日常はおはようの一言で始まる。4
いつも授業後はギアが一つ上がりがちな今日この頃。
俺はくすんだ抹茶色の2階中央廊下を、じりじりと下がりつつある太陽から吹いてくる風に煽られながら歩みを進めていた。
この校舎の南側。今の俺から見て正面に佇んでいる図書室こそが例の文芸部の部室である。通称密郷。
一様文芸部の紹介だけしておくとつまり……なんでもいい部活だ。まあ俺はプログラミングやっている位だし。
そんな脳内説明会を開いている間にこの校舎の最南端沖ノ鳥島……ではなく図書室に到着していた。なぜ過去形なのかというと説明会が終わるまで5分、ずっと扉の前で空気を装っていたから。誰か気づいてくれよ……。
俺は有権者一同が帰っていたところまでさらに5分待つと少し苔が蒸しているように変色した岩男ならぬ取ってを持つ。
「さーがガガガがザーがgっがザー」
流石にこれはおんぼろすぎないですかねこの扉?図書室は教室から離れてた南棟の最南端に位置しているため、生徒からは通称の通り秘境の地扱いされていて一日の来客者は俺ら文芸部員を除いたらほとんどゼロ。そのため手入れがいきわたってはいず、少し埃っぽい。
俺はドアのうちに掛かっているカーテンを簡単に払い中に入ると、そこには文芸部員2人が座っていた手各々の作業をしていた。
右に座っている方、眼鏡を掛けた秀才風リアル二宮金次郎の名前は……左に座っているのは少し華奢なつややかな長い黒髪を耳に掛けながら国語の教科書を熟読している彼女の名前は……いや誰だよ。確かどっちとも同じクラスの筈なのに……ボッチ辛いなこれ。まあ基本前の色黒ヤリチンに話しかけられる以外は読書しているかなな。だからしょうがない。来ない物は忘れる。これが自然の摂理だ!っとなき目になりながら俺は中学時代好きだったあの子を思い出していた。まあ来ないし行かなかったのですけどね?
勿論見渡す限りの黒髪。赤、黄色、ピンク、緑、青、白、紫etc…なんてアニメやラノベみたいな髪色のやつは現実、俺含め居るはずがなくこれはさすが平凡な碧海高校というところ。まあ俺らは全員、アニメ補正されたところで真っ黒黒というかまず出させてもらえないのだけどね!
ほんと来世は東京のイケメン男子にして欲しい。お願いします神様。どうか、どうか声を聞かせて!
そんな悲観な叫びも虚しく俺は三つ島になっている机の一番奥まで向かい席に体重を授けパソコンを広げる。
椅子を引く音、体重を授ける音、パソコンを設置したその空気の響きは、沈黙のこの場には痛いほど響き渡る。
心地良いと言われればそうでもない。俺は沈黙には慣れているものの何もない沈黙は嫌いなわけで、昨日サイト作りを終えてしまった俺からしたら……。
そんな時急に中学生時代友達と話していたある言葉が降ってくる。
―――――――俺は攻めだ。………。……?
べっべつにそういう事ではなくてですね、あくまで会話内の話で合って急に官能小説小説になったりはしないと思いますから……ね?
急に俺がアイスティーに睡眠薬をとつまりどういう事かというと攻めとは会話の話題を提示する役割のこと。
だからこのもどかしい空間のなかで中学時代の友達と「お前が攻めで俺が受け」だと話したことを思い出したわけで……ってもっとまずくなったよ!急にピンクから茶に配置転換されていったし!とにかく違うからね!
まあもう文脈なんてなんのその、俺は降りてきた言葉を紳士に受け止めることにする。さすがに神様には逆らえない。
息を小さく一つはいた後、二人を見渡し、どんよりと湿気深い空気を肺に取り込つぶやいた。
「2人とも文芸部で文化祭なんかやらない?俺、ギターなら弾けるし……」
不穏に教室内でこだまする一般高校生の響き。………。………。
俺、もとよりボッチ得意の空気を読み切るが発動してしまいその先の言葉を紡ぐことはできなかった。
「………」
辺りは見渡す限りも物はないが閑散と沈黙していてそれ以上でもそれ以下でもなくなっていた。
ただ、二人の作業の手は止まり今こそ時の狭間。無。
「………」
「あっ」
俺が改めて言葉を紡いだ刹那、紫式部風少女はロングで艶やかな髪をかき上げ、怪訝な瞳を俺に向け一言発す。
「無理。そもそも私は「達」に含まれていることに憤りを感じるからやめてくれる君?あと忙しい」
「同意」
「先の二文いらなかったんじゃないかな?えっと、あの……えっと誰だお前」
俺が明らかな嫌味を醸し出しながら少し上司風に文章を構成させていったのだが、こいつの名前が分からないせいで全てが台無し……ボッチというのは喋りかけられないので名前なんて覚えているはずがないんだ!この社会が悪いんだ!そうだ!絶対!
