第15話 夏の海は嫌い
「今度の休みに、海でも行こうぜ!」
別のクラスなのに、なぜかいつもこのD組の教室に居る八束から、突然の提案があった
(うーん、私は行きたくない)即座に思った私の横で大きな声。
「はい! 賛成」
時輪が手を上げた。
「オレと時輪で賛成が二だな。愛莉はどうする?」
八束の言葉に、少し考えるそぶりをした愛莉が意外な返事をした。
「仕方ないなあ、じゃあ行くか!」
(ええ?)めちゃ驚いた私。
「ちょっと、愛莉、団体行動は、苦手なんじゃなかったっけ?」
「うん? 団体行動なんてしないわよ。こいつらは、道先案内であり、下僕でしょう?」
「では、決まり。今週の日曜日、海へ行くぞ!」
八束の言葉に、私は弱々しく挙手をする。
「もしかして、私もメンバーに入っているのでしょうか? 私は、その日は予定がありまして……その」
三人そろって声もなく首を振る。
「予定は諦めろ!」
めんどくさい。海なんて行きたくないよ。
ぼやき続けても、約束の日曜日はやって来た。
神様、私はなんて不幸な女の子なのでしょうか。
何も悪いことはしていないのに、こんなにも暑い中、人がゴロゴロと陸揚げされたマグロのように転がる砂浜、魚のみならず、色んな小物が泳いでいる海。そんなところに行くなんて。
移動手段は、まだ誰も車の免許を持っていないので、電車、ますます行く気が失せる。
駅前に集まったメンバーを見ながらため息をつく私に、誰も気づかず楽しそうにしているが、またも私のやる気をそぐ事に。
でも、なんでこんなに海に行くことが嫌なのか、少し自分でも疑問を抱いた。
そして団体行動が苦手なのも不思議だ。
出発の時間が来て、満員電車に乗り込み、初めからギュウギュウに詰め込まれた私が、三時間も輸送され、目的地の海がある駅に着いた。
海の家、うう、なんか「ぬるっと」した感じで、着替える場所も食事もためらってしまう。
そんな私は、一番準備が遅くて、すでに砂浜に走り出したみんなに呼ばれた。
「おーい、悠里絵、早く来いよ」
ジリジリと私を焦がすかのように照りつける太陽のせいなのか、時輪の、陳腐なセリフのような発言が、私を余計に憂鬱な気分にさせる。
「ぐずぐずしていると夏が終わっちまうぜ!」
大体、なんで他人に、こんな裸に近い格好を見せなくちゃいけないのよ。
「はぁ。もう帰りたいなぁ。」
出来るだけ動かないよう、体力を消耗しないようにして、やっと昼になった。
ずっと「行きたくない」と考えていたら、昨晩はなかなか眠れなくて、今朝は寝坊した。朝食も抜きだったので、とてもお腹が空いている。
「はぁあ、団体行動で海水浴なんて……ホントありえないよぉ」
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