第10話 時輪の決意

「マジで、危ない事になったら、時輪にお願いしたら? 悠里絵」

 愛莉は簡単に言ったけれど、それはかなり不安だよ。もうちょっと強そうな人がいい。けれど、その後に続いた愛莉の言葉は、皆が納得せざるを得ないようなものだった。


「時輪が刺されているうちに逃げればオッケーだね。まあ、時輪がやられちゃえば警察にも言えるし、一石二鳥よ」

 なるほど。いや、愛莉、それではあんまりだろう。案の定、すかさず時輪が聞いてくる。


「もしかして、オレって捨て駒なのか?」

 愛莉は黙ったまま、大きく頷いた。

「まあ、そういうことなら、仕方がないな」

 時輪は覚悟を決めた様子だ。

「そうよ! それでこそ時輪! 永遠のヤラレ役! 可愛い女の子のために盾となり、刺されるのだ!」


 150センチと小さくて、大きな黒目を持つ美少女の愛莉が、額にかかる前髪を掻き上げながら言った。

「警察沙汰にはなるけど、辛うじて死なない程度に、さっくりとヤラレてくれ!」

 この超破壊的な物言いは愛莉らしいけれど、今日は、あまりにも時輪が気の毒だと思ってしまった。


「わかった。その時には連絡をくれ」

 まるで世界を守る勇者のような言葉と、決意した男の姿。なんで、こうなるのかしら?


「今日もメール来なかったなぁ。銀髪の人を見たのって、やっぱり夢だったのかな」


 すっかり日課となった、放課後の図書館通いを終えて帰って来た私は、お風呂に入り髪を乾かしていた。チラっと携帯を見てみるが、着信ランプは消えたままでメールは来ていないようだ。

「ふぅ、仕方ない。続きを読もうかな」


 私は、”Stars Logbook”を開いた。

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