11話 さらに成長中【2】

「ようこそ、ルドラの村へ冒険者の方々…改めて言うのも何じゃが、村長のシルバーじゃ。

 こんな辺鄙な村じゃが、歓迎するぞい。」

「これはこれはご丁寧に…では、こちらも改めて自己紹介をさせて頂きます。

 私達はA級冒険者のパーティー『銀の翼』で私がリーダーのアレックスと申します。

 そして…こちらのポニーテールの女の子が…。」


 そこまで言うと髪の毛がピンク色をしたポニーテールの女の子が自分の名前を言った。


「僕はアリサで~す、ちなみに魔術使いの16歳で~す♪」


 と、軽いノリで自己紹介をする。


「こら、アリサ!いつも挨拶は真面目にしろと言ってるだろ!」

「ご、ごめんなさ~い!」


 アリサと呼ばれた女の子は、頭を抱えて謝った。

 おそらく、ちょくちょく拳骨を喰らっているのか…とっさに頭を庇う辺り、アレックスの苦労が見え隠れする。


「まったく、アリサと来たら…えっと、それでこっちの赤い髪の子が…。」

「私は、マリアです…一応、僧侶をさせて頂いております。

 中級の回復魔術までなら使う事が出来ますので、滞在のお礼に怪我をした人などの治療をさせて頂ければと思います。」


 だが、そんなマリアの提案に村長のシルバーは言った。


「それはありがたいお言葉…じゃが、残念と言うか幸いと言うか、今、この村には怪我人がおらんのじゃ。

 その気持ちだけ、ありがたく受けさせて貰いますのじゃ。」


 と、村長のシルバーはお断りの返事をする。

 まぁ、この村自体、基本的に平和そのものなのだから、それも仕方がない話なのかも知れない。 


「さて、夕餉ゆうげの時間まで、もう少し掛かるのじゃが…お主達、どうなされる?

 少し村でも見て回るかの?」


 と、村長が冒険者アレックス達に尋ねる。


「そうですね…折角なので、少し見て回ろうかと思います。

 アリサもマリアも、それで良いかな?」

「僕はそれで良いよ~。」

「えぇ、私もそれで構いません。」


 アレックスの問いに、二人の女の子は同意する。


「では、二人とも賛成の様なので、少し散歩させて頂きたいと思います。」

「そうかそうか…では、ワシは夕餉の支度を始めるとしようかの…まぁ、半刻もすれば出来ると思うが、のんびり散歩してくると良い…ただし、お主達が入ってきた門とは別の門へは近付いてはならんぞい?


 あそこは、この村にとっては特別な時以外は誰も入ってはならぬ聖域じゃからの?」


 と、村長は冒険者達に注意を促す。


「了解しました…では、そちらには近付かない様に致します。

 それじゃ、二人とも、散歩に行こうか?」

「うん♪」

「はい!」


 こうして、冒険者達は村長の家を出て村の散歩に出掛ける。

 その冒険者達の後ろ姿が見えなくなった時、村長は呟く様に言葉を発した。


「まさか、この村に人族が足を踏み入れるとは…何事も無ければいいのじゃが…。」


 と…それは、本来、この村には他所から来た者が入れない様にする為の認識阻害のが掛けられていたからだったのだ。


★☆★☆★


「お母さん、薪割り終わったよ~!」


 僕は今日の分の薪割りが終わった事を母親であるレイナへと告げる。


 もっとも、レイナは本当の母親ではなく義理の母である。

 ぶっちゃけ生みの親である母は、僕が生まれた時以来、一度も顔を見せていない。

 と言っても、別に捨てられた訳ではなく、預けられた…と言うのが正解である。


 まぁ、いくら自分で育てる事が出来ないからと言っても、もっと様子を見に来ても良いと思うんだけど…その辺、どうなんでしょうね?


「あら、ルウド、ご苦労様♪

 それじゃ、夕飯まで少し時間があるから、遊んできて良いわよ?

 あ、でも…あまり遠くに行っちゃダメよ?」

「はいはい…もう少しで夕飯なんだから、遠くに行くはずないじゃん。」

「こら!もう…すぐ、そんな口の利き方をする!

 そんな口の利き方ばかりしてたら御飯抜きにしますよ!」

「ごめんなさ~い!」


 育ち盛りの僕には、御飯抜きは拷問だ。

 その為、直ぐに謝り…逃げ出した。


「もう…ルウドったら…やっぱり反抗期なのかしら…。」


 僕の背中を見つめるレイナは、そう呟くのだった…。

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