いつの間にか俺は泣き目になってしまっている。あはははははっははっは。そんな俺をちらっと見た誰かさんAは更に瞳を細め軽く息を吐くと、その目には似合わない、相反した逆説的なトーンでぽつぽつと紡ぐ。
「羽豆……咲……」
流石の俺でもここまでやってしまったら少し腰を引かせてしまう。俺はてっきり「は?クラスメイトの名前覚えていないとかさすがボッチ。笑わせてくれるわ」みたいに罵られると思ったのに統計的には。まあデータが1個なので統計100%なんだがな。こうしてボッチ統計は、日々更新されていくのであった。
太陽高度は南中から大分時間がたったのか低下の一歩を歩んでおり、この教室から覗かせていた。差し込んでた一線の輝きは彼女……いや羽豆に当たり、漏れ出した光は頬を朱に染めている。
軽い沈黙……さっきまでの心地の悪さはたった数分の間に晴れていて靄は見えない。
そんな空気を察したのか否か、横で本を読んでいた二宮金次郎並みの眼鏡はサブウーファーのような低音で横やりを入れてきた。
「さすがボッチだな。クラスメイトの名前を覚えていないとか笑わせてくれるわ」
「いやお前かよ!ねえ!」
「はあ、結局「ねえ」って良いツッコミが見当たらないからってゴリおすのやめてくれる?語彙力ないのバレバレだよ君?」
息を吹き返したように反論を意してくる。ああ二人ともウゼえ。
羽豆と眼鏡はまるで協力プレイの様に互いの役割を分担して俺を攻撃していた……ってここも?協力プレイとか最近パワプロでやってないわ。高校に入学してから……まあアレはペナントゲーだからOK!オンラインとかチートでぼろぼろだし。
まあこんなわけでさんざん攻撃をしてきているお二方ですが、声色こそ冷ややかなもののトーンは日が差してきていて溶けかけている。
そしてまた、眼鏡は開いていた文庫本を丁寧に栞を挟み閉じ、はっと失笑交じりに紡ぐ。
「お前とか心外だな。俺にも名前はある。流石にクラスメイトだから覚えているだろう」
「誰だよお前。まずクラスメイトというのも初耳なんですけど」
少し嘘をついた。けど誰だこいつ。
俺が少し考えた素振りを見せた刹那、俺の方を見て眼鏡が失笑するとまたもや失笑し失笑し失笑を紡いだ。
「それは当たり前だ。流石全神経を盗み聞きのため耳に集めているだけある」
「なぜそれを知っている!最近毎日同じ話を聞かされていると思ったらお前仕組んでたのかよ!」
「それはただここが田舎なだけだよ君……って言ってて虚しくなったよ私。来世は東京のイケメン男子にしてくださーい」
「パクリかよ!まあ面白かったし、つい一か月前ぐらいまでは入れ替わらないかな~とは思ってはいたけど!ねえ!」
「まさか咲がボケとは……」
「えっ、俺のツッコミの評価は?てか俺も思いっきりボケたんだけど!」
「ん?なんて話なの君?足立が田舎っていうところ?」
まあそこはご愛嬌というところでやめておこう。これ以上名誉棄損したら俺生きる場所なくなっちゃうよ!まあ緑ヶ丘住だからいいんだけどな!
AILOVE緑が丘!ここより田舎だけど。
っと住所開示を脱糞の如く行ったところでそういえばとさっき憤りをお二人方が感じられたとか言うあれの件について話を、流れを完全に無視して切り出しす。
「……本題に戻るけどなんで二人とも忙しいんだ?だって二人とも俺と一緒なボッ―———」
『はあ?』
怪訝な瞳の二人。いやお前ら文芸部にいるだけでボッチだろ!卓球部よりね!
