12話 さらに成長中【3】
最近、どう言う訳か、つい両親へ反発してしまう。
まぁ、前世の記憶があるから、理由は判っている…。
そう…
とは言え、反発と言っても偉そうな口を利いてしまうとか、その程度で…暴力的になると言う訳ではないので可愛い物だと思う。
もっとも、まだまだ子供である僕が暴力を振るった所で、たかが知れていると言う物であるのだが…。
まぁ、そんな事は些細な事…と、自分に言い聞かせ、僕は最近の日課である剣の稽古を開始した。
と言っても、前世でも大した冒険者じゃなかった事からも分かる様に、僕には腕はなかった。
それ故、剣の稽古とは言っても素振りくらいしかやる事がなかった…そう、今日までは…。
「やぁ、こんにちは!君、こんな所で剣の稽古かい?」
と、今まで村で見た事のない男の人が僕へと声を掛けてきた。
「はい、そうですけど…貴方は誰ですか?」
村の住人は全員、顔見知りなので知らない人などいない筈なのだが…。
すると、その男の人は笑いながら自己紹介をしてくれた。
「これは失礼、私はアレックスA級冒険者で『銀の翼』のリーダーだ。」
それを聞いた僕は唖然とする。
何故なら、C級にすら成れなかった僕にとっては、A級と言うのは雲の上の存在だからだ。
その為、口から言葉が出てこない…ただ、口をパクパクするだけしか出来なかった。
「君、大丈夫かい?落ち着いて、深呼吸するんだ。」
その言葉を聞いて、僕はゆっくりと深呼吸をする。
「スー、ハー、スー、ハー…。」
深呼吸のお陰か少し落ち着く事が出来た。
「あ、あの…僕、大きくなったら冒険者になりたいです!
どうしたら、強くなれますか?」
僕は自己紹介も忘れ、目の前にいるA級の
「ははは、どうしたら強くなれるかと来たか!
そうだな…教えてあげても良いぞ?でも、条件がある…それは…。」
強くなるコツを教えて貰うのに条件と言われたのだ…どんな事を言われるのか、僕は知らない内に緊張していた。
「ゴクリッ…。」
緊張のあまり、喉が鳴った。
「君の名前を教えてくれないかな?」
この時になって、初めて僕は自分の名前を名乗っていなかった事に気が付いた。
「ご、ごめんなさい!僕の名前は『ルウド』です!」
「ルウド君だね?改めて言うけど、私はアレックスだ、よろしくね。」
「はい!よろしくお願いします!!」
流石に、何があるか分からないから本名は教えたらダメだと両親に言われているので教える訳にはいかないが、普段呼ばれている名前なら問題はない。
なので、僕はいつも呼ばれているルウドと名乗った。
「うん、それで強くなる方法だけど…それには、身体強化の魔術を覚える必要があると思う。」
「し、身体強化…ですか?」
「そう、身体強化だ。」
身体強化の魔術と言えば、前世ではその才能が無く、その為、一人前と言われているC級のどころかその一つ下のD級にすらなれなかった。
そもそも、肉体的に弱い人族が魔物と戦う為の必須スキルと言っても過言ではないスキルだからだ。
「ごめんなさい…僕、身体強化使えないです…。」
僕は転生しているのを忘れ、惨めな気分になりながら謝っていた。
「ルウド君…君はまだ若い、どう見ても成人してないよね?」
「は、はい…この前、10歳になったばかり…です。」
「だったら、身体強化が使えないのは仕方がないよ…それ以前に、生活魔法だって使えないじゃないかな?」
と、アレックスさんが言ってきた。
いや…そりゃ、身体強化は使えないけど生活魔法は使えるよ?
そのお陰で、魔力の容量だけは、かなりの量になっているはずだ。
まぁ、成人していないから、どこまで上がっているかは見当も付かないけど…。
とは言え、魔術が使えるか使えないか…で言えば、僕は使える。
なので、アレックスさんに使える事を言う。
「あ、あの…生活魔法なら使えます。」
「な、なんだってッ!?それは本当かい?」
「は、はい…『
僕は生活魔法である飲み水を作り出す魔法…正確には魔術だが…を使う。
「…ルウド君、君…今、詠唱しなかったよね?」
「詠唱…ですか?せ、生活魔法に詠唱なんてありましたっけ?」
生活魔法に詠唱なんて無かった筈なんだが…そもそも、詠唱があるのであれば、それを知らない僕には使えていないと思う。
「…もしかして、他の生活魔法も無詠唱で使えるのかい?」
ん?他の生活魔法…だったら、少し服が汚れてるかちょうど良いか…。
普段はお
「えっと…『
「ははは…まさか、この歳で魔術が使えるだけじゃなく、無詠唱とは恐れ入ったよ。
そうだ!この村に何時まで滞在するか分からないけど、私で良ければ、身体強化の魔術を教えようじゃないか!」
「え?い、良いんですか?」
「あぁ、正直、君が何処まで強くなるか見てみたくなった。
ただし、私は教えるのが苦手でね…結構、スパルタになるかも知れないが、それでも構わないかな?」
「は、はい!お願いします!!」
こうして、僕はA級冒険者であるアレックスさんに弟子入りしたのだった。
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