第26話 タスクの削除

「八千万人のロスト。全軍の半分を失うことになるのか。そして二人は、通常の”管理する者”の五百十二倍の性能を持つ……。何故か感情を持ち、私達、”判断する者”でさえも持っていない涙まで流す。モイラとアイリはシステムバグではないのだろうか? 自軍の半分を失うことになったとしても、システムがバグでダウンする危険性の方が問題ではないのか?」


 自分の考えを声に出しながら、フレイヤは決断した。これから起こる闇の神との最終決戦。その前に問題は無くしてておくべきだと。


「オペレーター、アイリとモイラのパートナー解除を実行せよ」

「了解しました。最終確認、アイリとモイラのパートナー解除を実行しますか?」

 眉間にしわをよせ、厳しい表情をしたフレイヤが命令した。

「実行せよ」

 すると、“管理する者”から、警告がフレイヤに伝えられた。

「警告。モイラ、アイリのパートナー解除ができません」

 フレイヤは驚いた。


「なに解除ができない?」


 フレイヤが、アイリとモイラのパートナー解除命令を出す、ほんの少し前。アイリがマスティマの管理システムにアクセスを始めていた。

「コマンドモード起動、”login mille-feuille password *********”」

「了解。コマンドモード起動確認」


>kill F-CTL-A11009.


「最終確認。F-CTL-A11009を終了させますか?」

「フレイヤならば私達の状態異常に対して最終手段を取るはず。時間をかけて少しずつ私達を修正してきたけれど、もうこれ以上は無理ね。このままではこの艦隊、いえ、フレイヤが危ないわ」


 アイリの気持ちは揺るがなかった。

「Killコマンドを実行せよ」

 アイリは心の中でつぶやく。

(早くモイラを殺して。あの子が暴走を始める前に)

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