~一章 再誕生(リバース)~
2話 再誕生(リバース)
『パリッ…パリッ…パリンッ!』
聞き慣れない音…何かが割れた様な音がした事により、俺は目を覚ました。
「fびあfwkんgjwhpsjvb、kpgんw:kjんf@あ。」
あ~…ごめん、何言ってるか分からん。
そもそも…俺自身、言葉をしゃべれないばかりか目もよく見えていない。
それ所か、どう言う訳か思う様に身体を動かす事すら出来ない状態なのだ。
ただ、1つ言える事は…どうやら、この人は信用出来る人…と言う事だ。
それも、物凄く安心する…まるで母親の様な…そんな人だった。
「ろwsんpじゃねぼqふぉあfほいあh?」
うん、やはり何を言っているのか分からない。
だが、何を言われたかは理解した…何故かって?
だって…半ば無理矢理、口の中に食事を入れられたからだ。
まぁ、味はともかく、お腹が空いているのは確かだ。
故に、俺は頑張って与えられた食事を全部食べる事にした。
『トントンッ』
母親らしき人が、俺の身体を持ち上げたかと思ったら、俺の背中をトントンと叩く。
「ゲフッ」
おっと、失礼…ゲップが出てしまった様だ。
そして気が付く…ん?俺の身体を持ち上げる?
しかも片手で支えて、もう片方の手で背中をトントン…だと?
これではまるで赤ん坊じゃないか!と言う事を…。
だが、改めて考えてみると、目がよく見えない。
さらに、声も出ない。
さらにさらに、身体を自由に動かせない。
…もう、死ぬ寸前の老人で介護が必要な状態なのか?とも思ったが、それでは先程の身体を持ち上げて…等と行為は無理なはず。
それに…今の自分の身体が異様に小さい気がするのだ。
それならば…今の俺は赤ん坊だと言われた方が、まだ納得がいく。
〖ふむ…やっと生まれたか…予定より生まれてくるのが遅かったから妾も少しばかり心配したぞ。〗
はい?生まれてくるとは?
いや、そもそも、この声はいったい…。
〖何じゃ?もしや、記憶を失っておるのか?〗
えっと…記憶を失う?いったい、何の事だ?
〖まぁ、良い…そなたは妾との契約により、生まれ変わったのじゃ。
確か、Sランク冒険者だったか?生前、Eランクの冒険者だった
其方は妾の封印を解いた者…そのお礼として、其方を転生させたのじゃ。
もちろん、努力をして成長しなくては何時まで経っても雑魚じゃがの?〗
その話を聞いて、何となくだが…ぼんやりと記憶が甦ってくる。
あぁ…そうだ、俺は確かにSランク冒険者になりたいと願った。
ただまぁ…動機としては、情けない物でBランクの冒険者に彼女を取られた腹癒せに、俺も高ランクの冒険者…それも最高峰のSランク冒険者になってモテたいとか言う願望からだったが…。
何はともあれ、声の主が誰かは分からんが、言われた事が本当だとするなら生まれ変わった事になる。
〖誰とは心外な…これでも一応は、そなたの生みの親じゃぞ?〗
はい?生みの親と言うと…もしかして…。
〖そうじゃ…母親と言うヤツじゃな。
妾も、流石に、この歳になって子供を産むとは思わなんだが…まぁ、契約約束じゃからな…仕方ないわ。〗
ちょい待ち…だったら、さっき俺の世話を焼いてくれた人は、いったい誰なんだ?
流石に、アレが、あんた…って訳じゃないだろ?
もしそうなら、最初から今みたいに話し掛けてくれるはずだし…。
〖うむ…その通りじゃな。
訳あって、そなたを妾が直接育てる訳にはいかないのでな…。
それ故、他の者に育てさせる事にしたと言う訳じゃ。
まぁ、人族で言う所の乳母と言う所かの?〗
何と言うか…生むだけ生んで他人任せ…まるで
〖ん?その閑古鳥とは何ぞ?〗
あぁ、閑古鳥と言うのは
で、このカッコウと言う鳥なんだけど…他の鳥の巣に卵を産み付け、何食わぬ顔で、その巣の親鳥に子育てを任せる托卵たくらんってのをするんだよ。
〖ほうほう…言い得て妙じゃな。
もっとも、妾はちゃんと世話する様に…と、お願いしておるので、少しばかり違うと思うがの。〗
あ、そうなんだ…って、当たり前か。
人族なら、自分の子供が急に増えたら普通は気が付くよな…。
〖そうじゃな…畜生どもなら気が付かぬかも知れぬが、そなた達、知恵を持つ者ならば、その限りではない。〗
んで、そんな母さんに質問だ。
「何ぞ?いや、それより…そなた、妾を母と呼んだのか?」
あぁ、どう言う方法かは知らんが、俺を生んだんだろ?
