とある冒険者の物語~目指せS級冒険者~

破滅の女神

プロローグ

1話 ~~プロローグ~~

 唐突だが、この世界には魔法と言う特別な力が存在している。

 ただ、それにはその魔法を使うだけの魔力と才能と言うか資質が必要だ。


 、Eランクの冒険者だった俺は、才能が無く生活魔法しか使えなかった。


 まぁ…なんだ、簡単に言うなら、適正がなかったと言うのもあるが、魔法を行使する為の魔力が圧倒的に足りなかったのだ。


 その結果、自身を強化する魔法すらも発動する事が出来ず、俺は冒険者ギルドで定められた基準で言う所のCランク…一般的に一人前と呼ばれるランクの冒険者にすらなれなかった役立たずだったのだ。


 つまり、俺が何が言いたいか言うと…今、努力に努力を重ねて究極魔法と呼ばれる魔法をバンバン使える様な『俺はSランク冒険者になってやる!』と言う事だ。


 そもそも、俺がそう思ったのは、ある切っ掛けがあった…。

 実を言うと高ランクの冒険者と言うのは、それだけでモテる…非常にモテるのだ。


 現に…やっと出来た俺の彼女を高ランクの冒険者に取られてしまった程だ。


 しかも、俺よりも不細工なヤツに…だ。

 まぁ、当時は失意のあまり、Eランクの冒険者とBランクの冒険者じゃ収入も段違いだから仕方がないと自分に言い聞かせていたの悲しい思い出である…。


 そんな矢先、冒険者ギルドから、とある情報がリークされたのだ。


 で…だ、その情報と言うのが、驚く事に、幼年期…それも0歳~3歳児位までが一番、成長する可能性が高く、それ以降、成長するにしたがって、伸びしろが短くなると言う研究結果が発表されたのだ。


 その為…赤ん坊の頃から、そう言う教育を受けた者には持って生まれた先天的の才能以外の才能…後天的に成長補正が掛かると言う事だった。


 とは言え、その情報を知ったのは既に40半ばの頃だ、それを今更知った所で、もうどうしようもない。


 せいぜい、自分に子供が生まれたら、英才教育を施す…位にしか役に立ちそうにない。

 もっとも…高ランク冒険者に彼女を取られた俺には、悲しい事にその可能性すらも皆無となっているのだが…。


 更に、その情報と共に発表された、魔力…この場合は魔力の強さと容量を指すが…を伸ばす方法と言うのも発表されている。


 その方法…とは、限界まで魔法を酷使し…所謂いわゆる、魔力切れを起こす程の酷使を繰り返す事により、命の危険を感じた身体が、危機を回避すべく魔力切れを起こさない様に…その環境に順応する様に、魔力の容量キャパシティを増やす…と、言う鬼畜な方法だった。


 そもそも、大人であれば苦痛に対して、ある程度なら我慢する事が出来るだろう。

 だが…それが、もし赤ん坊だったら?果たして、どうなのだろう…。


 おそらく、最悪な事態を引き起こす事になると俺は考えている。


 正直、魔力切れと言うのは身体が重く感じられ、動くのが困難になる…更に、激しい頭痛や吐き気を伴うと言ったバッドステータスになるのだ。

 もちろん、半人前であるEランク冒険者だった俺も、何度か魔力切れを何度か起こした事がある。


 むしろ、半人前だからこそ魔力切れを起こしたとも言えるのだが…。


 簡単に説明すると…一番最初は魔力切れを起こしたのは生活魔法である水を作り出す魔法を覚えた時だ。


 これで、移動の際の飲み水の問題は無くなったと思い、調子に乗ってバンバン水を作り出した時だった。


 あの時は、自分に何が起こったかすら分からず、また森の中だった為、いつ動物や魔物に襲われないか、気が気じゃなかった。


 他にも、薪に火を灯す、種火の魔法だ…たいまつを持ってくるのを忘れた俺は、愚かにも種火の魔法をたいまつの代わりにして洞窟を進んだ。


 そして、魔力切れを起こした…幸いにも、その洞窟には危険な動物や魔物は居なかったが、魔力切れで碌に動けない身体の上を、百足ムカデなどの虫が俺の身体を這いまくったりしたのは今でも少しトラウマとなっている。


 まぁ、その様なちょっとした油断から自分の魔力の容量を把握出来ず、過度に消費し魔力切れを起こす…なんて事を、学習能力がないのか恥ずかしながら何度も経験していたりする。


