47話 期待の新人(ルーキー)【7】

「ギルドマスター、ただいま、戻りました。」

「おぉ、それでどうだった?」

「はい、予想通り…と言うか、予想以上の成果でした。

 とは言え、流石に此処で出す訳にはいかないので、裏の解体場へ移動したいのですが、よろしいでしょうか?」

「うむ…確かに、じゃな…では、移動するとしよう。」


 冒険者ギルドへ戻ってきた僕達は、ユーリさんとギルドマスターであるエルモアさんとの会話を聞いた後、裏手にある解体場へと足を運んだ。


「では、さっそく見せて貰っても良いかな?」


 とは、エルモアさんの言葉だ。


「はい…ですが、聞いていたとは言え、予想外な事ばかりでしたので、ギルマスも驚かないで下さいね?」

「あぁ…分かった、覚悟しておこう…。」


 こうして、魔法の鞄から数々の魔物の死骸が出されていくのだが…。

 最初は驚きの顔をしていたエルモアさん…その顔が次第に無表情へと変わっていく…。


 そして…。


「これで最後になります…。」


 そう言って出されたのは、殺人蟷螂キラーマンティスだった。


「こ、これが例の…じゃな?

 確かに、これは通常のキラーマンティスでは無い様じゃな…。」


 と、エルモアさんがアンデッドとして動いていた蟷螂をマジマジとみて呟いたのだった…。


☆★☆★☆


「では、こちらが報酬となります。」


 と、ユーリさんから渡された袋には金貨がぎっしり詰まっていた。


「あ、あの…このお金はいったい…。」

「はい、魔物の素材を全部冒険者ギルドで買い取らせて貰った結果、全部で金貨94枚で買い取らせていただく事になりました。

 もっとも、それ以外の報酬も含まれていますので袋の中には金貨100枚が入っています。

 間違いがないか、確認していただけますか?」

「あ、はい、分かりました…。」


 僕はそう言うと、金貨を数え始める…。

 その結果、間違いなく100枚の金貨が入っていた。


「はい、確かに金貨100枚入っていました…でも、何でこんなに多いんですか?」


 そう…今回の報酬の金額が、僕の思っていた金額を大幅に上回っていたのだ。


「そうですか?こちらとしては、これでも安く買い取る結果となり、申し訳ないと思っていたのですが…。」

「え?そうなんですか?」

「はい…キラーマンティス以外の魔物は全て一撃の元、頭蓋骨を砕かれ死んでいますで損傷が少なかったので、素材が良い状態で手に入ったのですが、頭蓋骨を砕かれた事により、頭部の素材がダメになっていたので、その分が安くなっています。

 それに、キラーマンティスに関しては、もっと酷く…。」


 そこまで言われて、何となく察する事が出来た。


「やはり、アンデッドだったから…ですか?」

「はい…やはり、アンデッド化の影響か、素材として回収出来る部分が少なかったのと…倒す際に真っ二つにされているので、更に使える素材が減っていたのが原因ですね…。」


 確かに、キラーマンティスを倒す際、母さんを守る為とは言え、考え無しに真っ二つに斬ってしまったからな…と、反省する。


「ですが、その代わりと言っては何ですが、これはこれで貴重な資料には変わりませんけど…ね。」

「え?それは、どう言う事ですか?」

「確かに、アンデッド化の影響で素材の価値は無くなっていますが…それでも、こんな地方の冒険者ギルドにキラーマンティスが持ち込まれるなんて事は皆無ですから、素材としては残念な結果となってますが、色々な資料が手に入る事には変わりませんから…。

 そんな訳で、少しばかりではありますが、報酬を上乗せさせていただいております。」


 なるほど…結局の所、地方の為、素材自体を安く買いたたいてしまう結果になったので、報酬の上乗せと言う事にして、多めに支払ってくれたと…ただし、それでも報酬が少ないって事で謝っていると言う事か…。


「あ、でも、もう一つルウド様や、アリス様には報酬がありますよ?」

「え?まだ何かあるんですか?」


 個人的には、金貨100枚だけでも十分な物だと思うのだが…。


「はい、ですので、コレから二人にはギルドマスターの部屋へ行って欲しいのですが…。」

「そうですか…では、そちらに向かいますね…。」


 何故か、申し訳なさそうに言うユーリさんの言葉に従い、エルモアさんの部屋へと向かう僕と母さん…。

 果たして、そこには何が待ち受けているのか…。


 胸をドキドキさせながら、ギルドマスター、エルモアさんの執務室のドアをノックするのだった…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る