第51話 十二次元の戦い
歴戦の指揮官であるキノエは、シヴァが切り札となる何らかの超破壊兵器を所持すると考えた。そこで艦隊を三万単位に別れさせ、広く分散させる。それにより一撃による被害は抑えられ、一点集中攻撃でシヴァを狙う作戦に出た。
「全艦三万の小隊に再編成完了。一光年に分散中です」
オペレーターの報告を聞きキノエは告げた。
「各小隊攻撃開始。我が艦ライドウより艦載機発進」
超大型空母であるライドウの、全長三十キロを越える船体にある、三千もの戦闘機離陸ポートが開いた。
離陸ポートに誘導灯が点滅し、小さな銀河の様に見えた。
二十万の戦闘機バトルウォーカーが離陸を開始する。
「艦載機離陸完了。現在攻撃目標シヴァへ接近中です」
キノエは前方にある巨大なメインスクリーンを見て頷いた。
「全艦のコンピュータを本艦に接続。シンクロ開始」
キノエの命令で、個別に行動を行っていた小隊が、旗艦ライドウに完全コントロールされ、一つの艦の様に連動を始める。混戦になっても味方への被弾を最小限に抑えるための戦闘技術、シンクロ。
「シンクロ完了しました。艦載機、あと三十秒で攻撃目標に達します」
巨大な司令塔の一番高い位置に座るキノエが薄く笑みを浮かべ、最終指示を出した。
「では、光速のシヴァ、その力を見せてもらおう。これより、シンクロによる攻撃を開始する。火力最大。防御はいらん。全てのエネルギーを攻撃へ廻せ! これより攻撃を開始する!」
三百万の重戦艦から巨大な重粒子砲による攻撃が展開された。
三万の小隊の重粒子砲が、一つのエネルギーの束になって漆黒の宇宙を突き抜ける。広い円形の光が、レンズのように一点に集約される。その先には攻撃目標となったシヴァがいた。
艦載機がシヴァに近づき、確認した。重戦艦から発射されたエネルギーの塊が弾ける空間に、一匹の光の獣が発現しているのを。
超大型空母ライドウのメインスクリーンに、その美しい姿が中継で映し出される。純白に光り輝く、少女の様な姿、薄い光の衣をまとい、十二枚の翼を背中に携え、瞳を閉じている。
艦載機からライドウに、現状が報告された。
「推定サイズ二百メートル、パワー及び質量ゼロ。開戦からまったく動きはありません」
まさに、天使のような美しい姿は、どこかシヴァに似ていた。
その姿に、キノエも見惚れている。
「これは本当に美しい。出来れば私の捕獲品にしたかったな……シヴァ。ライドウの主砲を準備せよ! 一気に方を付けるぞ!」
ライドウの主砲、ブラックホールキャノンにエネルギーの集約が始まる。
「目標シヴァ。ブラックホールキャノン撃て!」
甲板にある一番巨大なゲートが開くと、直径二キロのブラックホールがシヴァ目掛けて打ちだされた。
数秒後、衝撃と巨大な引力による破壊が開始された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます