53話 依頼調査【5】

 無事?に魔法の鞄を手に入れた僕達は、再び母さんの背中に乗り、空を飛んで戻ってきた。

 もちろん、認識阻害の魔法や防壁の魔法を使用して…だ。

 その後、本来は魔法の鞄を買う為のお金だったのだが、今回は母さんの鱗を売ったお金で魔法の鞄を購入した為、大量の食料を買う為の資金とさせて貰った。


 そして、やってきた調査依頼の日…集まった人の数は20名足らずの冒険者と、数人の学者からなる調査員であった。


 で、これから調査に向かう事になるのだが…。


「では、コレより調査を開始するのである!

 だが、私達は戦闘に関しては、からっきしダメなのである。

 よって、冒険者の諸君には私達の護衛をしっかりとして貰いたいのである!」


 何と言って良いのやら…戦闘力が低い事は仕方がないが、何故、そこで上から目線で話せるのだろう?

 いや、確かに依頼主だと考えれば偉いのかも知れないのだが…。


「あぁ、ここは『銀の矢』である俺達に任せておけば大丈夫だ!」

「いや、俺達『漆黒の翼』に任せておけば大丈夫だ!」

「何を惚けた事を…我等『白金の盾』が一番に決まっておろうが!」


 そして、無駄に活きの良い冒険者達。

 一部、騎士みたいな人もいるが、ここにいる時点で冒険者なのだろう。

 それにしても、いったい、何が彼等をそんなに駆り立てるのか…。


「のう、ルウド…こやつ等、一体何を騒いでおるのじゃ?」

「さ、さぁ…僕にも何が何だか…もしかしたら、ただの護衛じゃないのかな?」


 今回の依頼は、調査依頼とは言っても僕達の仕事は、単なる護衛であり、調査するのは学者達である。

 それ故、通常の護衛任務と変わらない筈なのだが…。


「あん?何だ、お前達、何も知らないんだな?なら、ここは情報通な俺様が教えてやんよ!

 彼処にいる学者様だがな?実は貴族様でよ、あの御方の目に止まれば、貴族様に騎士として召し抱えられる可能性があるって話よ!

 そうすりゃ、もう無理して危険な冒険者家業なんてやらなくても喰って行けるって寸法よ。」


 あぁ、なるほど…あの学者達の中に貴族が混じっていて仕官される可能性があるのか…。


「でも、それって…他のパーティーも狙ってるんでしょ?」

「まぁ…な、だから、こうやって彼奴らも声を上げてアピールしてんだろ?

 どうだ?坊主達もやるか?」

「い、いえ…僕達は別に…。」


 親切に言ったのだろうが、生憎、僕は仕官には興味はない。

 いや、母さんも興味がないのだから僕達…と、言った方が正解か?


「そうか?貴族様に仕官されるなんて、なかなか機会のない事だぞ?」

「えぇ、今の所、僕の夢はSランク冒険者になる事ですから…。」

「ふ~ん、変わってんな…。

 まぁ、いいや…せいぜい、足を引っ張る事だけはしないでくれよ?」

「そうですね、気を付けます…。」


 まぁ、最低限の情報は聞けたので、少し距離を開ける。

 すると、母さんが声を掛けてきた。


「先程の者、どうやら妾達の事を知らないとみえるのう…。」

「あ~…でも、それは仕方がないと思うよ?

 冒険者って、一括りで言っても人数はかなりいるからね…。

 余程、有名にでもならなければ、一々、気にしないのが冒険者でもあるからね…。」


 そう、そう言う意味でも、冒険者は自由だと言えよう。

 その分、何をするにも自己責任で、失敗すれば自業自得となるのだが…。


「ふむ…よく分からんが、もっと有名にならねば、妾達の事を気にしない…と言う事か。

 まぁ、下手に妾達の正体を知って騒がれるよりはマシと言う事か。」

「そうだね…母さんが、黒竜だと知れたら、一騒動だからね…。」

「ふむ…じゃが、一つ訂正しておくが、妾は只の黒竜ではなく、破壊神じゃぞ?

 そんじょそこらの黒竜と一緒にしてくれるなよ?」

「そ、そうだね…。」


 むしろ、破壊神だからこそ、バレた時には騒ぎが大きくなるんだけどね…。


「それでは、出発である!」


 そうこうする内に学者達は、進むルートを決めた様で、アンデッド化した殺人蟷螂キラーマンティスが来たであろうルートを予想し、出発を宣言する。

 こうして、不安しかない調査依頼…護衛任務が開始されたのだった…。

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