44話 期待の新人(ルーキー)【4】

 アレが良いコレが良いと検討したのだが、結局、僕達が受けた依頼クエストは、薬草取りのクエストにした。

 まぁ、前世の知識と、村での経験を生かせるからと言うのが一番の理由である。


 そんな訳で、僕達は今、薬草取りに来ているのだが…。


「のう、ルウドや…薬草取りと言うのは、こんなにも邪魔が多い物なのかえ?」

「さ、さぁ…?でも、今までの経験では無い…かな。」

「ふむ…今は、お主の生きていた時代とは、違うからのう…そう言う事もあるやもしれぬのじゃが…。」


 そう…実は誕生日の夜、母さんからそっと打ち明けられた秘密の中の一つに、僕が母さんの封印を解いた時から200年の歳月過ぎている事を知らされた。

 それを聞いた時は、最初驚きはしたが納得する事もあった。


 僕が生きていた頃…と言うと、変な感じだが、あの頃、画期的な発明とされていた魔力を溜めておく事の出来る魔導石が、旅人も寄りつかない様な田舎の村にまで配置されていたからだ。


 当時、魔導石を買おうとすると金貨を何百枚か出さないと買う事は出来なかった。

 その結果、王族や貴族、他には大富豪と呼ばれる一部の商人しか持てなかった代物である。

 そんな物が、田舎の村にある事を不思議に思った事は何度もある。

 とは言え、使える物は何でも使うのが冒険者なので、すぐにどうでも良くなっていたのだが…。


 話が逸れているので、元に戻す事にする。


 とりあえず、200年の歳月の経過により、当時とは生態系も変わっているし生息地も、かなり違う事が予想されている。

 ただし、薬草とかの好む場所自体が変わる事は、そうそう無いのである。

 その結果、前世の頃の知識を使えば、すぐに発見する事が出来たのは僥倖ぎょうこうだと言える。


 問題は、その後の話…いざ、薬草を採取しようとした時、ワイルドボアと呼ばれる巨大なイノシシが襲ってきた。

 まぁ、それに関しては、母さんが軽く小突いたら、頭蓋骨を陥没させ即死したので問題は無い。

 ちなみに、血抜きとか内臓を取り出す処理はしているので、帰りに持って帰れば高く売れる事だろう…。


 その他にも、Cランク相当の魔物である八眼兎ヤツメウザギやら、Dランク相当の魔物である一角蛇ホーンスネーク…そして、Bランク相当の魔物である刀身狼ブレードウルフなんて物までも襲ってきたのである。


 ぶっちゃけ、Fランクの冒険者が受ける薬草取りに出てくる様な魔物ではない。

 と言うより、そんなのが出てきた時点で無傷で変える事は厳しいだろう。

 いや、それ以前に生きて帰れるかどうかの問題の方が大きいか…。


「って言っても、母さんに掛かれば、どれもコレも一撃なんだよね…。」

「ふむ…じゃが、お主ルウドは一撃と言うが、妾は軽く撫でただけじゃぞ?

 そもそも、妾が本気で一撃を放ったならば、こころ一帯、吹き飛びかねんからのう…。」

「…絶対に辞めてね?」


 何かのはずみで…何て事になったら洒落にならないので、僕としては割と本気でお願いした。


「わ、分かっておるわ…(そんな事をすれば、お主と一緒におられなくなるからの…)。」

「な、なら良いけど…。」


 何かボソボソ言ってて良く聞き取れなかったけど、まぁ、問題ないだろ…多分…。

 何て思っていたら、母さんの背後から近付く影が一つ…しかも、かなりの大きさだ。

 更に言うなら、母さんが気が付いていない様に見える…。


「母さん、危ない!」


 咄嗟に、魔力に闘気を織り交ぜた身体強化を使い、腰に差した剣を全力で振るい影を一閃する。


『ドシャッ!』


 と言う音と共に、体液を撒き散らす…僕は、その濁った青色の体液を見て、素直に汚いと思った。


「何じゃ、殺人蟷螂さつじんカマキリ…キラーマンティスではないか。

 こんな所にも生息しておるとは、驚きじゃな。」

「か、母さん…その事なんだけど、この蟷螂カマキリよ。」

「うむ、確かにお主の一撃で死んでおるのう。」


 どうやら、母さんは僕の言葉を聞き間違えた様だ。


「いや、そうじゃなくて…死んでるのに動いてたんだ…。

 つまり、アンデッドだったんだ…。」


 そもそも、生きてるキラーマンティスの体液の色は濃い緑色なのだ。

 それが、濁った青色の体液なのだから、冒険者としてだけでなく近くに住んでいた人族としては、調べようとするのは当然の結果だと言えよう。

 その結果…キラーマンティスは、既に死んでいた事が分かったのだった…。

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