46話 期待の新人(ルーキー)【6】

 僕達に同行する事になったギルド職員さんは、ユーリと呼ばれていた眼鏡を掛けた人だった。

 しかも…よくよく考えてみると宝珠オーブを運んできてくれた女性だった事に気が付いた。


「あ、あの…同行していただけるのは有り難いのですが、失礼ですけどユーリさんは戦えるのですか?」

「えぇ、もちろん戦えますが、それが何か?」

「い、いえ、ちょっと気になっただけです…。」


 最初に会った時にも思ったが、この人、仕事は出来そうなんだけどキツイ性格なんだよな…。


「…何か、失礼な事を考えていませんか?」

「い、いえ…何も考えていませんが…。」

「それなら、良いのですが…。」


 う~ん…ダメだ、苦手意識が強くて、会話をするのがキツイ…。

 だが、こんな状態も母さんに掛かれば、何でもない事だった。


「ユーリとやら、お主…何故、それほど緊張して話すのじゃ?

 もしや、人見知りとか言うヤツなのかえ?」

「えッ!?ど、どうしてそれを…。」

「やはりそうであったか…妾の知り合いに似た物がおってのう…。

 故に、お主もそうなのではないかと…の。」

「ははは…実は、人見知りの所為で、よくキツイ人だと誤解されてしまうんです…。」

「そうであろうな…妾も、知らねばキツイと思っておった所じゃ。」


 ごめん、ユーリさん、僕もキツイ人だと思っていました…。


「で、でも、僕達はユーリさんが人見知りの性格だって分かったんだから、もうそんな風に思う事はないですよ!

 それに、ユーリさんは、こうやって付き合ってくれているのですから仲良くだってなれますよ!」


 キツイ人だと思っていた罪悪感からかフォローを最大限にしようと思う。


「そ、そうでしょうか…それに、私は仕事だからって仕方なく付いてきてるだけなのに…。」

「だ、大丈夫ですよ…だって、ユーリさん、人見知りと言ってますが、僕達と普通に話してるじゃないですか?」

「うむ、ルウドの言う通りじゃ!ユーリとやら、まだ妾達と話すのに緊張しておるのかえ?」

「そ、そう言えば…確かに、普通にお話し出来てますね…フフフ。」


 母さんに話し掛けられ、緊張が解けたからか自然に笑みを浮かべるユーリさん。

 その笑顔は、今までキツイと思っていた反動か、すごく可愛く見えたのは内緒だ。


「ふむ、お主、笑っておる方が可愛いではないか、まぁ、妾には負けるがの。」

「か、可愛いだなんて…でも、確かにアリス様はお綺麗ですよね…。」

「うむ、妾もルウドに言われるまで気が付かなかったのじゃが、人族の雄には綺麗に見えるらしいのう。」

「いえいえ、女の私から見ても羨ましいほどのプロポーションと顔立ちです。

 どうしたら、そんなに綺麗になれるんですか?」


 確かに、贔屓目ひいきめで見ても母さんは綺麗なタイプである。


「どうしたら…か、その事については、妾には答えてやる事が出来ぬのじゃ…。」

「な、何で…ですか?」

「それはじゃな?妾自身、何もしておらぬからなのじゃ…。」

「何もしていないのに…アリス様、狡いです!」


 ユーリさんはそう言って、母さんに羨望の眼差しを向ける。

 ただ、ユーリさんからは、もう先程までのキツイ感じは一切しない。

 むしろ、仲の良い友達の様な感じがしてくる。


 破壊神母さんの力で、ユーリさんの心の壁を破壊したのだろう…と、綺麗にまとめてみた…つもりだ。


「さて、おしゃべりは此処までの様じゃな…ユーリとやら着いたぞ!」

「こ、これは…。」


 ユーリさんが驚くのは無理もない。

 そこには幾つもの魔物の死骸が転がっていたのだ。

 しかも、幸いな事に、僕達が倒した時のままの姿で…だ。


「出発前にギルドマスターから聞いてはいましたが…こうやってみると、圧巻ですね…。」

「ですよね…僕も、これだけの魔物をどうしようかと思いましたから…。

 そう言う意味でも、魔法の鞄を借りる事が出来て良かったと思います。」

「さて、手分けして魔法の鞄に詰めるとするかのう…とは言え、作業は妾とルウドがする故、ユーリは周囲の警戒を任せても良いかのう?」

「は、はい!大丈夫です!」


 作業は順調に進み、それほど時間を掛けずに魔法の鞄の中に収納する事が出来た。

 もちろん、その間に魔物の襲撃もなかった。

 こうして、僕達は魔物の死骸を回収し、無事に町へ戻っていくのだった…

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