羽豆は怪訝な目を振り回し、まるで砂漠のようなドライな声で俺を突き放す。
「中学時代卓球部だったくせに生意気だよ君。卓球部のくせになまいきだ」
「全国の卓球部の皆さんに謝れ!あと懐かしいなそれ!Vitaでよくやったよ!」
もしかしたらこいつより俺の方が土下座すべきだろうなっと思ってきながらもいざ他人に言われてみるとむかつく俺であった。ほんと勇者のくせになまいきだな……え?
ちなみに昔マインクラフトのためにVitaを買った小学生、中学生諸君は一度はを体験版をやったことがあるランキング第一位である勇者のくせになまいきだ。ちなみに2位はスペランカーである。体験版じゃないけど。
そんな多分審査員の方には何一つ分からないであろうネタをほうりつつ、俺は逸らされた話を戻す。
「で、お前らボッチなんだろ。というか文芸部に入るやつは大体ボッチって決まってるんだ。ソースは兄だけど」
「完全に兄から見下されているパターンだよ……って私は友達いるから」
「なんで「私は関係ないし」みたいな女子っぽいことしてるんだよ!お前文芸部だろ!」
ところどころ羽豆の声真似をしながら突っ込んでみたが似てねえ……やっと週4カラオケで隣から聞こえてくる嘲笑の意味が分かったよ……
虚しい一人ごとを脳内にささやいていたその時、俺は先ほどの会話の疑問点を羽豆に問いただす。
「てっなんで俺の部中学時代の部活知ってるんだよ!」
「君の雰囲気……ってところかしら。といつもならというか実際そうなんだけどちょっと違うのだよね………」
タヒねよ!………なんか誤字っちゃったみたいになってるし。しっかり推敲してますからね!評価欄にしっかり推敲してから提出してくださいとか書かないでね悲しいから。………。………。
俺はまたまた脳内キャッチボールとか言う世にも虚しいスポーツをしていると、羽豆は少し呆れた声色で続きを紡いできた。
「私、中央中出身だし」
何処だろうか?確かに俺は緑が丘立中央中学校出身ではあるがな……。中央って高校やらある意味で商学部が有名な大学もあるから多分違う中央なんだろう。
バーカと、脳内再生しておきながらも俺はこの愛知県に中央っと名の付く中学はないという事を思い出すまさかねえ?
「それってあの?」
「当たり前だ。俺もからな。あと俺は友達はいる。」
質問を回答してきたのは……だった。いや、やっぱこいつ誰だよ。誰だが分からないがこいつも同じ中央だったらしい。まことに信じることはできないが。
とは言えど、接続語はミスったが俺は中学時代そこそこ友達がいたわけですがこんな奴ら見たことも聞いたこともない。実際、名前を忘れてしまっていたぐらいですし。
――――――――誰だ?
そんなふ風に俺が疑問視していると眼鏡が「ならば証拠を出そう」っと、眼鏡の接合部分をカチャリと眼鏡を光らせ、得意げにこう言った。
「中学の時のアレはほんとに気持ち悪かった。グラフィックボードがなんだって。あのオタク特有の早口、今思い出しても滑稽だ。はは」
「やめろぉぉぉおおおおおお!」
やけに煽ってくる「はは」。多分この日本で一番悪意のある鼠だっただろう。
俺の叫び声は教室内どころか少し開いていた扉から廊下に拡散され廊下中をこだまする。
俺は気分転換にカバンの中で散らばったキャロットジュースをこじ開けると、ぬるく甘くなった液体を勢いよく啜った。
まだ冷えない脳内。今日はギアを上げすぎた感すらあった。そんなこいつらとの初めてとは思えない攻防戦だった……4か月越しの会話で。
当初、誘いかけた当初はここからワンちゃんあるかも……ワンちゃんさえ使えれば会話ができると思っていた若干中学生の俺が恥ずかしい。しかもそこには輝いた高校生活を思い描いていたのでなおさらだ。
俺は再び生ぬるいキャロットジュースを啜り明後日の方向を仰ぐ。
期待していて、思い描いても何も起こらないんだよ……。そうだった、だから俺は諦めたのだったな。
そう仏の様に悟りながらこの世のすべてを知った。全て兄のせいで。
空には乱層雲、快晴をいつの間にか覆ってり一線の光は顔を刺そうともしていなかった。
その光は今日……いや、もしかしたら15年間、一度も顔を出すことをがなかtt
あことを俺は不思議に思う。
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