43話 期待の新人(ルーキー)【3】

 母さんの所為で、色々と予想外な出来事が起きてしまったが、僕達は共にDランクの冒険者になる事が出来た。

 ただまぁ、個人的に母さんはBランクの冒険者でも良かったのでは?とは思ったのだが、当の本人?本竜?が、僕と同じDランクじゃないとダメと言うのだから、仕方がない。

 とは言え、いくらランクが高くなっても基本的な事が分からないと話にならない…と、言う事で、まずは小手調べと言う事で、Fランク認定されている依頼クエストを受ける事にした。


「ふむ…これは薬草取りの依頼じゃな?

 それに、こっちは毒消し草…何じゃ、こんな物、自分達で探せば幾らでも見付かるであろうに…何故、わざわざお金を出して取って来させるのじゃ?

 ほんに、人族と言うのは本当に可笑しな種族よのう…。」

「いや、確かに他の人に取って来て…と依頼してるけど、それは自分で集めると効率が悪いからだよ。

 人族って言うのは、必要以上に物を作り、他の人に売ったりしてお金を得る種族なんだ。

 で…だ、そんな感じで手に入れたお金を使って、代わりに自分が欲しい物を手に入れる事で生活してるんだよ。」

「お金か…確かに、妾もお金は大量に持っておるが…そこまで必要と思った事など無いぞ?」

「まぁ、僕達の住んでた村は自給自足だから、そこまで感じなかったかもしれないけど…。」


 村での生活みたいに、基本的にほぼ自給自足な生活…偶に物々交換をしてる所為か、魔導石へ魔力を充填する小遣い稼ぎの時しか、お金を見た事無かったんだよね…。


「そうなのか?じゃが…それじゃと、自然環境を破壊する事にならぬか?

 まぁ、破壊神である妾が言うのも何じゃが…。」

「そ、そうだね…。」


 破壊神である母さんが、自然環境を気にすると言うのは可笑しい気もするが…。

 だけど、破壊神だからって、何でも感でも破壊だけすれば良いと言う訳ではない。

 ならば、破壊しない事を考えたとしても問題はないだろう。


「でもさ…こうやって手に入れた薬草とかを使ってポーションを作る人がいる。

 その人が作ったポーションで、僕達や家畜、その他の人達を癒す事が出来る…と考えたら、それはそれで凄くない?」


 例えば、母さんが怪我をした時、ポーションがあれば、直ぐに治してあげれるかもしれない。

 そう考えると、人族の生活も、悪い物ではない…と、少しは言えるかも知れないと思った。


「まぁ、確かに…じゃな。

 じゃが…あまり酷い様であれば、妾も動かなくてはならなくなるぞ?」

「え?どう言う事?」

「それは…じゃな…。」


 母さん曰く、母さんはこの世界を守る神様と呼ばれている者達の一人…一柱だと言う。

 ただ、他の者達は、命を育む事を良しとする者達だと言う事。

 しかし、母さんの役割は、名前の通り…全てを破壊する神…だと言う。

 もっとも、全てを破壊する…なんて言えば、普通は悪だと思うだろう。


 だが、本来の役目は、他の命を自らの欲で奪おうとする者へ罰を与えるのが仕事…なんだそうだ。

 つまり、弱き者を助け、強き者を挫く…そんな存在が、母さんなのだそうだ…。


「そうなんだ…でも今は、この薬草取りの依頼が優先…かな?」


 と、母さんに破壊より依頼を優先する事を勧める。


「ふむ…しかし、妙じゃな?」

「妙って?」

「何故、10束で銅貨5枚なのじゃ?わざわざ薬草を探しに行くまでは良いとして、10束採取し持ってくる…と言う事なのじゃろ?

 どう考えても、手間を考えれば銅貨5枚で引き受ける様な仕事では無いではないか!

 これでは無駄に時間を過ごすだけではないのか?」

「あぁ、そう言う事か…母さん、ココ読んで無いでしょ?」

「ん?何処じゃ?」

「ココだよ、ココ!」


 僕はそう言って依頼書のを指さす。

 そこには、こう書いてあった。


 10束を一組とし銅貨5枚を支払う…問題は、その後の文章である。

 『なお、上限は30組とする』…つまり、この依頼書には300束まで欲しいと書いているのである。

 もちろん、上限なので300束集まるかどうかは話が別なのだが…。


「つまり、多ければ多いほど欲しいけど、予算の都合により、300束までなら買い取りますよ…って事だね。

 それに、この薬草は群生する植物だから間引く様に採取すれば、暫く経てばまた採取出来る様になる。

 前世では、人によっては、他の場所にも移植して、群生地を増やそうとしている人もいたよ。」

「なるほどのう…確かに、取り尽くしてしまっては無くなるだけじゃが、数を増やす事を考える者もいると言う事か…。

 まぁ、お主ルウドの性格からして、前世では、間引いたり移植したりしてそうじゃがの。」


 母さんは御見通しだぞ…と、言わんばかりに笑顔を見せてくる。


「ま、まぁ…ね、実力不足でEランク冒険者だったから、薬草とかが採取出来なくなるのは死活問題だったから…。」

「なるほどのう…じゃが、それは可能性の話であろう?

 妾達は既にDランクなのじゃから、魔物をバンバン狩れば良いのではないか?」

「あ~、その事なんだけど…ダンジョンの中の魔物と違い、ダンジョン以外の魔物は死んだらそれまでで、時間が経っても復活しないってのは知ってるよね?

 僕達と同じで、普通に生活して子を成していくから全滅させるとそれっきりになるからね?

 まぁ、ギルドはゴブリンやオーク等は、人族に直接的な被害をもたらすから、見掛けたら討伐…全滅させる事を推奨してるけど…ね。」


 もっとも、ハニーベアやレッドベア、シールドタートル等の魔物は武防具等の道具アイテムを作るのに、素材としても使う事が出来るので、ギルドとしても狩り尽くす事はしない。


「ん?それでは先程と言ってる事が違うのではないか?」


 う~ん…コレ、母さんに言って良いんだろうか?

 と、頭を悩ます質問だったが、万が一にでも母さんに何かある方が問題だから、仕方なしに教える事にする。


「母さん、あのね…。」


 と、伝えるのを戸惑いながら説明をしていく。

 そして、全部伝え終わった後の反応が…。


「何じゃと!ゴブリンやオーク共は、その様な事をしておったじゃとッ!?

 奴等も生きておるのじゃからと、追い返すだけにして負ったと言うのに…今度見掛けたら、消し炭にしてくれようぞ!」


 と、怒りを顕わにするのだった…。

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