第27話 闇の艦隊
宇宙の深淵にある黒き銀河。
真っ黒な雲の様な銀河の、その一つ一つは光を吸収する漆黒の船だった。
中でも、ひときわ大きな影は、闇の神の旗艦アガレスである。
旗艦アガレスの指令室では、連日、数百人もの艦隊司令官が会議を重ねていた。
「今だからこそ、光の神を叩くチャンスなのです!」
賛成と反対の意見が分かれる。
「いや、叩くのではない。共存こそが正しい道だ!」
司令官たちは、一応ヒューマノイドではあったが、様々な形態をしていた。肌の色、髪の色や長さ、身長、話す言葉さえ、様々であった。
意見が割れ騒がしい中、中央に座った艦隊の総司令官は、腕を組みながら、スクリーンに映る星を見ていた。彼の着る黒の軍服の胸には金色の刺繍で、六頭の龍が絵描かれている。
「総司令官、いかがいたしますか? ご意見を!」
もう何度も聞かれたことだ。結論など出ない質問に、少し飽きて、総司令官が言った。
「別れた彼女が、また綺麗になって戻ってきた。彼女は美人で、めちゃくちゃ強いときている」
ニヤリと笑った総司令官を、そこにいた全員が見上げた。
「笑いごとでは、ありませんぞ!」
大柄な司令官が、顔を真っ赤にしながら大声で言った。彼らはみな、様々な姿をしているが、どこかが機械化されている点において共通していた。
だが闇の神、かつて男であった者たちの進化は、女たち、光の神とは全く別のものだった。
元々”種の拡大”、つまり自分の種を撒くのが本能である為、他生物の絶滅など考えてはいない。交配できる種属とは、特に友好的であった。現在では、十二種の種族と交配し、その子孫を残している。
また、魂のエーテル化は随分前に行われなくなっていた。延命の為に肉体の機械化が必須となった。闇の神が他の種族と交配する上でも、肉体のある生物に戻ることが必要だったということもある。現在寿命は、約三百年。脳や体には、色々なサポート器具が埋め込まれ、百才以上は、ほぼサイボーグになっていた。
「では、どうする? 戦ってみるか、あれと全力で」
総司令官はメインスクリーンの。星々の中に浮かぶ、光の神を指差した。
「なぜか分からんが、今、向こうは本気で戦う気が無さそうだ」
総司令官は伸びた髭を撫でながら続けた。全ての司令官の中で、飛びぬけて若く見える姿で、その長身の身体は、機械化されていなかった。
「やれと言うのなら、皆で一緒に行くか? 世の中の平均年齢が、一気に若返るぞ!」
「総司令!」
今度は、やせ形の鋭い目つきの司令官が、大きな声を出した。
この黒き艦隊の副総司令官キノエだった。三百歳を迎えようとする、その姿に似合わない大きな声と鋭く冷たい眼光。若き総司令官は、気にせずに言葉を続けた。
「もう結構長いあいだ戦っているが決着がつかない。そこで、どうだろう?」
その場の全員が身を乗り出した。
「何か名案でも?」
真面目な顔をして、総司令官がつぶやいた。
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