第28話 総司令官
皆が総司令官の言葉を待っていた、コホン、咳払いしてから話始める。
「うむ。光の神をデートに誘ってみようと思う。デートの帰りに押し倒すのはどうだ? 親密な関係になれば、相手も少しは優しくなってくれそうじゃないか?」
「総司令……」
身を乗り出していた全員が、それ以上の言葉を失った。
「ハハハハハ」
総司令官は、一人で大笑いしていた。
「笑いごとではありません」
再びキノエが大きな声を出した。その直後に、オペレーターから連絡が入る。総司令官は、シークレットモードに通話を切り替えた。今まで会議をしていた、数百の司令官がスッと視界から消える。立体映像であった。遠いところでは、数光年離れた艦から、会議に参加している者もいた。
「なんだ?」
総司令官が、いかにも人間くさいオペレーターに聞きなおした。
「報告します。ただ今、高速通信でファイルが転送されてきました」
「それが会議を中止するほどの緊急事態なのか?」
そう言いながら、総司令官はつぶやいた。
(まあ、毎度の退屈な会議なのだがな)
「はい。そのファイルの送信元が、”光の神”の旗艦マスティマからとなっています。しかも、光の神の、エーテルフォーマットのデータです」
総司令官は、思わず立ちあがった。光の神の誰かが、この艦に転送されてきたのだ。
「そのファイル、読めそうか?」
「はい。いえ、たぶん。知り合いの技術班のマニアな者が骨董品のエディタを持っておりますので、それを使えば、バイナリで開けるかと」
「そうか。すぐ読み込みを開始しろ」
「了解しました」
パーソナル回線が切れた。
(つまらない会議など、やっている場合じゃないな)
髭に触れながら、総司令官がまたつぶやく。
「まさか向こうから、デートのお誘いがあるとは」
黒き艦隊の総司令官である、パルヒョンは歩き出した。
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