37話 冒険者への道【7】
冒険者登録…それ自体は、母さんのお陰…と言うか、母さんの所為で、問題なく手続きをしてくれる様になった。
だが、僕の適正が
それとは別に、どこまで戦えるのか…と、冒険者のランクを決める為の実技試験を受ける事となった。
そして…僕の試験をしてくれる様になったのが、偶然にもこの町に来ていたSランク冒険者に決まる。
Sランク冒険者…この世界で最高の冒険者の称号であり、僕の夢でもあった。
◇◆◇◆◇
「あ~、アレックス君、ちょっと良いかね?」
「あ、ギルドマスター、どうしましたか?」
「いや、君に新規の冒険者の試験官を頼みたいと思ったんだが…良いかな?
もちろん、報酬は用意させて貰うぞ!」
そう言ったエルモアは、どうしてもアレックスに試験官を受けて貰おうと必死になっていた。
「えぇ、構いませんが…わざわざ私がする様な相手なのですか?」
「う、うむ…ちょっと訳ありでな…。」
「そうですか…そう言う事ならお引き受けします。」
「おぉ、そうか!それは助かる!
それでは、アレックス君、すまぬが訓練場で待っていて貰えるかな?」
「えぇ、では何も言わずに居なくなると仲間が心配するので他の二人にも試験官になった事を伝えておきますね。」
「うむ、では頼んだぞ?」
「はい、お任せ下さい。」
エルモアはアレックスに試験官を受けて貰える様になった事に安堵し、その場を去っていった。
◇◆◇◆◇
ギルドマスターのエルモアさんに連れられて、僕達がやってきたのは冒険者ギルドの訓練場という場所だった。
なんでも、僕の試験を受け持ってくれる人が、そこで待機しているそうだ。
まぁ、Sランク冒険者に試験官をして貰えると言うのは、凄く名誉な事だけど…それが自分の功績ではなく、殆ど母さんの所為だと思うと、相手の人に申し訳ない気がしていたのだが…。
「紹介しよう、こちらが君の試験を担当してくれる事になったSランク冒険者のアレックス君だ。
アレックス君、こっちの新人がルウド君だ。
まぁ、君ならば万が一にも怪我をさせる事もないと思うが、あくまでも新人だからな…注意してくれたまえ?」
「やぁ、ルウド君、久しぶりだね!その様子だと、かなり鍛えてきたみたいだね。」
「はい!お久しぶりです、師匠!」
エルモアさんが言っていたSランク冒険者…それは、昔、僕に身体強化と剣術の基礎を教えてくれた…当時、Aランク冒険者だったアレックスさんだったのだ。
道理で、名前が同じ筈だ…。
「ん?何だ、二人は知り合いだったのかね?」
「えぇ、昔、少しだけですが基礎を教えた事がありまして…実は、僕達がこの町に来たのも、このルウド君が冒険者になる為に、この町に来ると思っていたからなんですよ。
まぁ、まさかルウド君の試験官になるとは思っていませんでしたけどね。」
「え?師匠が此処にいたのって、偶然じゃなかったんですか?」
「あぁ、そうだよ、Sランク冒険者になるのが夢だって言ってた君の事だから、気持ちが変わっていなかったら必ず冒険者になると思ってね。
ほら、冒険者になるのって緊張するだろ?だから、少しでも弟子を励ましてあげようと思ってね?
まぁ、予想としては誕生日に来ると思ってたんだけど…次の日になったみたいだね。」
まさか、僕の為に誕生日から待っていてくれるとは思わなかった。
「えぇ…本当は誕生日に来ようと思っていたんですけど…ちょっと色々ありまして…。
って、本当に僕の為にわざわざ来てくれたんですか?」
「ん~…君の為と言うより、成長した君を見てみたい…ってのが本音かな?
ちなみに、さっきも言ったけど、君の試験の担当になったのは全くの偶然だけどね。」
何て事はない、アレックスさんとの再会は、偶然の再会と思いきや必然の再会だったのだ。
「あれ?でも、そうすると…アリサさんとマリアさんも来てるんですか?」
確か、アレックスさんは三人組のパーティーだったはず。
そのリーダーであるアレックスさんが此処にいるとなると、他の二人も居ても可笑しくない。
「あぁ、もちろん来てるぞ?と言うか…ほら、あそこ、2階からこっちを見てるよ。」
「あ、ホントだ…手を振ってる…。」
流石に、Sランク冒険者が試験官を務めるとあって、訓練場の観客席は先輩冒険者達で溢れかえっている。
その為、各々が喋るので、こちらには向こうの声は良く聞こえないが、アレックスさんの指さした方を見ると、観客席でこちらに手を振ってる人が見えた。
その姿は装備こそ変わっているが、村であった時のままの姿だった。
「アリサさ~ん!マリアさ~ん!」
嬉しくなって、僕は二人に手を振る。
まぁ、こちらの声も掻き消されて聞こえていない様だが…。
すると、二人も僕に気が付いた様で、さらに手を振って応えてくれた。
「コホン!あ~…そろそろ試験を始めたいと思うのだが、良いかな?」
試験官がアレックスさん師匠だった事もあり、試験に臨む緊張感が無くなってしまった為、世間話を始めようとする雰囲気を、エルモアさんがいち早く察知し、試験を始めて良いか聞いてくる。
これはいかん…と、僕は慌てて返事をしたのだが…。
「す、すいません…よろしくお願いしましゅ!」
エルモアさんに言われ、気が付けば無くなっていた緊張感が再び戻っていた。
だが、今回は、その緊張のが悪い方に作用したようで…台詞を噛んでしまい恥ずかしい思いをしてしまった。
「ハハハ、ルウド君、そんなに緊張しなくても大丈夫だぞ?
だが、アレックス君はSランク冒険者だからな…緊張するなと言う方が無理な話か?
まぁ、まったく緊張しないよりは良いとは思うがな。」
エルモアさんは笑っていたが、試験とは言え相手はアレックスさんだ。
そう思うと、知らない内に身体に力が入るは仕方の無い事だった…。
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