10話 さらに成長中【1】

 スライムの中でも特殊な部類になる魔力喰いマナ・イーターと呼ばれているスライム…まぁ、変異種と呼ばれている特殊なスライムをペットにしてから、僕の修行は一変した。

 今までは、地味に僕が使える生活魔法を多重に発動させたりして、無理矢理魔力を枯渇させようとしていたのだ。


 だが、あれから使い魔となったスライムのお陰で魔力を枯渇させるのが楽になったのだ。

 何せ、魔力を喰わせるだけでガンガン減っていくのだから…。


 元々、生活魔法と呼ばれている魔法は、基本中の基本でほんの少しの魔力があれば発動する事が出来る。

 それこそ、術式さえしっかりしていれば赤ん坊でも発動が可能なのだ。


 その為、生活魔法と呼ばれる術式は基本的に消費される魔力の量は非常に少なかった…。

 それ故、僕の場合は、無理矢理魔力の消費を激しくする事で魔力の枯渇をしていたのだが、最近では枯渇させる事が難しくなっていたのだ。


 だが、そんな時に魔力喰いマナ・イーターが使い魔となった。

 まぁ、個人的にはペットとしての意味合いが強いのだが…それでも餌となるのが僕の魔力なのである。


 それ故、餌を与える=魔力を奪われる…と言う事になる。

 しかも、このスライム…雄や雌が居る訳ではない。

 まぁ、雌雄同体と言う訳でもないが、単体で増殖する魔物だったりする。


 その為、分裂を繰り返し8体まで増殖したのだ。

 で、何が言いたいかと言うと…朝昼晩、毎日3回、魔力を与える事により僕は毎日、魔力の枯渇させる事が出来る様になったのだ。


 まぁ、最初はスライムを飼うなんて危険だ…と、家族からは注意はされたが、使い魔としての契約をしている為、危険な事は何一つ無い。

 何故なら、分裂したスライムにもしっかりと契約紋は刻まれているのだから…。


 その為、僕の魔力は、僕が思っているよりも異常なほど高くなっていた事に、僕はまだ知らなかった…。


☆★☆★☆


 そして、月日が流れ…現在、僕は10歳になっていた。

 あと5年もすれば、僕は成人となる。

 そしたら、町へ出て冒険者になるんだ…と言うのが口癖の様になっていた。


 そんな中、ある日、何処から来たのか3人組の冒険者が僕の村を訪れていた。


「へ~、こんな所に村があるなんて始めて知ったよ。」

「えぇ、でも…何て言うか…何もない村ね。」

「アリサ…文句言わないの…って言うか、私の田舎よりはマシだと思うわよ?」

「あ~…確かに、あんたの田舎…ど田舎だもんね~。」

「ちょっとアリサ、私に喧嘩売ってるのかな?」

「あら、やっと気が付いた?

 あ!もしかして、気付くのが遅いのは脳への栄養、胸に取られちゃったからかしら?」

「あんたね~自分が貧乳だからって、人の胸をバカにするの、いい加減にしなさいよ!」


 いきなり喧嘩を始める二人の女の子、だが、もう一人の冒険者が仲裁に入る。


「はいはい、二人とも喧嘩はそれまで…こんな所まで来て喧嘩はしないの!

 それに…こんな所で喧嘩したら村の人に迷惑だろ?」

「だって~アリサが~!」

「だって~マリアが~!」


 他人の所為にする二人に、止めに入った冒険者が溜息を付く。


「まったく、二人とも…そんなに喧嘩ばかりしてると、夜のお楽しみは無しにするからね?」

「「喧嘩何かしてないよ(わよ)!」」

「はいはい、分かったから…もう喧嘩は無しだからね?」

「「ハ~イ!」」


 正直な話、今の今まで、この村に村人以外の人が来る事は殆どなかったりする。

 そもそも、この村の外は森に囲まれている為、馬車など一切使えない。


 と、言う事は…つまり、全て徒歩での移動と言う事になる。


 その為、森を抜けてこの村まで来ると言う事は、森の中の魔物や動物を倒しながらの移動と言う事になるのだ。


 そして、この村の周囲には、植物系の魔物だけではなく凶暴な動物も多く存在している。

 それ故、下手をすると、気が付いたら餌にされていた…なんて事もあるのだ。

 そう考えれば、こんな村に来訪者が来る事自体、どれだけ珍しいか分かると言う物だろう。


「おや、珍しい事もある物じゃ…お主達、こんな辺境の村へ何の用じゃね?」


 そんな来訪者に一人の老人が話し掛ける。


「いえ、特に用があって来た訳ではないんですが…実は道に迷いまして、気が付いたら、ここに辿り着いたと言うわけなのです。

 それで、日も大分落ちてきたので、今日はこの村で宿を取ろうかと思いまして…。」

「ほう~、そうでしたか…そうそう、申し遅れました…。

 ワシは、この村の村長をさせて貰っておるシルバーと言う者じゃ。

 じゃが…生憎、この村は辺鄙へんぴな所にある村でして…まず訪れる者などいない為、宿屋と言う物がなくての…さと、どうした物か…。」

「これはこれはご丁寧に…私はアレックスと申します。

 しかし、宿屋がないとなると野宿するしかないのか…。」


 と、アレックスと名乗った青年が顎に手を当てて考え込む。


「嘘ッ!?この村、宿屋ないの?」

「マジッ!?ってか、それじゃどうやって暮らしてるのよ?」

「こら、二人とも失礼だぞ!

 ご老人、二人を許してやって下さい…こんなでも二人には悪気はないんで…。」


 まぁ、悪気がない方が質が悪いって事はよくある話なのだが…。


「いやいや、そちらのお嬢さん達の疑問も、もっともな話じゃて。

 幸い、この村は自給自足出来る位には収穫があっての…そのお陰で、村から出る必要がないのじゃよ。

 まぁ、村から出るとすれば…薬草とかを採りに出るくらいかの?

 っと、宿をお探しでしたな…確かに、もう日が暮れようとしているのう…流石に、村の外で野宿させるのは忍びない…。

 そうじゃ!お主達さえ良ければ、ワシの家に止まっていくかの?」

「こちらとしては助かりますが…本当に宜しいので?」

「なに、一泊するくらいなら構わないぞい…ただし!外の話は聞かせて貰うぞい?

 何分、辺鄙な村故、それくらいしか娯楽が無くての…。」

「えぇ、その程度でしたら幾らでも喜んで。」

「では、案内するので付いてくるが良い。」


 村長シルバーはそう言うと、自分の家に案内をする。

 そして、その後を付いていく3人組の冒険者達…。


 果たして、アレックスの名乗った冒険者達はいったい何者なのだろうか…そして、辺鄙な村へ訪れた真の目的とは…。

 謎は謎のまま、日は暮れていくのであった…。

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