45話 期待の新人(ルーキー)【5】
本来、いるべき筈でない魔物がいた…しかも、アンデッドになって襲ってきた事に恐怖を感じる。
「ふむ…それでどうするのじゃ?」
「どうするって…そりゃ、もちろん冒険者ギルドに報告するに決まってるじゃん…。」
そもそも、こう言う異常事態は報告する義務が冒険者にはあるのだ。
「ならば、次の質問じゃ…この魔物達はどうするのじゃ?」
そう、それが一番の問題なのだ。
そもそもな話、薬草取りに来ているのだから、こんな魔物達を狩るつもりはなかったのだ。
それ故、討伐依頼じゃないのに魔物を狩りまくったのである(母さんが)…。
「それなんだけど、魔石だけ回収して死体はそのままにして、一旦、ギルドに戻ろうと思う。
幸い、依頼の完了を報告する分の薬草は集まってるから…ね。」
可能ならば、数セットまとめて届けたかったが、緊急性があるのは依頼よりも魔物の方が高いだろう。
それに、コレだけの大きな魔物を運ぶ事など、今の僕達には不可能なのだ。
まぁ、母さんが元の姿に戻れば可能だろうが、それはそれで問題があるので却下である。
「それに、冒険者ギルドに報告するついでに、魔物を運ぶ人手を募るのも良いし、魔法の鞄を借りれるなら借りるのも良いと思う。
とりあえず、母さんが元の姿で運ぶと問題になるから禁止だからね?」
「仕方がないのう…
じゃが、ワイルドボアだけは持って行くぞ?」
「あ~…うん、流石にワイルドボアを放置して、他の魔物に食い荒らされても困るもんね…。」
正直、ワイルドボアの肉を貪ろうとする魔物や動物は多いだろう。
人族にも魔物にも大人気?な食材だから…ね。
「そう言う事じゃな。」
こうして、僕達は薬草取りも、依頼達成が出来るだけの量を採取しただけで冒険者ギルドに戻って行くのだった…。
◇◆◇◆◇◆◇
「何と!それは本当なのかッ!?」
「はい…一応、証拠として魔石だけは回収してきました。
それで、お願いがあるんですが…魔物を運ぶ人手か、魔法の鞄をレンタルしたいのですが…ダメですか?」
ぶっちゃけ、Dランクの冒険者では魔法の鞄のレンタルは許可が下りない可能性が高い。
かと言って、人手の方も『はい、そうですか』とはいかないのは分かっている事だ。
だが、こうしてる間にも、魔物の死体を、魔物や動物が漁る可能性があるのだ。
もしかしたら、偶然、他の冒険者が見付ける事だってあるだろう。
そうなった場合、自分の物だと主張しても信じて貰える可能性は少ないだろう。
これが最初から討伐クエストならば、魔法の鞄をレンタル出来ていたかも知れないのだが…。
「人手は、はっきり言って直ぐには無理じゃな…じゃが、魔法の鞄に関してはワシの権限で何とかなる。
それでも冒険者になったばかりの者達に魔法の鞄をレンタルすると言うのは特例過ぎるのじゃ…。
よって、誰かを同行させる必要が出てくるのじゃが…それでも良いかのう?」
「えぇ、もちろんです!」
正直、魔物の死体に関しては、半ば諦めていただけに魔法の鞄がレンタル出来るだけでも
「そうか…では、早速、手配しよう!
急がねば、せっかくの素材が台無しになってしまうからのう!」
と、ギルドマスターことエルモアさんが言う。
やはり、ギルモアさんも名を上げた魔物の素材を失うのは勿体ないと思った様だ。
それから数分後、一人の女性が僕達に同行し、魔物の死体を放置した場所へと向かうのだった…。
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