第20話 青い瞳の怪物
全てに恵まれた生活。貴族として産まれた私は、どんな事でも叶うと思っていた。
科学は進んでいない、この星はまだ、旧態的な支配制度であり、身分の違いが全てを決めていた。
ある日、従者を数人連れて街へ出かけた時に、みすぼらしい恰好の男女が数人立たされていたのを見かけた。
全員、腕は後ろで荒縄で結ばれ拘束されている。
「あれはなに?」
私の問いに従者たちは、見ないように私に話す。
「あれは……奴隷でございます。お嬢様のような高貴な方が、近づくものではありません」
でも、日常に退屈していた私は、奴隷の市場に近づいた。
並ぶ奴隷の中で、一人だけ引き付けられる者がいた。
浅黒い十分に強固に育った筋肉を身に着けた男。
私が、その男に魅かれたのは、私を見る目だった。
他の奴隷たちが、諦めたような、哀願する目つきなのに、その男は不敵に、少女の私にさえ、敵意をぶつけてきている。
私は大いに興味を持ち、男に聞いた、なぜ私を睨むのかと。
男は答えた「おまえが貴族だから、貴族がいるかぎりこの星はよくならない」
「なるほど」私は持てる者の慈悲で、男の言葉に頷くことが出来た。
従者の者は慌て、奴隷商人へ私がどれだけ高貴な生まれなのかを説明して、私を睨む男に罰を与える事を請求した。
男はムチに打たれながらも、私への敵意をその目に宿したままだった。
「この男を家に連れて帰るわ」
私の突然の言葉に、従者たちは慌てて止めるが、それこそ高貴な生まれの私のいう事を打ち消す事など出来ない。
街を出て、自分の住む城に戻った私は、この星の支配者の一人である父親を持っている。それは私が見える世界は全て、自分の思い通りになるという事。
退屈な日々を少しでも、面白いものにと、玩具をたくさん買ったが、それが、今日は反抗的な屈強な男だっただけ。
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深夜に目が覚めた。
窓から見えたのは赤い景色、私が住む城は燃えていた。
私は炎につつまれる、見慣れた景色を見ていた、それは非日常的で、とても綺麗だった。
「お嬢様! お逃げください!」
私の楽しい時間を打ち消した、扉を開けて入ってきたのは従者。
「今日、買った奴隷の男が、他の奴隷と結託して暴動を起こしました……お逃げく……」
従者を切り倒した男は、血に染まった鉈を持ち、私に近づいてきた。
私は、こんな状態でも特に何も感じなかった、そんな姿を見た奴隷だった男は満足そうに、鉈を捨て私の首に手を回して、締め上げ始めた。
「お嬢ちゃんはこの世界に絶望している……俺もそうだった、しかし、あんたが変えてくれた……破壊……素晴らしい……だから壊してやるよ」
楽しむようにゆっくりと締め上げる手の力と、熱さを感じて私は思った。
男の言う通りで、私は世界に絶望していると。だが違うことがあった。
「……確かに私は……絶望していた……破壊したいと……ただ……それは私がしたい事」
男が首をひねる。
「私じゃないと? こんな腐った世界は誰が壊しても構わないだろ……なんだ?」
私の首を絞めていた手が、うまく動かなくなったことを不思議に思った男は、自分の手を見て驚く。
「これは……凍っている。嬢ちゃん……やっぱり……あんたは人間じゃないんだな」
男はなぜか納得した表情で、そのまま全身が凍り付いた。
私は立ち上がり、鏡を見る、瞳が青く、髪の毛も青い、人とは呼べない、だが美しいものが写っていた。
すべてを思い出した。
実験生物として生まれた私は、期待以上のスペックを見せて、凍らせた、私を観察する科学者も、星の大部分も、私を恐れた人々は星を捨てた。
それから一万年が経ち、現在の文明が発達した。
私は一万年の退屈を消す為に、眠り、記憶を消し去って、別の人生を送る事にした。
だが、美しい破壊の炎に焼かれて、殺戮の目を持った男に殺されかけて思い出したのだ。
「破壊したい……再び壊す対象が出来た。私に立ち向かってくる生き物」
そして、この星は二度目の滅亡を迎えた。
少しだけ違ったのは、一人残った私をスカウトしにきた者がいた事。
十二翼の光の艦隊の「判断する者」の候補として。
私を連れ去ろうと、地上に降りてきた者を見て心から安心した。
「宇宙にはまだ壊せる者たちがたくさんいるのね……クク」
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