シールドを展開しなくても、基本防御が高い船で、機動力は落ちるが、その突進力は、艦隊随一である。フレイヤが右手を前方に差す。
「シールド艦は円形に散開を開始。エネルギーシールドの範囲を狭めろ。それぞれ自艦のみを守り、残り全てのエネルギーを推進力に回せ。重戦艦は速度をダウン。シールド艦の散開を待って、全艦攻撃を開始!」
シールド艦を敵の前から放射状に退避させ、重戦艦により敵戦艦の前進を止める作戦であった。フレイヤに接続されたターミナル5に、シールド艦が外輪のように散開する姿が映し出されている。そこに黒き艦隊が突入を開始した。速度を落とした味方の重戦艦との距離が縮まっていく。
「重戦艦、攻撃開始。同時にシールド艦を重戦艦の後方へ移動」
重戦艦の光子魚雷とリニア砲が光を発し始める。前進してきた黒き艦隊の船が、弾かれ、砕かれていく。
「これより、重戦艦を第一軍、シールド艦と長距離ミサイル艦を第二軍、その他を第三軍と呼称」
フレイヤが超高速で十二のターミナルから表示、伝達されるデータを分析しながら、最終作戦を立案した。
「黒き艦隊の前衛を破壊する。第三軍の再編成を開始。パターンB―6―Gを実施」
「了解しました」
二百人の”管理する者”が一斉にフレイヤに答えた。
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