 で、それが、どうして転生に繋がるのか…と言うと…。


 ☆★☆★☆


「おい、サポーター!水をくれ!聞いてるのか?」

「ジャイアンさん、何度も言う様に、俺はサポーターじゃないんですが…。」


 また始まったか…俺は、溜息混じりで水をくれと言ってきたパーティーリーダーに文句を言う。


 そもそも…俺は、あんた達の仲間のはずで、決して荷物持ちや料理等、冒険者の手伝いをするサポーターではない。


「うるせーな、そもそもお前なんか戦闘で大して役に立たないんだから、サポーターで良いんだよ。

 それとも何か?Cランクでも上位になろうとしてる俺様にEランクでも下位に近いお前が文句でもあるのか?」


「い、いや…そう言う訳じゃ…ただ、俺はサポーターじゃないと…。」


 まぁ、確かに身体能力を上げる強化魔法すら上手く使えないのだから弱いのは素直に認めよう。


 だからと言って、サポーターは酷いと思う。


 そもそも、こんな俺でも一応は戦える…主に囮をやらされるのは、このジャイアンの所為だ。

 その為、他の仲間まで俺をサポーターとして扱う様になってしまっている。


「あんだと、コラッ!これを世間一般じゃ文句っていうんだろうがよッ!!」


『ブンッ!…プシュッ』


 痛ッ?!ジャイアンの身体が急に光ったと思うと、急に頬に痛みが走る。

 俺は嫌な予感がして頬に手を伸ばす…ヌルリとした感触…何事かと見ると赤い…血だ…。


 ここでようやく、俺は自分の身に何が起きたのかを理解した。

 つまり…俺は、この目の前の男、ジャイアンに斬られたのだ…。


「う、うわぁぁぁぁぁああッ!」


 俺は、恐怖のあまり、その場から全力で逃げ出す。

 そもそも俺がこのパーティーにいるのだって、好きでいる訳じゃない。


 実の所、友達の代わりだ…本来なら、友達がこいつらのパーティーに付いていくはずだったのだ…。

 しかし、その友達は風邪か何かで、40度近い熱を出して寝込んでしまった…。


 当然、このままだと友達が来ないと契約違反と言う事で罰金を取られる事になる。

 だが、これには抜け道があり、代理人を立てる事により契約は続行される。

 で、その代役として選ばれたのが俺であり、その友達の代わりに来たのだが…この有様だ。


 俺は命の危険を感じ、その場から急いで逃げ出した。


 それこそ俺は無我夢中で走った…そもそも相手はBランクの冒険者だ。


 下手に加減して逃げたなら、すぐに追いつかれてしまうだろう…。

 そんな恐怖に駆られ、どこをどう走ったのかは分からないほで走りまくった…。


 そして…足を滑らせたのだけは覚えている。


『ヒュ~~~~ッ!』


 かなり高い場所から足を滑らせて落ちたのだろう…一秒、二秒…そして…。


『ドボンッ!!』


 気が付くと俺の身体は宙を舞い、そして落下…数秒の後、俺は水の中へ落ちた事を理解した。


 助かった!そう思ったのも束の間、今度は着ている鎧の重さで少しずつ、俺は川底へ向けて沈んでいく。


 だが、頑張って浮上しようと藻掻もがくも、鎧の重さで浮上する事が出来ず、そのままブクブクと沈んでいった…。


 もうダメだ…そう思った瞬間、目の前に光る物体を発見した。


 気が付いたら、何故か俺は無意識の内に、その光る物体に手を伸ばしていた。


『バチッ!』


 全身に伝わる激しい痛みと痺れ…おそらくは、強力な電撃か何かだと思う。


『ゴバッ!ゴボボボボ…。』


 あまりの衝撃に、口を開いてしまい、口の中に溜めていた空気が完全に逃げて行く。

 沈みゆく俺の身体…呼吸する為の空気が無くなった為、徐々に苦しくなる…。


 聞こえてくる不思議な声…耳から聞こえる声ではなく、直接、脳に伝わる声だ。


〖よくぞ妾わらわの封印を解いてくれた、礼を言おう。〗


 いや、礼なんて良いから助けてくれ…。


〖妾に出来る事なら望みを叶えてやろう。〗


 いや、だから助けてくれってば!!


 あ…ダメだ…意識が、もう…。


 クソッ!せめて死ぬ前にEランクの役立たずじゃなく、Sランクの冒険者になってモテモテになりたかったぜ…。


 そして…とうとう目の前がブラックアウトする。


〖良かろう…ならば、汝のその願い叶えてやろう。

 ただし、妾が手伝えるのは汝を****に**させる事のみ…。

 その後は、汝の努力次第じゃ!〗


 そんな声が聞こえた気がしたのだが、俺は限界を超え、とうとう死んでしまった…。


『グシャ!バキッ!ボリボリッ!』


 ☆★☆★☆


 と、言う事があったのだ。

 まぁ、普通ならそんな与太話、誰も信じる事はないのだが…。

 だが、現に俺は赤ん坊として、こうして生まれ変わっている。

 なら、他の誰かがその話を信じようが信じなかろうが関係ない。


 死ぬ前のクソみたいな人生は、謂わばチュートリアル…そして、今回の生…これこそが本番…俺のS級冒険者への道が始まるのだッ!!…と言ってみる。

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