7話 調査【2】
結局、何も進展しないまま、次の日を迎えた。
とは言え、原因が分からない以上、こまめにチェックするしかないのだろう…。
「あれ?殆ど減っていない…?」
で、そんな訳で、朝から魔導石のを確認しに来たが…昨日も普段通り使っていたのだが、魔力は殆ど減っておらず使った分だけの消費に留まっていた。
つまり、魔力減少の理由は、故障でも漏れでもないと言う事なのだろう…。
それ故、なおさら原因が分からなくなってしまった…。
と言うのも、二日で殆ど無くなってしまうと言う事は、一日で半分近く減ると言う事だ。
にもかかわらず、補充してから約一日経っているにも関わらず、殆ど減っていないのだ。
「つまり、魔力減少の原因は何処かから漏れている訳ではないとすると、何が原因なんだ…?」
まぁ、ポルン父さんが魔眼で魔力の流れを見て、漏れたりしていないのを確認しているのだから、やはり漏れとかではないと言う事は間違いないだろう。
って、事で…父さん、見落としたんじゃないかって疑って、ごめんなさい。
本人には、絶対に言わないが、僕は心の中でだけ素直に謝る事にした
「故障でも、漏れでもない…何か…。
しかも、一日経っても減っていないと言う事は、短時間で急激に減ると言う事で…。
う~ん…ダメだ、分からん…。」
いくら前世の記憶があるとは言え、元々がEランクの冒険者…
その為、物語の様な知識チートが使える訳じゃない…せいぜいが、死ぬ前に知った魔力の容量の増やし方くらいだ。
そんな僕が、探偵の寝言をするには無理があったのだろうか?
だが、この魔力減少の原因…何か聞いた事があるような…。
喉の奥まで出かかっているのに…出てこない。
そんな違和感を感じながら、僕は頭を悩ませる事になる。
次の日も、その次の日も異常はなかった。
もちろん、僕の家以外も異常なし…。
だが、最初の事件が発生してから5日が過ぎようとした時、再び事件が発生したのだ。
「ルウド!魔導石の魔力が減ってるぞッ!!」
原因が判らない為、原因を調べるのを諦めた次の日の朝、僕の代わりに
昨日補充して満タンだった魔力が、殆ど空になっていたのだ。
つまり、魔導石から魔力を盗んだ犯人が居ると言う事…。
僕は慌てて、魔導石の所に向かう。
そして、周囲をくまなく調べる。
「どうだ、ルウド…何か分かったか?」
「いや、それが変なんだ…。」
「変って何が何だ?」
「えっと…そうだな、父さん…右に少し動いてくれる?」
「ん?右に?どう言うこぉッ?!」
『ズボッ!』
勢いよく、穴に落ちるポルン。
もっとも、穴はそれほど深くない…せいぜい30cm程の穴である。
「うん、罠トラップは正常に稼働するみたいだな…。」
「コラ、ルウド!こんな所に落とし穴なんてぇッ?!」
『ズボッ!』
再び、別の落とし穴に落ちるポルン…まったく、再びトラップに引っ掛かるとか…困った物だ。
「まったく、何やってんの父さん…せっかくのトラップ壊さないでよ…。」
「す、すまん…って言うか、父さんじゃなくパパと呼びなさいパパと!」
「パッパラパ~?」
「ルウドッ!!」
怒ったポルンが勢いよく、穴から飛び出し、僕の方へと向かってくる…その先には…。
「パパ、ストップ!!」
「へッ?」
だが、その忠告は、ほんの一瞬遅かった…。
『ズボッ!ズベッ!ズルズルズル…。』
ポルンが引っ掛かった罠は先程までの穴より浅い…その分、バランスを崩すのに最適だった。
故に…ポルンは前へと倒れ込む…そして、見事にダイブする。
結果、ヘッドスライディングをかましたポルンは、泥まみれになっていた。
「あ~ぁ、だからストップって言ったのに…。
パパ、泥汚れって、なかなか落ちないんだよ?
たぶん…ママに怒られるんじゃないかな?」
「ルウド…まだトラップはあるのか?」
「えっと…秘密?」
僕はそう言うと、ジリジリと後退と始める。
冒険者たる物、目の前に宝があっても、身の危険を感じたら退く事も勇気だ。
なので、僕は最終手段とも言うべき奥手を実行する。
「ママ~!パパがイジメる~!!」
「ちょッ?!ルウド、それはルール違反だろッ?!」
僕は、我が家で一番の最高権力者であるママへ救援を求める。
それに驚いたのはポルンだ。
何せ、ママはパパよりも僕や妹のレインにラブラブなのだ。
そんな僕達をパパがイジメたとなれば、ママの怒りは一気にMAXになるだろう…。
そうなれば、無視される事も考えられる…いや、最悪、ご飯抜きとなる事も…。
そして、慌てたポルンが取った行動は…僕を捕まえて、黙らせる事…。
だが、それは…。
『ズボッ!』
勢いよく、穴に落ちるポルン…しかも、今度の穴は一番深い穴で1m以上の穴だ。
しかも…ポルンにとって最悪な事に、僕のママを呼ぶ声を聞いて、ママが家から出てきたと言う事。
そう…ママの目の前で、深さが胸元ほどある落とし穴に落ちたのだ。
「ブフッ!あ、あなた、大丈夫?…クス…クスクス…もうダメ、笑いが止まらないわ」
…我が親ながら、自分の夫が落とし穴にハマったのを笑うってどうなんだ?
「ア、アハハ…ママ、ルウドの落とし穴に引っ掛かっちゃったよ。」
「もう、あなたったら…ちゃんと気を付けなきゃダメよ?
でも、ルウド…こんな所に落とし穴なんて、どうして作ったの?」
「あ~…それはね?魔導石から魔力が減るのって、誰かが盗んだんじゃないかって思ったんだ。
だから、落とし穴を作っておけば、犯人が引っ掛かるんじゃないかって思ったの。」
「あら、それじゃ~パパが犯人なのね?」
「ちょッ!ママ、それは誤解だから!?」
ポルンが慌てて否定する。
「冗談よ、パパ♪いくら何でも、パパがそんな事するはず無いじゃない。
でも、ルウド…落とし穴は、パパみたいに犯人以外も引っ掛かる可能性があるんだから禁止ね?」
「は~い!」
流石に、予想よりも酷い結果になったので、今回は素直にママに従う。
そんな訳で、後始末をしなければならなくなった訳なのだが…。
「パパ、落とし穴埋めるの手伝って?」
「え…それは、自分でしなきゃダメだろ…。」
「あら?ルウドがお願いしてるのに…パパってそんなに冷たい人だったの?」
ママの、この一言が決め手となる。
「いえ、喜んで手伝わさせて貰います、ハイ!」
ママの助け船により、パパのやる気もMAXだ。
こうして、落とし穴による犯人確保は失敗に終わったのだった…。
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