第7話 開戦
放課後、絵にそっくりな、私の憧れの人が現れないかと、私は図書館で待機することにした。
憧れの人が見ていたと思われる本、”Stars Logbook”を読みながら。
「緊急報告。異常事態発生」
一段高いところにある、玉座のような席で、フレイヤが瞳を閉じて報告を聞く。アラートが鳴り続く中、“管理する者”が状況確認を行っている。
「報告。敵、闇の神が戦闘体勢に入った模様。味方艦隊ガードラインまで、あと二光年」
フレイヤが、身体を起して意外そうにつぶやく。
「闇の神はどういうつもりだ。何か我々への対策でも出来たのか?」
コンピュータの戦力分析では、圧倒的に高い勝率が光の神の側に出ている。
「アイリ。現在の我が艦隊の防衛ラインは、どうなっている?」
フレイヤが”判断する者”の主席、副司令官のアイリに聞く。
「はい。現在、防衛ラインにはシールド艦二十五万六千が待機中です。詳細をお聞きになりますか?」
この時代、大きな艦隊を編成する上で、戦船はその用途に特化が進んでいた。
最前列には艦隊全てを覆う、シールドを展開する為の艦艇が待機していた。
フレイアの様子を見たアイリは手を挙げて、指示を出した。
「フレイヤのターミナルをオンラインモードへ移行する」
アイリの言葉でフレイヤの周りにターミナルビジョンが十二セット現れ、ターミナルから光のラインが延び始め、フレイヤの身体に接続される。
戦闘の間、”判断する者”であるフレイアは、十二本の光ケーブルで十二のターミナルにリンクして、届く要求を瞬時に判断していく、状況確認をマルチタスクで行う。
「報告。前線の我が艦が敵と接触しました」
闇の神の攻撃が開始された。コンソールに、その様子が映し出される。
漆黒の宇宙に浮かびあがる艦隊は数十万を超えていた。
敵の光弾が命中した衝撃で、光の神のシールド艦が揺れているのが見える。
「被害をターミナル3に映せ。マスティマの状態はターミナル4で随時報告せよ」
「了解しました。以後、報告をターミナルに切り替えます」
フレアの命令に“管理する者“が音声で応答する。
音声、つまり会話は、原始的なインターフェースだが、今でも非常に効率が高い。
「まわりを警戒しろ」「状況を教えろ」といった、曖昧で、複雑な命令が下せる。
「メインスクリーンを拡大。敵艦隊を全体アングルで表示しろ」
メインスクリーンに、黒き艦隊の攻撃を受けている光の艦隊の前線が映る。戦況を見ていたフレイヤは、タイミングを図って叫ぶ。
「全艦停止。密集隊形に移行後、攻撃を開始せよ! マスティマ、リフトアップ!」
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