「うむ…その事については間違いない。
間違いなく契約に基づき妾がそなたを産み落としたぞ。」
だったら…あんたは俺の母親と言う事だ。
「なるほどの…よもや、妾が母と呼ばれる日が来るとは夢にも思わなんだが…まぁ、良かろう。
して、この母に質問とは何ぞ?
特別に、答えれる事なら答えてやろうぞ。」
俺って、S級の冒険者になれると思うか?
〖何じゃ、何かと思えばそんな事か…愚問じゃな。
妾の子として生まれた其方なら言わば才能の塊じゃ…当然じゃが可能じゃ。
ただし!じゃ…その才能に胡座を掻き、努力を怠れば不可能となる。〗
そっか…なら、努力してみるさ。
あ、後…今は、あんたから話し掛けてきてるじゃん?
俺の方から話掛けるにはどうしたら良いんだ?
考えてみたら、今の俺には話す事はおろか、動く事すらままならないのだ。
〖ふむ…どうした物かの…そなたはまだ【念話】と言うスキルを持っておらぬ故、今の所は不可能じゃな。〗
…ダメじゃん、俺…。
〖まぁ、そなたのレベルが上がれば、その内、覚えるじゃろ。
そもそも、母親が居なくて寂しい歳でもあるまい?〗
いや、まぁ…確かに転生前の記憶があるからそうなんだけど…今の俺って0歳児だぞ?
それなら、母親を求めても、不思議じゃないんじゃないか?
〖その為の乳母じゃよ。〗
はいはい…分かりました、もう良いですよ。
〖仕方がないの~ならば、たまに妾の方から声を掛けてやるとしよう。
じゃが、あくまで気が向いたらじゃ…何時になるか分からんぞ?〗
へいへい…なら、期待しないで待っとくよ、母さん。
〖うむ…しかし、母と呼ばれると、何と言うか…こう、むず痒くなるの~。〗
だったら、名前教えてくれよ…俺、あんたの名前知らないんだぞ?
〖そうじゃったかの?まぁ、良い…妾の名前は『アリス・ウル・ドラグーン』じゃ。〗
んじゃ、母さんの事はアリスと呼ばせて貰うぞ?
〖好きにするが良い…母と呼ばれるよりは少しはマシじゃ。
では、そろそろ妾は、此処を離れるとしよう。
そなたも、身体には気を付けるんじゃぞ?〗
あぁ…母さんもな。
〖じゃから、母と呼ぶなと…。〗
冗談だ。
アリスも身体に気を付けてくれよ?
…それと、ありがと…俺、頑張ってS級冒険者になるよ。
〖まったく…妾の子は、誰に似たのやら…。
まぁ…これからは、そなたの人生じゃ、妾にしてやれる事はもうない。〗
いや、アリスにしか出来ない事が、もう一つだけあるぞ?
〖はて?もう、何も無いはずじゃが?〗
あんたの子供としての証…俺に名前をくれ!
〖なるほど…じゃが、本当に妾が名を付けて良いのか?
そもそも、そなたには生前の名があるじゃろ?〗
いや、俺は新しく生まれ変わったんだ…だったら、それに相応しい名前が欲しい。
それに…俺の生前の名前って『ゴンタ』だぜ?
折角生まれ変わったのに、そんなダサイ名前で呼ばれたくないぞ?
〖ふむ…ならば、妾が新たな名前を授けよう…そうじゃな…そなたの新たな名は『***・ウル・ドラグーン』じゃ!〗
こうして、俺は新たな名前と共に、新たな人生を歩み始めたのだ!
もっとも、歩くどころか動く事すら困難なんだけどね?
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