第25話 指揮官の判断

 漆黒の空。銀河の果てで、昔の事を想うフレイヤ。

「我らが母星を出てから、既に千年以上が経っているのか……」

 メインスクリーンを見ていた、フレイヤがつぶやいた。


「何を見ているのですか?」

 フレイヤの声に反応してモイラがフレイヤに近づいた。

「歴史だよ。我々、光の神のね」

 そう言ってから、フレイヤは気が付いた。

「モイラ、言葉が直ったようだね」

「はい」

 モイラが微笑む。


「よかったな」

 フレイヤはモイラを見ないで言った。

「私は司令官に、迷惑をかけていますか」

 モイラは小さな声でつぶやき、下を向いた。そうではないという意味だろう、フレイヤが首を軽く左右に振って言った。


「どうした? 何か問題でもあったのか?」

 少し恥ずかしそうな顔をしてモイラが話す。

「いえ、特に問題はありません。理由が無いと話しかけてはいけませんか?」

「そうか……」

 フレイヤは一言だけの短い返答をし、スクリーンを仰いだ。そしてそのまま何も語らず、ほんの数分だが、二人の間に無言の時間が流れた。


「私はさがります。フレイヤ。いえ、司令官。必ずこの戦いに、勝ってくださいね」


 モイラは黙っているフレイヤを見つめながらさがった。

 一人になったフレイヤは、自分専用のコンソールを呼び出した。


「アイリとモイラ、二名のパートナーを解除した場合の影響を推測せよ」

「お待ちください」

 最高秘密を扱う特別な”管理する者”が答えた。


「現在のパートナーを解除した場合、その次にポイントの高い管理する者が、それぞれ昇格してパートナーとなります」

「データの共有、実務の経験の伝達など、昇格準備に最短で六百七十八日が必要です。また、現在の二人の個体性能は、”管理する者”の平均スペックの五百十二倍以上です」

「パートナー変更後、システム稼働率は現在の九十二パーセントから、五十八パーセントまで落ち込むと考えられます」

「パートナーを変更しても、我が軍の勝利確率は九十八パーセントと高いままですが、八千万人のロスト追加が予想されます」


 “管理する者”の説明を聞いて、フレイヤは二つのことを考えていた。

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