5話 成長中【2】

 時はどんどん流れていきは、3歳になっていた。


 っと…俺と言うと、またレイナママに怒られてしまうから、僕と言わなきゃだな…。

 しかも、最近では妹まで巻き込んで注意してくるのだから、質が悪い…。


「にぃ~に、ママがよんでる~。」

「そっか、ありがとうレイン。」


 僕はそう言うと妹の頭を撫でる。

 ってか、そんなに大きな家では無いのだから、少し大きな声で呼べば聞こえるのに、わざわざ妹のレインに呼びに来させなくても良いのに…。

 あ、そうそう…妹と言っても実の妹ではないので勘違いしない様に…。


 正確には『僕』が、この家の家族じゃないんだけどね?


 まぁ、何はともあれ、ママに呼ばれたと言うからには当然、何かしらの用事があるのだろう。

 僕は部屋を出てレイナママの所へと向かう。


「レインから、ママが呼んでるって聞いたんだけど…何か用?」


 僕は台所にいたママに声を掛ける。


「えぇ…ルウドには悪いんだけど、また魔導石に魔力の補充して貰って良いかな?」

「何だ、そんな事か…って、一昨日、満タンまで補充したはずだけど、もう無いのッ?!」

「そうなのよ~、そんなに魔導具なんて使ってないのに、もう殆ど空っぽなのよ…。」

「あのさ…こんな事言うのも何だけど、どっか穴でも空いて漏れてるんじゃない?」

「ううん、それは無いと思うわ。

 だって、パパが魔眼で見てくれたけど、どこも漏れた跡がないらしいのよ…。

 本当に不思議よね~?」

「そ、そうなんだ…う~ん、分かんないや…。

 とりあえず、魔力が空っぽじゃ使えないから、補充してくるよ。」

「は~い、それじゃ~ママはルウドちゃんに、おやつの準備して置くわね。」


 僕はそう言うと、家の外にある魔導石へと向かう。

 ちなみに、この魔導石と言うのは、僕が転生する前…Eランクの冒険者だった頃に一般発売され始めた魔力を一時的に溜めておく魔法道具での一種で、そこから別の魔法道具へと魔力を供給する装置だったりする。


 その為、力をく為の…それを略して魔導石と呼んでいる。

 補足で言うと、その魔導石から魔力を供給して使う魔法道具の事を魔導具と呼んでいる。

 ちなみに、術士から直接魔力を供給する方法もあるのだが、魔導石に比べると出力の安定には向いていない。


 で…だ、この魔導石に魔力を満タンまで充填すると、本来ならば1週間以上は余裕で持つはずなのだ。

 にも関わらず、一昨日補充した魔力が、空っぽになっていると言う不思議…。

 もう、どこか壊れて漏れ出しているんじゃ…と思ったのだが、ポルンパパが魔眼で確認したが、漏れていないと言うのだから意味が分からない…。


 ちなみに…パパの魔眼はランクで言えば魔力の流れを見るだけの最低ランクの魔眼で、はっきり言って役に立たないのだが、こう言う時の確認する為には使える魔眼だったりする…。


「しっかし…普通、3歳の子供に魔力の補充なんてやらせるかね…。

 でもまぁ…最近じゃ、魔力切れなんて滅多に起きないからこんな風に魔力を消費させれる分、修行になるから良いけどさ…。」


 そう…生まれてからずっと、毎日、毎日、バカの一つ覚えの様に魔力切れで倒れるまで魔法を使い続けた結果、今では、ちょっとやそっとの消費では、疲れなくなっていたのだ。


 とは言え、いまだ子供の僕にはいくら念じようとステータスプレートは出現しない。

 その為、現在の魔力が幾らあるのか確認が出来ないのだ。

 もちろん、魔力以外のステータスも分からないんだけど…ね。


 そんな事を考えながら、魔力の補充をしていると、いつの間にか魔力は満タンになっていた。


「う~ん…やっぱり魔導石1つ補充した位じゃ、もう魔力切れ起こさないか…。」


 現在進行形で、修行中な俺…もとい、僕は、このままでは魔力の容量を上げる修行に支障をきたす可能性がある。

 いっその事、また、他の家の魔導石に魔力を補充して回るか?

 実は、この充填作業…思った以上に魔力をかなり消費する為、魔力の少ない人達にとって重労働だったりする。


 ただし、僕みたいに魔力の容量が多い場合、無理しなければ、それほど大変な作業ではない。

 その為、魔力の少ない人達の代わりに魔力の補充をする商売を思い付き、先日より始めたのだ。


 もっとも、商売と言っても貰う金額は、せいぜい小遣い程度だから、それほど儲かる商売ではない。

 あくまでも、これは修行の一環なので、コレで良いのだ。


「ママ、魔力の補充終わったよ~。」

「はい、お疲れ様♪それから、おやつにパンケーキ焼いたから、食べなさい?」

「は~い!」


 いつもながら、子供じゃないんだから…とも思ったのだが、転生した今では、立派な(?)子供だ。


 身体は子供、頭脳は大人…その名は探偵ルウド!と言った所か…。


 何はともあれ、僕はおやつのパンケーキにかぶりつく。


「にぃ~に、おいしい?」

「う~ん、普通…かな?」


 美味しいか美味しくないかで聞かれたら、もちろん美味しいと即答出来る。

 だが、普段から、それを食べてる訳で…この美味しさが、基準となるのだ。

 その為、いつも通りの美味しさ…故に、なのだ。


「にぃ~に、おいしい?」


 だが、質問に答えた僕に、レインが先程と同じ質問を聞いてきた。


「いや、だから普通…って…。」


 だが、此処で一つの事に気が付いた。

 今、パンケーキを食べているのは僕だけである。

 そして、僕の前には、空になった皿が一枚…。


「もしかして…食べたいのか?」

「うんッ♪」

「うん…って、レインは、もう自分の分を食べたんじゃないの?」

「うん…レイン、おやつたべたけど、まだたべたい…。」

「はぁ~…なら、僕の食べかけで良いなら、残りはレインにあげるよ…。」


 僕はそう言って、まだ半分以上残っているパンケーキを妹の前に置く。

 すると、レインは目を輝かせてパンケーキにかぶりつく。


「にぃ~に、だいすき~♪」


 あ~ぁ、僕のおやつ取られちゃったか…と思う一方、可愛い妹の笑顔が見れたのだから良しとするか…。

 まぁ、おやつの報酬が可愛いレインからの笑顔と、大好きと言う言葉なら


「さてと、それじゃ僕は出掛けるとするか…。

 ママ~、僕、ちょっとお出掛けしてくるね~。」


 僕はそう言うと、小遣い稼ぎに出掛けていくのだった…。

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