48話 期待の新人(ルーキー)【8】
ギルドマスターであるエルモアさんに呼ばれ、彼の執務室へと僕達は訪れていた。
と言っても、僕と母さん…それと、案内役のユーリさんの三人なのだが…。
『コンコン!』
「ギルドマスター、ルウドさん達をお連れしました。」
と、ノックをしてユーリさんが中にいるであろうエルモアさんに声を掛ける。
すると、直ぐに部屋の中から声が聞こえた。
「うむ、中に入って貰ってくれ。」
どうやら、エルモアさんから入室の許可が出た様だ。
まぁ、自分で呼んでおいて入ってくるなと言われたら、オイオイってなるし母さんの機嫌が心配になる所だった。
何はともあれ、許可が出た事により僕と母さんは部屋の中に入る。
ちなみに、ユーリさんは『では、私はコレで…。』と自分の仕事に戻っていった。
「失礼します。」
そう言って僕達は部屋に入る…ちなみに、母さんは、興味ないのか面倒なのか、何も言わない。
「いや、わざわざ呼びつけて済まない…ちょっと、仕事が立て込んでいてな…。」
「そうなんですね…ご苦労様です。
それで、今回、呼び出されたのは一体…。」
どんな理由で忙しいのか分からないが、一介の冒険者に事情を言う必要などある訳もなく、話は先へと進んだ…。
「そう警戒せんでも悪い事じゃない…むしろ、君達には良い事なのだから心配せんでよいぞ?」
と、言って笑顔を見せてくれる。
「えっと…それでは、どう言ったご用件でしょうか?」
良い事だと言うのだから警戒する必要はないだろうが、今度は、その『良い事』が気になってしょうがない。
「ふむ…その事なのじゃが…。」
『ゴクリッ…。』
何故、そこで一旦区切る様に溜めを作るギルモアさん…緊張のあまり、喉が鳴った。
「おめでとう!君達のランク昇進が決定した。
本日をもってランクDからランクCへと昇進だ。」
と、エルモアさんが僕達の昇進を伝えてきた。
「えッ!?もうCランクへ昇進なんですか?
それに、僕、まだ昇進試験を受けてないですよ?」
寝耳に水…とまでは言わないが、エルモアさんの言葉には驚きしかない。
そもそも、Dランクからのスタートでも異例の事態なのだ。
「ふむ…その事なのだが…先日、Sランク冒険者であるアレックス君が、君はCランクからでも問題なくこなせると言っていたのを覚えているかね?」
「は、はい…でも、それはアレックスさんが僕の師匠だから…では?」
正直、アレックスさんの稽古は厳しいが、それ以外では優しい人なのだ。
そう言う意味では、
まぁ、試験の時は、途中から本気になってきて大変だったが…。
「うむ…ワシも最初はそう思っていたのだが…今回の魔物の討伐を見てその意見を変えたのじゃよ。
そもそも、Aランク相当の魔物を単独で狩れる者が、Dランクと言うのはギルドとしては問題なのじゃ。
本来であれば、ワシの権限でBランクまで一気に上げたい所なのじゃが…コレばかりは規則でな…最初ならまだしも、段階的に上げなければいけない決まりの為、今回はCランクで我慢して貰う事になったのじゃ…。
その代わり、試験は免除と言う処置を執らせて貰ったがの?」
そう、この試験の免除…と言うのが、ギルドマスターの権限の一つなのである。
もっとも、その権限もBランクに昇進するまで…ではあるが…。
何故ならAランク以上の昇進には、他のギルドの許可がいるからである。
Aランクなら三つのギルドの許可が…もっとも、自分の所属しているギルドからは許可が出てるから残りの二つを手に入れる必要がある。
更に言うなら、Sランクは五つのギルドからの許可が必要…ただし、こちらは王都のギルド本部の許可も必要で、ギルド本部+他のギルド四つ…まぁ、こちらに関しても自分の所属ギルドが許可をくれるので三つが必要となる訳なのだが…。
何はともあれ、今回は試験無しでのランクアップは有り難い話である。
「ふむ…それは妾もなのかえ?」
「も、もちろんで御座います…私としては、アリス様には直ぐにでもSランク冒険者になって貰いたいのですが…。」
「興味がない…妾はルウドと一緒が良いのじゃ。」
「で、ですよね~…ですので、今回はルウド君と同じCランクとさせて頂きました。」
「うむ、良きに計らえ。」
これじゃ、どっちが上なのか…まぁ、破壊神である母さんを敵に回す位なら、この関係の方が平和なのだろう。
「あ、Cランク冒険者になったのは良いんですけど、ギルドカードの更新はどちらで?」
そう…前回は、エルモアさんが自ら行ってくれたが、今此処にその機械はない。
「あぁ、それは帰りに受付で手続きをしてくれたまえ…正直、ワシ自身がした方が良いと思うのじゃが、先程も言った様に、かなり忙しくてな…。」
「そうなんですね…ご苦労様です。」
「あぁ、ありがとう…今回は、君達が手に入れてくれた素材の売却先やら調査の依頼…他のギルドへの情報共有などで忙しいだけだから数日で元に戻ると思うがの…。」
「調査…ですか?」
おそらく、例のアンデッド化していた
「うむ…君も薄々感じている様じゃが、例のキラーマンティスの事じゃ。
君達の報告では、操られていた可能性があるとの事じゃったし…。
そもそも、本来ならばいるはずのない魔物達の存在も、どこから来たのかを調べる必要がある。
そう言う意味でも、特に念入りの調査が必要なのじゃよ…。」
そんな訳で、調査する人も、それなりの実力がないと調査する事すら出来ない状況なのである。
「そうじゃ!もし良ければ、君達も調査隊に加わってくれぬか?
あの魔物達を狩った君達なら実力も問題ないし、Cランクであるなら、ランクにも問題はない。
仮にAランクの魔物が出てきても逆に討伐する事が可能であろう?」
「えぇ、確かに母さんがいれば可能だと思いますが…。」
「ならば、ギルドから指名依頼と言う事で、お願いしたいのじゃが…もちろん、報酬ははずませて貰うからの?」
まぁ、個人的には受けても思うのだが…。
そう思い、母さんを見る…だが、母さんは興味がなさそうにしている。
まぁ、母さんがいなくても良いか…もともと、一人で冒険者になるはずだったのだから…。
「はい、僕で良ければ、よろしくお願いします。」
すると、それまで無関心を貫いていた母さんが反応を示す。
「ふむ…ルウドが参加するなら、妾も参加するとしよう…よいな?」
「は、はい、!もちろんで御座います!」
こうして、僕達のランク昇格と、次の仕事が決まったのだった…。
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