51話 調査依頼【3】
もちろん、その性能は様々で、大きい物であればお城ほどの大きさの物まで収納出来る物もある。
また、無限に収納する物もあると言う伝説があるほどである。
ちなみに、この魔法の鞄もそうだが、
そして…ここ王都でも、魔法の鞄を扱う店は、それほど多くない。
と言うのも、魔法の鞄は失われた技術で作られた物であり、現在の技術では、それほど大きな容量を収納する事が出来ないからである。
そんな中、王都と言う事もあり、ダンジョンから入手する事が出来た大容量の魔法の鞄が、王都に持ち込まれオークションに掛けられたりする事がある。
とは言え、王都に持ち込まれた魔法の鞄が全てオークションに掛けられる訳ではない。
極一部の大容量の魔法の鞄以外の、少し多く入る程度の魔法の鞄であれば、今、僕達がいる魔法の鞄専門店『トラポタ』に運び込まれるのだ。
そして、相場よりも安く買い取られる事になるが、その場での買い取りの為、素早く現金化されるので、冒険者には有り難いお店となっている。
余談になるが、先程、相場より安くと言ったが、それでも数年は遊んで暮らせるほどの金額だったりするのだから冒険者にとっては、一攫千金の品物である。
「どうじゃ?気に入ったのがあったかえ?」
「う~ん…こっちの方が容量は大きいけど、色が…。
で、こっちのは色は気に入ったけど容量が…。」
と、言う具合に、二つにまでは絞られてはいる物の優柔不断な性格の為か、ずっと悩んでたいりする。
「ふむ…そんなに悩むのであれば、二つとも買えば良いのではないか?」
「いやいやいや、そんな余裕無いから!」
先日からの報酬で懐が温かいとは言え、魔法の鞄を何個も買うほどの余裕などは無い。
そもそもな話、僕にとっては魔法の鞄を一つ買うだけでも、かなり無理して買う必要があるのだ。
「ふむ…もしかして、この金額は高いのであるか?」
と、母さんが僕に聞いてくる。
そこで、ふと気になった事があった…それは…。
「ねぇ、母さん…お金って知ってるよね?」
「もちろんじゃな…と言うか、ちとバカにしすぎではないか?
妾が何年生きておると思うておるのじゃ?」
まぁ、流石に人族の使うお金と言うは知っている様だ。
問題は、その次である。
「じゃ~さ、お金の価値って知ってる?」
「どう言う事じゃ?」
「ほら、銅貨とか銀貨とか…色々あるじゃん?」
「あぁ、そう言う事じゃな。
確か…銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨。
それから…白金貨じゃな?」
ふむ…そこまでは知っているのか。
「じゃぁ、先日、僕達が冒険者ギルドに売った、魔物の素材が幾らになったか覚えてる?」
「ん?良く覚えておらぬが…それがどうしたのじゃ?」
やはりか!ドラゴンだからか、細かい事は気にしない性格が災いとなり、幾ら手に入れたのか覚えてないらしい。
いや、この場合は興味がないと言った方が良いのかも知れない。
そこで問題になるのが、幾ら持っていて、幾らまで使えるのか…である。
今回は魔法の鞄を買いに来ているのだが…だが、魔法の鞄だけ買って散財してしまい、中身を買うお金が無いと言う事になれば話にならないのだ。
そんな訳で、後で買う物の値段を考えて魔法の鞄を選ばないといけないのだ。
「どうしたじゃないよ…手に入れた報酬は金貨100枚なんだよ?
それなのに両方買うなんて出来る訳無いじゃん…。」
そう、大きめの魔法の鞄は金貨で85枚…そして、サイズは小さくなるが色が気に入った方が金貨で75枚である。
それだけの金額を悩まずに買えるのは、極一部の金持ちや貴族とかだと思う。
「金貨100枚…ならば、両方は買えぬか…して、どうするのじゃ?」
「だから、それで悩んでるんだってば…多く持てる方を選ぶか、気に入った色の方を選ぶか…。」
「じゃから、悩むぐらいなら両方を…。」
「だ・か・ら、お金が足りないの!」
何度言えば良いのだろう…どんなお金があるのかまでは知ってる様だが、そのお金がどれほどの価値があるのか分かっていない様だ。
余談ではあるが、平民であれば、大銀貨が2~3枚あれば一月は暮らせるだけの価値がある…とだけ言っておく。
そんな中、母さんは爆弾発言をする事となる。
「ならば、お金を作れば良いではないか。」
「それは…どう言う意味なのかな?」
お金を作る…果たして、母さんの言っている意味は、どう言う意味なのだろうか…。
まさか、お金を偽造するのか?それとも何かを売るのか?
しかし、売るとしても、もう魔物の素材など無く、今あるお金と装備だけが全財産だと言える。
一抹の不安を抱えながら、母さんの次の台詞を待つのだった…。
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