13話 さらに成長中【4】
アレックスさんの弟子となった僕は、直ぐに〖身体強化〗の魔術の練習をする事になった。
「そう、その調子だ!そのまま拳に魔力を留めるんだ!」
アレックスさん
故に、生活魔法とは別の意味で、身体強化は魔術ではなく魔法と呼ぶ事もあると教えてくれた。
道理で前世の時、他の人が身体強化の魔術を使っていても術式が分からなかった筈だ…。
とは言え、使用するのに術式が無いのであれば、僕でも使える可能性は十分にある。
そもそも、今まで僕は魔力の容量キャパシティを高める修行と、魔力操作の修行ばかりしてきたと言っても過言ではないのだ。
そう言う意味では、今の僕には有利な魔法となるだろう。
とは言え、今日が初めての身体強化の修行である。
コツも何も知らない僕に、そう簡単に使いこなせるはずもなく…慣れない感覚に、苦戦していた。
『パンッ!』
小さな乾いた音と共に、僕の拳に留まっていた魔力が霧散する。
「ルウド…ふと思ったんだが今の魔力が多過ぎるんじゃないか?
そうだな…もっと少ない量で試したらどうだ?」
アレックスさんが、魔力の制御に失敗した僕に提案してくる。
個人的には、いつも僕が扱う魔力の量だから問題ないとは思うんだが…今は、教えて貰う立場なので素直に従おうと思う。
「そうですか?では、どれくらいの力で試したら良いですか?」
正直な話、どれほどの魔力を操れば良いのか見当も付かないのだ。
「そうだな…今の半分ほどで良いんじゃないか?」
「分かりました、それでは今の半分で試してみます!」
僕はそう言うと、拳に先程の魔力のきっちり半分の魔力を留める。
すると、留めるのに必要な集中力が、かなり楽になった。
「「アレックス~!」」
その声を聞いた僕は、声がした方を向く…すると遠くから見た事もない二人の女性が、アレックスさんの名前を呼びながら手を振っていた。
「アリサ!マリア!こっちだ!」
どうやら、アレックスさんの知り合いの様だ。
もっとも、アレックスさんの名前を呼んでいるのだから当たり前と言えば当たり前か…。
少しすると、二人は僕達の側へとやって来た。
「ねぇ、アレックス、こんな所で何をしてるの?」
「何って…この子、魔術の才能があるみたいでさ。
この若さなのに既に生活魔法が使えるから身体強化の魔法を教えてるんだが?」
「はい?こんな小さい子に?」
「嘘だ~、成人してない子供が魔術を使えるなんて聞いた事無いわよ。」
赤色の毛の女性の疑問に、ピンクの髪の女性が嘘だと決めつけて答える。
「信じられないのは分かるが…彼は、小さいのに本当に魔術が使えるんだぞ?」
「そうなの?」
「あぁ、少なくとも私は彼が生活魔法を使うのを見たぞ。」
「そ、そうなんだ…。」
赤い髪の女性…マリアさんが、信じられないと言う様な顔で僕を見る。
一方、ピンク色の髪の女性…アリサさんはと言うと…。
「だったら、君、生活魔法を見せてよ!」
と、アレックスさんの言う事を信じなかった様で、僕に生活魔法を使う様に催促してくる。
が、それは仕方がない事だと思う…だって、僕以外で成人にもなって居ないのに魔法が使える子がいなかったからだ。
その為、アリサさんの態度は、納得のいく行動だった。
「分かりました、では…『
すると、僕の目の前に水の珠が作られ、水が地面へと流れ落ちた。
「ちょッ!?今、この子、詠唱をしなかったッ!?」
「えッ?生活魔法に詠唱なんてあるんですかッ!?」
アレックスさんに見せた時もそうだが、詠唱をしなかったと言われて、逆に僕の方が驚いた…。
なにせ生前、僕に生活魔法を教えてくれた人は詠唱など一切せずに生活魔法を使っていたのだ。
その事もあり、生活魔法には詠唱が必要だとは思っていなかったのだ。
「どうだ?この子の実力が分かったか?
だからこそ、私はこの子に、詠唱を必要としない身体強化の魔術を教えようと思ったんだ。
まぁ、この子の夢がS級の冒険者になるのが夢だって聞いて、手伝いたくなっただけとも言うけどな。」
「まぁ、確かに剣士系の冒険者になるには身体強化の魔術は必須項目と言っても過言じゃないから、分からない話じゃないんだけど…。」
「で、でもさ~だからと言って、こんな小さな子に教えて大丈夫なの?」
「あぁ、教えると言っても、私達がこの村を出るまでの間…せいぜい、数日の間だけだ。
少し囓った位しか教えれないとは思うが…基礎となる部分だけでも教える事が出来れば、後々、その努力は実を結ぶはず…。
そうすれば、彼の夢に一歩近付く事が出来るはずだと信じている。
私は、そんな彼のお手伝いをしたいだけだよ。」
とアレックスさんが笑って言う。
「そっか…アレックスは昔から面倒見が良かったものね。」
「ならさ~、私達も少し魔法を教えるのも面白いんじゃない?」
「へ~、それは面白そうな提案だね。
君、もし良かったら他の魔術も覚えてみる気はあるかい?」
後から来た二人の女性の提案により、僕の修行は突如として過酷な物となるのだが…。
とは言え、教えて貰えるのは非常に嬉しいのも確かなので…。
「宜しくお願いします!」
と、僕は元気よく返事をしたのだった。
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