9話 犯人確保
チューチューと言う擬音さえ聞こえてきそうな程の勢いで、僕の中から何かが奪われていくのが分かる。
そう、今、僕の右手には紫色したスライムがまとわり憑いているのである。
改めて明るい場所で僕から魔力を奪っているスライムを確認する。
こいつは確か…
そう…基本的にスライムと言うのは、体内に獲物となる物を取り込み、消化する事により栄養やらを取り込む魔物である。
だが、この魔力喰いと呼ばれるスライムは、体内に獲物を取り込むのではなく、蚊やヒルみたいに対象となるものから直接、魔力を吸収するタイプのスライムなのだ。
その為、普通のスライムが通常種と呼ばれるのに対し、
ちなみに、余談ではあるが異常種…と呼ばれる物も存在している。
で、話を戻す訳だが…このスライム、何と僕から魔力を欲しいまま吸い取ると、お腹が膨れたのか僕の右手から離れたのだ。
その為、倒そうと剣を握った…しかし…。
「キュルピ~♪」
何と、スライムは僕の脛スネの所に、その身体をスリスリと身体を擦り付けてくるではないか…。
しかも、鳴き声?を聞く限り敵意はない…もしや、懐かれたのかッ?!
「いやいやいや、何で魔物使いでもないのに僕に懐いてんだ?」
だが、どう見ても懐いてるようにしか見えない。
そこで、僕は一つ実験をする事にした…それは…。
「待てッ!」
すると、スライムはピタリと動きを止める。
いや、犬じゃないんだから…とは思う物の、どうやら僕の言う事は聞くらしい。
もっとも、偶然の可能性もあるし、そもそも言葉が通じているのか疑問ではある。
「なら…三回まわってワン!」
これならば、言葉を理解していなければ、行動することは出来ない。
すると、その場でスライムは回り出す…そして…。
「キュイ!」
…マジッ?!マジなのかッ?!
自分で言って置いて何だが…何故に僕の言う事を聞く?
とは言え、これだけ言う事を聞くなら、もうペットとして飼えるのでは無いだろうか?
それも、餌代は魔力で良い…そして、僕には有り余る魔力がある…今も、魔力を枯渇させる為に色々と試行錯誤している訳なのだが…。
つまり、何が言いたいかと言うと…このスライムを使えば、魔力を強制的に減らす事が出来るのでは?と言う事である。
もし、そうなるのであれば、これは下手に魔法を使うよりも良い修行が出来ると言う事に他ならない。
もっとも、このスライムが完璧に僕の言う事を聞くのか…と言う事が一番の問題だったりする。
と、言うのも、
ただし…その代償として、
つまり、魔力を枯渇するまで吸われた場合、そこで止めてくれるなら問題はない。
が、そのまま吸われた場合、命に関わる事になるのだ。
それ故、本当に言う事を完璧に聞くのか…が、問題になるのである。
しかし…このスライム、僕の家しか魔導石から魔力を奪わなかった所を見ると、ずっと、潜んでいたと言う事だろか?
そして…その事と、先程の僕に懐いた事から推測するに…僕の魔力は、このスライムにとって、お気に入りの
なら、ちゃんと言う事を聞くのであれば、僕の野望の為に、ペットとして飼う利点があると言う事でもある。
「ねぇ、君…僕の魔力は気に入ったかい?」
これは、一種の賭だ…本当に僕の言う事を理解しているのかの実験だ。
「キュイ♪」
鳴き声から判断するに…『うん♪』と言った所か?
そこで、僕は次の実験をしてみる事にする。
「えっと…向こうに見える木があるでしょ?
それにタッチして戻ってきてくれる?」
「キュイ!」
僕の呼び掛けに即答するスライム…しかも、想像してた以上に、素早い速度で移動して、木をタッチして戻ってきた…そして…。
「キュ~~~イ!」
大きく鳴いたと思うと、僕へ飛びついてきた。
幸い、それほど衝撃はなかったが、まるで『ゴール!』と言った様な仕草に、思わず笑みが溢れた。
「ねぇ…本当に君が僕の言葉を理解しているのなら、僕の使い魔にならない?
契約内容は…僕の命を脅かさない程度に、魔力を吸う事が出来る…でどう?
僕から君に出す命令は…魔力を吸うのを止めてと言ったら、ちゃんと止める事…かな?
まぁ、他にも何か頼むかも知れないけど…無茶な事は言わないと約束する。
それで良いなら、使い魔として契約してくれないかな?」
「キュイキュ♪」
やはり、このスライムは僕の言う言葉を、きちんと理解しているのだろう。
その後、『キュイキュイ♪』と鳴いたかと思うと、契約紋がスライムに浮かび上がる。
はい、注目~!通常であれば術師が対象に契約の内容を書き記した術式を展開し、そこに両者の合意を持って、契約を完了するのが一般的である。
にも関わらず、魔物であるスライムが、契約の術式を発動させた事自体、通常ではまずありえない事なのだ。
とは言え、術式に書かれている内容は、僕が言った契約の内容と同じ様に見える…本気で、使い魔に成ると言う内容だった。
「…何でスライムが使い魔の術式を展開出来るのかは分からないけど…契約内容はさっき言った通りだし…問題はないか…。
うん、僕から言い出したんだ…僕が尻込みするのは間違ってるね。
分かった、君と契約しよう…。」
僕は、スライムの作った術式に手を当てると術式に魔力を流し込む。
次の瞬間、術式は激しい光を放つと、霧の様に霧散した。
これで契約は完了だ…その証拠に、この紫色したスライムの一ヶ所に、使い魔としての証である契約紋が刻まれている。
こうして、僕は使い魔…兼、ペットを手に入れたのだった…。
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